2 ヤンバルの森 保護林に     筒井 謙

1999年5月16日付け朝日新聞朝刊に,沖縄北部米軍訓練場跡地のヤンバルの森の保護に関する林野庁の方針が掲載された。希少種の宝庫であるヤンバルの森の大半は国有林であり,これを保護地域・保護林としてまとめて守ろうとする方針である。以下記事をそのまま載せる。

沖縄県の本島北部にある米軍北部訓練場が部分返還されるのに伴い,ヤンバルの森の保護策を審議していた林野庁の検討委員会は,国有林野の 3370ヘクタールの大半を森林生態系保護地域などに指定,保全すべきだとの報告書をまとめた。

ヤンバルの森は世界有数の亜熱帯降雨林としてノグチゲラなど希少動植物の宝庫とされる。報告書は,森林生態系を大規模にまとめて保全するとともに,貴重な植物が分布する群落を個別に保全することを求めている。地元自治体も基本的に了承しており,保護林に指定されれば伐採などの開発行為が禁止される。

 報告書は,返還予定の地上域も含めた北部地域の国有林 7580ヘクタールが調査対象。それによると貴重植物では、固有種としてオリヅルスミレなど十八種、北限種はリュウキュウキンモウワラビなど五十八種。南限種はアオヤギソウなど二十一種が生えている。

 動物では,土着のほ乳類十二種のうち、ケナガネズミとトゲネズミは国の天然記念物に指定。烏類は五十四種が確認され、ノグチゲラは特別天然記念物、ヤンバルクイナとカラスバトは国の天然記念物に指定されている。北部地域中央の与那覇岳周辺は樹齢の高い森林が多く、ノグチゲラの営巣地が多い、としている。

その上で、「北部国有林は、森林生態系としても、豊富な貴重種の存在からも極めて重要」とし、・北部国有林を代表するような森林生態系を大規模にまとめて保全する・貴重な植物が分布する群落を個別に保全するために区域割りをする、ことを求めている。

区域割りの方法では同庁の保護林制度を活用、森林生態系としての貴重性が高い地域は森林生態系保護地域、特に貴重な動植物が生息・生育する地域は植物群落保護林と特定動物生息地保護林に指定、保護を提案している。林野庁は2002年度末をめどに返還された後の国有林の扱いについて倹討委員会を1997年に設置,専門家,地元の国頭村と東村の村長、森林組合代表などを委員に審議してきた。

保護林として指定されると、伐採などの開発行為は厳しく規制される。今後は委員会を中心に具体的な地域の線引き作業にかかる予定だ。地元の村などは、周辺に民有林も多いことから「林業振興にも配慮を」と林野庁に要望しているが、国有林の保護は了承した。