昨今、西欧、アジアで鉄道が躍進している状況の中、本書はタイムリーな刊行だと思います。
まずは日本で鉄道が発展していった、その状況、理由を整理。この部分、鉄道付きには興味つきない日本の鉄道史です。
一方、西欧社会においては自動車が中心となり、鉄道はむしろ凋落傾向にあった。
そもそも何故そうした違いがあったのか。本書ではそこまで触れてはいませんが、私が勝手な想像を巡らすところ、馬車と徒歩という違いがあったからではないのか。つまり、西欧では馬車が一般的に利用されていましたから、馬車から自動車への移行は自然な成り行きでしたでしょう。ところが日本では旅も含めてどこへ行くにも徒歩が原則。それが文明開化によって鉄道か自動車かを迫られたとして、お上が何をどうするかと言えば鉄道が選択されたのはこれまた当然の成り行きだったでしょう。
ともあれ、日本が国鉄民営化により非効率な鉄道路線廃止の流れが生まれたのに対し、西欧では町づくりの視点から鉄道をどう活用していくかという視点が生まれ、(長距離輸送のための高速鉄道導入の一方で)LRT=次世代型路面電車システムに注目が集まっている、という違いが明確になったとのことです。
環境問題、エネルギーの効率利用を考えれば、自動車より鉄道の方が望ましいのは自明のこと。ただし、西欧におけるLRT導入は自動車排除ということではなく、それも含めた総合的な交通システムの構築にあるという。
そういった政策問題になると、日本の場合はやたら硬直的な姿勢が目につきます。国会、官庁と、とかく柔軟性が欠けているからでしょう。その点、住民と距離が近い地方公共団体でLRT導入が進んだというのは理解しやすいこと。
鉄道をこれからどう活かしていくか、その問題を考えてみるのに本書は恰好の一冊です。
序章:よみがえる「鉄道時代」/1.鉄道先進国・日本/2.EUの鉄道復興政策/3.高速鉄道の新時代/4.大都市圏交通の新展開/5.地方都市における鉄道再生【欧州】/6.地方都市における鉄道再生【日本】/7.鉄道が拓く成熟社会/コラム1.〜8./終わりに
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