2025.07.09
僕はそれほどラジオが好きなわけでもないのだが、振り返ってみると、ずいぶんとお世話になった。
子供の頃(1950年代)、村ではラジオが結構普及していたように思う。電気屋さんに作ってもらっていたらしい。真空管方式で、5球スーパーが標準だったが、当時は放送局も少なくて、あまりノイズ源も無かったので単純な3球でも十分使えた。僕のお爺さんは毎日ラジオで浪曲、落語、漫才を聞いていて、僕も一緒に楽しんでいた。床屋に行くと大相撲中継を流していて、客同士が賭けをしていた。友達とは野球中継や「少年探偵団」を聞いていた。大晦日のイベント「紅白歌合戦」は家族で楽しんでいた。兄の一人がラジオを作り始めて、僕も見様見真似で作った。半田ペーストや絶縁材のベークライトの焦げる臭いや電源トランスが過熱したときの臭い、稀に起きる220ボルトによる感電、アルミのシャーシーを削る音、、、。そして丸暗記した回路。ラジオだけでなく、その頃は廃棄される希少資源(かまぼこ板とか缶詰の缶とかミカン箱とか糸駒とか、、、)を使って遊び道具は何でも自分で作っていた。現在では大きな環境問題を引き起こしている石油系プラスティックはまだ見かけなかった。
1960年代、中学生になると、廊下の片隅に勉強机を構えて、自作のラジオでプロ野球中継を聞いていた。殆どが巨人戦だった。トランジスターラジオが登場したのは多分その頃だろうが、まだ素人では自作できそうにもなかった。京都で予備校通いをしていた頃(1966年)には、買ってもらったトランジスターラジオで、毎日 NHK の英語番組を聞いていた他、普及し始めた FM放送ではビートルズやショパンの音楽をよく聞いていた。まだ家庭でのステレオ再生装置は一般的ではなかったから、新しい音楽はほぼラジオから流れてきた他、ジャズ喫茶で聞いていたのである。半分以上は英語圏のポップスだった。当時、日本語では音韻構造上ポップスが出来ない、というような事が真面目に議論されていたのであるから、隔世の感がある。
1979年、ポスドクとしてカナダの大学に職を得ることになって、慌てて英語の勉強をしたのだが、その時聞いていたのが短波放送だった。どういう訳かこの頃短波放送を聞くのが流行していた(BCLブーム)。今では廃止となっているが、VOAでは英語初心者向けの放送に力を入れていた。2年間の就職から帰国すると「ニューミュージック」というフレンチポップスみたいなのが流行っていて驚いた。自分たちの世代の日本語が音楽になっていたのである。。。和製ロックや和製フォークに西洋クラシックの洗練された和声が使われた音楽。。。そして、現在ではそれも懐かしい昭和の音楽となり、ヒップホップの時代(ポリリズム)になっているのだが。
ラジオを目覚まし代わりに使い始めたのは、1983年に会社勤めが始まって、朝早く起きなくてはならなかったからである。SONY のラジオを SONY のオーディオタイマーに繋いで、2階の寝室に設置していた。2009年に退職して、京都で2年位単身生活をしていた頃にはどうだったか、記憶が無い。ただ、ポータブルでのステレオみたいな装置が欲しくなって、近くのヤマダ電機で店頭品のCD-MDポータブルシステム Clavia (Victor)を購入した。
2011年暮れに広島に引っ越してから再び朝のラジオタイマーを使うことになって、この Clavia の豊富なタイマー機能が役に立った。就寝用の CD にも使える。ただし、NHK 第一放送は未だに FM化されていないのが問題である。会社勤めの頃と違って、中波の放送には相当なノイズが入るようになった。家庭内の電子機器が増えてきて、しかもその電源の殆どにスイッチングレギュレーターという中波帯のノイズ発生源が装備されているからである。家庭用交流電源を使う限りそのノイズが乗ってくる。電池を使えばよいのだが、 Clavia では対応していないし、使ったとしても電力消費が大きいだろう。そこでやむなく作ったのが大きなループアンテナである。大きなコイルとコンデンサーを繋いで共鳴回路を作って、コイルの中に入ってくる中波帯の電波を共鳴させる。これはかなり強力で、電波の強度が上がるので、ノイズが抑え込まれる。
さて、そこから13年経過して、その Clavia がついに故障した。電源を入れてしばらくするとボコンと大きな音がして止まってから、何やらCDを吐き出そうとしているようにガチャンガチャンと動き始めて止まらない。制御系の故障のようである。サイズ的に小型家電を越えていて、捨てるにしても分解しなくてはならないので、解体してみた。ガチャンガチャンの音は電源トランスの隣のリレー素子から来ているようだった。何しろ毎日3回位タイマーを使っているので、リレーが壊れたのだろう。若いころであれば部品を交換して修理したとは思うが、もはや目がしょぼしょぼして細かい作業が出来ないので解体した。本体部分は小型家電のサイズに収まる。外枠は2分割すれば、その他プラに出せる。細かいものは不燃ゴミとした。こういうときには電源回路位は取っておくのだが、もはや電子工作なんかすることもないだろう。
さて、朝のラジオをどうするか?まずは、スマホラジオをタイマーで使えないか、と思って調べたら、radiko では出来ることが判った。しかし、NHK第一にしたいので、らじる★らじるではどうかと思ったのだが出来ない。でもその内改良されるかもしれないと思って、NHK に問い合わせてみた。その計画は無いそうである。。。
結局、居間でカープ中継を聞くために使っていた小型の ONタイマー付きラジオを寝室専用にすることにした。電池切れが心配なので、スマホ充電器(5000mAh)を繋いてみた。同じく5Vの筈なのだが、しばらく鳴ると切れてしまう。繋ぎなおすとまた回復している。理由はよく判らない。充電用だから電圧が高めなのかもしれない。スマホ充電器は充電池寿命がほぼ尽きた SONYの Walkman には使えたのだが、これはスマホ充電器を本来の充電用電源として使っているからだろう。そこで、電力を消費するスピーカーを使わなければ良いので、イヤホン端子に、昔買っておいた、SONY のイヤホンスピーカーを繋いだ。枕元であれば十分聞える。この SONY のイヤホンスピーカーであるが、製品番号が無かったので調べてみたら、何とこれはイヤホンケースであった。中には本物のイヤホンが収まっている。MDR-EX36SC だった。ケースがスピーカーボックスの役割をしていて、箱共鳴を利用してイヤホンの音を増幅している。SONY らしいアイデアである。既に販売終了していて、他には類似製品は無い。単にイヤホンを適当なケースに入れればこれくらいの音になるだろうと思って、いろいろなケースを試してみたが、なかなか大きな音にはならない。それなりの音響設計がなされているらしい。さすが SONY。。。
ところで、朝の NHK第一放送は「マイあさ」というのだが、なかなか面白い。紋切型のニュースは別として、文化、政治、経済、社会のトピックスがその道の人の解説で聞ける。これを7時半頃まで聞いてから、民放に変えて「武田鉄矢の まな板の上で」を聞いている。まあ、さすがにこの頃にはもう起床していることが多いのだが。。。
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