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●「トロンプルイユの星」● ★ すばる文学賞 |
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零細イベント企画会社に勤めるサトミ、自分も周りにあったものが、少しずつ消えていくことに気づきます。 最初は菓子という何でもないものだったのですが、次第に、人、仕事、そしてついには記憶が。 上司である久坂、2人だけの時に、それはすべて自分の所為だ、すまないと詫びる。 そして、そうした出来事と相応するようにサトミの前に現れたヘッドハンティング会社の社員だという男=遠野。 ファンタジーなのか、SFなのか、それともサスペンスなのか、とらえどころに苦慮します。 題名の“トロンプルイユ”とは、美術用語で「だまし絵」のことだそうです。 どこからどこまでが真実なのか、虚構なのか。日常生活の中に、そんな危うさが潜んでいることを描いたストーリィということですが、納得感が得られないまま読み終わってしまったのが、残念なところ。 危うさがあるからといってどうしたら良いのか。一人一人の人間にはどうしようもないことだとして、何に繋がるのか。投げかけだけで終わってしまったという印象なのです。 |