『フィギュア 17』 #12 の感想

[12 話前半時点での感想]

粗筋
自由研究の発表直前にヒカルが倒れ、つばさが発表の代役に立った。 無理だと思いつつ彼女は力をふりしぼる。心配かけ通しだったヒカルのためにも ──
概観
つばさのブレークスルーを描くことに徹した回。 これがここにあるのは分かり切っており、鑑賞点が細かいレベルに潜ったが、 それに耐えたという意味では良くできていた。
とはいえ、10 話のあとでの 12 話に至る準備の不足という、 論理の流れを整えるのに手一杯でやや記号的な取扱いが目につかないでもない。
このまんまだと、弁解しようがないほどヒカルが極悪人^_^;;
ヒカルの行動へのつばさの疑問
#10 と #12 につばさとヒカルの衝突を持って来た。やっぱ #11 は intermission だったか。

#11 を中心に対称的な #10 と #12 をみるに、 #10 の衝突のあまりの不幸ぶりを観たあとだと #12 の疑心暗鬼から和解へのなりゆきは ちと都合良く(平和に)話が進みすぎるきらいがある。 とくにつばさが事前にヒカルの思惑を読んだことが。 ソフトランディングできるかどうかの分かれ目になってるが、本来つばさに出来ることじゃないぞ。 そのための準備が #11 に欲しかったと思う。
思考が現在から未来におよぶヒカルと違い、つばさの思考は現在に留まる。 たかが現在だけで手一杯のつばさが、 未来においてヒカルが居なくなることを想像したっつうのは それだけで一つのブレークスルーと呼んでいいくらいの事件ではないかなぁ。

ヒカルがつばさを大事にしてるっつうても、甘やかすってことは絶対に意味しない。 むしろつばさからみるとキビしいほうにえらく偏ってるから、 「護る」と宣言しているとこでつばさをシゴいてもたぶんヒカル的には矛盾は無いのだろう ... ま、確かにつばさ的には詐欺以外のなにものでもないと思うが。

10 話以前もヒカルはつばさに圧力かけまくりだったのに、 その正当性についてはつばさは悩んだことはあんまりない。 理想という形で認めてたから、自分と違っていてもかまわない。 つばさ的に一心同体と思うとこまで従属性が強くなった #12 でのほうが、 ヒカルの行動の底を考える動機があるってのがいい ... んだけど、本来、ここまで従属してしまうと、 ヒカルの行動を疑うのは自分のアイデンティティ崩壊に直結しかねない問題だけに、 それを「深く考える」のでなく、 そういう問題を「見なかったことにする」もんだと思う。

#10 の対決でつばさもヒカルも潰してしまって、今話でもう一回自立のやりなおしっつうても、 つばさの(ヒカルと対決できるほどの)復活を #11 〜 #12 でぜんぶ描いたことになってるのかっつうと、 それはちょっと足りないんではないか ... というか、「あの」#10 とバランスとらなならん話なのに、 ヒカルとつばさの心理の動きの描写が絶対的に足らんぞう。

自分の行動方針、相手方の心理を読むのにぐたぐた悩めという意味ではない。 ヒカルがつばさから離れたことによってつばさの状態が悪化したのをうけてヒカルが反応する描写がないなど、 自分の行動と、それをうけての相手の反応からそれを自分の心理へ反映し、さらにそこから相手が変化し ... という形のコミュニケーションの不足だ。
DD からヒカルに圧力がかかってそれをつばさに流し、それをうけてつばさの反応 ... で話が終わってる。 会話が一往復もしてない。
つばさが無事に発表できたからいいようなものの、 ヒカルは本来それを期待していい立場じゃない。 うまくこなせることを期待できるくらいなら、 ヒカルがつばさから離れるようなマネをしなくてもつばさは潰れない。 同じ潰れるのなら自分の目の前で潰れていただきたい(フォローできるから)ってのはあったろうが、 それならもうすこし心配してやってくれ。

ヒカル
つばさを保護するのはいいがつばさに寄りかかられているのはあまりよろしくないし、 ヒカルの依って立つ位置は本来そのあたりだから、極端に寄りかかられてるとヒカルももたん。 それはまあ大前提であるとして。

そこでこういう決断 ... というのはある意味凄いんだが、 実行内容はヘタれていて先の見通しはほとんどないようだな。 自分の行動を受けてつばさはどういう風になるとヒカルは思ったんだろう。
これだと切り離すつもりで切り離したことにはならない。 いずれつばさが潰れかけたとき、ヒカルはつばさを支えに回ることになるんだから。

保健室でほとんど心配してなかったから、目が届くかぎり大丈夫だと思ってたのはあるだろうが、 それはそれで極悪だぞっと。

つばさ
今話でつばさの件に全部カタつけてしまう勢いの脚本だっただけに見るべきポイントが多い。

ひとっつ目が健太への礼が言えるかどうか。

教室では言わなかったことで、つばさの状態の酷さを確認してしまったが、バスん中では言えたな。 ああ、つまり、 つばさの周囲にはヒカル以外の人物が存在するということをつばさが理解し、 彼らに目を向け、またその手をとることができるということだから。

これはヒカルと離れている時の出来事であり、 ヒカルによって敷居を下げられてのことでもなく、ヒカルに話を振られてのことでもなく、 ヒカルに守られてのことでもない、つばさ自身の力だ。ここがベースラインとなる。

これをうけてヒカルとの対決に臨む ... というのなら素直な造りで納得するんだが、 母親と健太が合流したとこでつばさの心情はまたネガティブに振れて、 それでなおヒカルと対決できたっつう描写になったのがよーわからん。 なんのために健太の母親の描写を挿れた?

ふたっつ目のヒカルを疑ってヒカルの真意を思い付いたあたりは書いた。 みっつ目、自由研究の発表の成功とヒカルとの再対決の順序。

ヒカルの真意を確認するまえに「ヒカルちゃんがいなくてもちゃんとやれた」 ことが一つ必要だったのはよっく分かる。おかげで再対決は良くも悪くも不安感ゼロだったんだが、 ... 逆に言うとなんでここまで石橋を叩くような造りにするかなぁ?
つまり、つばさが発表することになったのはヒカルが倒れて保健室行きになったからだが、 これがつばさからみるとヒカルの仮病にみえなくもないのがちょっと。つばさの心理にノイズが混じった。 実際にヒカルが具合を悪くして倒れたんだし、つばさも仮病の可能性には気付かなかったから、 確かに論旨の流れとしては清らかなままだけど、石橋を渡りたいがために道順が捻れた、そんな印象を受ける。

東京への帰還
ああ、まとめに入ってるなぁ、物語全体が一夜の夢かぁとおもいっきり沈んだ。

記憶操作を安易に考える双子については、「おいおい ...」と突っ込んだが、 ヒカルのほうは自覚はあるよーだな。

DD への報告からヒカルが自室に戻った時につばさは起きなかった。 どっちにするんかな〜と思ったのだが、 これ以上ヒカルに嘘つかせるわけにもいかんというあたり、脚本が双子に優しい。

萩原健太
いいやつだなぁ ... つうか、いいタイミングで介入するなぁ。

ヒカルが本来の位置に戻り、それにあわせて健太がヒカルの位置 (元々は翔の位置) にすべりこんだ。 けっこ周囲の人物配置に恵まれとるのだが、つばさにそーゆー意識はないのだろーな。

用事があってらっきー? 二人になってしまって微妙に。

20 分ものこういう沈黙に耐えられるって、 けっこーつばさと合うんでないかい。

つばさからのカメラワーク
自由研究の発表のところで、つばさが喋り始めて小声なことを美奈が煽り、 その直後にカメラはつばさ視点で教室を巡った。 ... つまりこれをしろと 6 話の感想で言うてたわけだが、 おそらく一度しか使えないフォーマットだから #12 で使うつもりなら確かに #6 では使えんかも。
圧力
面白けりゃなんでもありの美奈、つばさに好意的な飛鳥と典子の心配顔から笑顔への変遷、 たとえ内心で何を思ってたにしても表情をビタ一文変えない健太。 つばさの受ける圧力と、ころころかわる聴衆の表情と、みてて飽きんかった。
抱きつくタイミング
超絶に細かいレベルだが。
二人の和解んとこで、二人が泣きながら抱き合うシーン。 ことここまできてすら先に飛びつくのはつばさなのだな。先に泣きだしたんはヒカルなんだが、 どこまでもヒカルのほうにはつばさにすがるような神経は無いと。
予告
別れ確定気味に二人が泣いて ED に突入したあと、回想一本槍の予告とは ...
最終回本編の絵は一枚もないが確かに予告になってるよ、まったく T_T
今回、この一言
「萩原君 ...、あの、今日はありがとう」
ヒカルのコントロールが入った発表本番よりも、純然たるつばさの力となったこちらを推す。


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