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2.千両花嫁-とびきり屋見立て帖No.1- 3.利休にたずねよ 5.ええもんひとつ-とびきり屋見立て帖No.2- 6.神変 7.赤絵そうめん-とびきり屋見立て帖No.3- 8.花鳥の夢 9.利休の茶杓-とびきり屋見立て帖No.4- 10.修羅走る関ヶ原 11.夢をまことに |
●「戦国秘録 白鷹伝(はくようでん)」● ★★ |
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2007年04月
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浅井長政滅亡後、信長配下となった鷹匠・小林家次(後に家鷹)を主人公とする戦国小説。 執筆にあたり、山本さんは、鷹狩のルーツ取材にモンゴルまで出かけたとのこと。その熱意に対して賛辞を呈したい。 |
●「千両花嫁-とびきり屋見立て帖-」● ★☆ |
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2010年11月
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駆け落ち同然に夫婦となった若い真之介とゆずの2人。 許されぬ事情ある2人が夫婦になって・・・という連作時代小説というと北原亞以子「深川澪通り木戸番小屋」を思い出すところですが、同書は老夫婦を主人公にしていてひっそりと、という感じの作品。それに対して本書は、お互いに惚れあった若い2人の夫婦が主人公ですから、これから2人で頑張って生きていこうという爽やかで若々しさに満ちた連作短篇集になっています。 道具の見立てだけでなく、人物の見立ても試されるというところがストーリィの妙味。 千両花嫁/金蒔絵の蝶/皿ねぶり/平蜘蛛の釜/今宵の虎徹/猿ヶ辻の鬼/目利き一万両 |
●「利休にたずねよ」● ★★ 直木賞 |
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2010年10月 2018年08月
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自らの絶対的な権力をもって利休を自分の足元に屈しせしめんとする秀吉、それに対し、美への矜持を貫き、切腹するとも小癪な「猿め」に屈するものかと意地を張る当代一の茶人=千利休。 第一章は、その千利休がついに切腹に至る当日を描く篇。 前半こそ、秀吉も強引だが利休の方もまた驕り過ぎではないかと感じていたのですが、次第に“侘び茶”“美”とは何ぞやと考えるようになり、それに連れて千利休という人物の奥行きを感じるようになったという次第。 死を賜る(利休)/おごりをきわめ(秀吉)/知るも知らぬも(細川忠興)/大徳寺破却(古渓宗陳)/ひょうげもの也(古田織部)/木守(徳川家康)/狂言の袴(石田三成)/鳥籠の水入れ(ヴァリニャーノ)/うたかた(利休)/ことしかぎりの(宗恩)/こうらいの関白(利休)/野菊(秀吉)/西ヲ東ト(山上宗ニ)/三毒の焔(古渓宗陳)/北野大茶会(利休)/ふすべ茶の湯(秀吉)/黄金の茶室(利休)/白い手(あめや長次郎)/待つ(千宗易)/名物狩り(織田信長)/もうひとりの女(たえ)/紹鷗の招き(武野紹鷗)/恋(千与四郎)/夢のあとさき(宗恩) |
●「命もいらず名もいらず」● ★★☆ |
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2013年05月
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幕末から明治にかけて渾身の活躍をし、無刀流の開祖ともなり、剣・禅・書の達人として知られた山岡鉄舟の生涯を描いた歴史時代小説の傑作。 幕末を描いた歴史長篇の中で抜群に面白いのは、司馬遼太郎「竜馬がゆく」であるとして過言ではないと思いますが、子母沢寛「勝海舟」も十分に面白い。 竜馬、海舟と同様に面白いといっても、人間としてのタイプはまるで異なります。だからこそ、こうしたタイプの人物もいたという面白さ、興味にとことん惹き込まれるのです。 その鉄舟、幕臣の小野鉄太郎として生まれる。異腹兄が家督を継いだこともあり、槍術の師であった山岡静山の急死に伴い、弟の泥舟らに勧められて妹の英子の婿となり、山岡鉄太郎高歩(たかゆき)。 剣への鍛練の部分、禅への求道部分を読んでも面白く、さらに度外れな本気度を何度も示す逸話の部分も面白い。 ストーリィとしても主人公像としてもすこぶる面白い上に、歴史を知る面でも貴重な、傑作歴史時代長篇。お薦めです! |
●「ええもんひとつ-とびきり屋見立て帖-」● ★☆ |
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2012年12月
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勤皇の志士、新撰組らが入り乱れて世情騒がしい幕末の京を舞台に、道具屋“とびきり屋”の稼業に励む夫婦=真之介&ゆずの若々しい姿を描いた“とびきり屋見立て帖”シリーズ、第2弾。 こうしたシリーズもの、1冊目は私にとって吉原の初会のようなもので、どこか手探りしながら読んでいるところがあります。そして2冊目、裏を返したようなもので初めて寛いで楽しむことができる。本書もまさにそんな具合です。 世情騒がしいことながら、店を構え、奉公先のお嬢さんだったゆずを駆け落ちのようにして嫁に迎えた真之介、まずは商い一筋というところ。 前巻「千両花嫁」では、芹澤鴨、近藤勇、土方歳三、高杉晋作、坂本竜馬、勝海舟ら、歴史上著名な人物にとかく目を惹かれました。しかし、本巻では、相変わらずの芹澤鴨、坂本竜馬に加え、桂小五郎と幾松の登場はあるものの、あくまで中心は“とびきり屋”の商いぶり。その点もまた、本作品を寛いで楽しめた理由です。 夜市の女/ええもんひとつ/さきのお礼/お金のにおい/花結び/鶴と亀のゆくえ(とびきり屋なれそめ噺) |
●「役小角(えんのおづぬ)絵巻 神変(じんべん)」● ★☆ |
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2014年06月
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修験道の開祖として知られる伝説的な人物、役小角(役行者)を主人公とする時代もの長篇小説。 亡き夫・天武天皇の遺志を継ぎ、藤原不比等の力を借りて中央主権国家造りに邁進する持統天皇(鸕野)。 現代であれば国家があり、国民は法の下で一定の制約を受けるのは当たり前のこと、としか思えませんが、本書主人公である小角としてはとんでもない、そんなこと誰が認めた!?ということになるらしい。 そしてそれは、何も役小角・持統天皇の時代だからの事ではなく、現代の国家政治にも通じること。 |
●「赤絵そうめん-とびきり屋見立て帖-」● ★☆ |
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2014年06月
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幕末の京を舞台に、道具屋“とびきり屋”の稼業に励む仲の良い夫婦=真之介&ゆずの若々しく温かい姿を描いた“とびきり屋見立て帖”シリーズ、第3弾。 相変わらず、幕末を賑わした坂本竜馬、芹澤鴨、近藤勇、桂小五郎、三条実美といった面々が登場します。 赤絵そうめん/しょんべん吉左衛門/からこ夢幻/笑う髑髏(しゃれこうべ)/うつろ花/虹の橋 |
8. | |
「花鳥の夢」 ★★ |
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2015年03月
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安土桃山時代を代表する絵師の一人=狩野永徳の生涯を描いた歴史長編。 本書では、永徳の等伯に対する妬心・葛藤も読み処の一つ。 ※直木賞を受賞した安倍龍太郎「等伯」の主人公が、上記の長谷川信春。同時代の絵師だったのですねぇ。 1.緋連雀/2.洛中洛外/3.燕/4.雲と龍/5.弟子の絵/6.安土城/7.黄金の宇治橋/8.唐獅子/9.花鳥の夢 |
9. | |
「利休の茶杓-とびきり屋見立て帖-」 ★☆ |
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2016年02月
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幕末の京を舞台に、茶道具屋“とびきり屋”の稼業に励む仲の良い夫婦=真之介&ゆずの2人を主人公としたほんわか系時代小説“とびきり屋見立て帖”シリーズ、第4弾。 真之介、ゆずといういつも仲の良い夫婦がお互い協力し合い、補い合いながら、京で茶道具屋稼業を成長させていくところが、本シリーズの楽しさ。 不穏な情勢はますます強まり、それでも真之介とゆずの仲の良さはより一層という中で、何時の間にか“とびきり屋”の商売が大きくなっているところが嬉しい。 よろこび百万両/みやこ鳥/鈴虫/自在の龍/ものいわずひとがくる/利休の茶杓 |
10. | |
「修羅走る関ヶ原」 ★★ |
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2016年01月
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“関ヶ原”と言うとすぐ思い出すのは、司馬遼太郎「関ヶ原」。その印象が強い所為か、今さら関ヶ原ではないよなぁと余り興味はそそられなかったものの、山本兼一さんの遺作でもあるし、と読んだ次第です。 とはいえ、読み始めてみると、やはり面白い。予想しなかった面白さを見い出した、という思いです。 司馬作品は歴史上の大きな出来事という観点から描いたものと思いますが、それと対照的に本書は、関ヶ原合戦の凝縮された一日のみ、それも自分たちの運命を分かつ戦場に立った武将たち一人一人を克明に描き出しています。 石田三成や徳川家康、福島正則、黒田長政、島左近、小早川秀秋、大谷吉継といった主役~準主役級人物だけでなく、彼等の家臣等々私が名前を知らなかった脇役級の人物も多数登場します。合計20名弱。 天下分け目の関ヶ原、その戦場での凝縮した一日を背景に描いた武将群像劇です。 そこから浮かび上がって来るものは、勝ち負けや生死といった問題ではなく、重大な岐路に立った時に人はどう道を選択するか、という問題です。 何が正義かという点から道を選ぶ三成のような人物もいれば、三成憎しという感情だけで徳川方についた福島正則のような人物もいる。さらには、義、誇りという面から行動しようという人物もいれば、自分の身のことだけ、または国を守るという名目からどちらの側に付くかを考える人物もいる、といった具合。 ストーリィの舞台は合戦場ですから生死を賭けた究極の選択ではあるのですが、現代において岐路に立たされた時(職場とか仕事とか)にも通じるところがあるように感じます。 その意味で、リアルな迫真さを備えた作品。冒頭から最後まで、全く目を背けられない力作です。 ※安部龍太郎さんの追悼エッセイ(「修羅の死生観」)付。 |
11. | |
「夢をまことに」 ★★☆ |
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2017年02月
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どうしたら鳥の様に空を飛べるのか、森羅万象にはすべて道理がある。その道理が判ればどんな夢でもまことにできる筈。 あらゆることに疑問を抱き、道理を究めようとするその人物こそ本作品の主人公、近江にて代々の鉄砲鍛冶である国友一貫斎藤兵衛。 ストーリィは、国友村で古い利権に固執する年寄2人と年寄脇である一貫斎との公事(訴訟事)のため、一貫斎らが江戸に出てくるところから始まります。公事は長い時間がかかるもの、この機会を利用して江戸の名技工らと技術交流しようと一貫斎は勇んで出府してきます。その一貫斎の行動ぶりが目覚ましい。 本作品はそれ以降、鉄砲鍛冶という範疇に留まることなく、夢を実現する為に度重なる失敗をものともせず、絶え間ない努力と創意工夫を重ねて人の役に立つものを作り続けた一貫斎の生涯を描いた時代小説です。 とにかく、努力と工夫を重ねていけばどんなに年数が掛かったとしてもいつかは実現できる筈と明言して疑うことのない、一貫斎という人物がどんなに魅力的であることか。 いくら失敗を重ねようとそこから学べることがある、失敗の先にはいつか成功がある筈という信念を揺らがすことなく、常に真正面から前向きに進んでいく発明家=一貫斎を描く本ストーリィは、ワクワクする楽しさに満ちています。 皆がこうした思いを共有できたら、どんなに社会は明るくなることだろうと、つい心が弾んでしまう気分です。 実在の人物を描く時代小説ながら、時代小説の枠を超えて清新な風をもたらす一作。 山本兼一さんの遺作というだけでなく、お薦めしたい傑作。 第1章 出府:鷹の夢/お裁き 第2章 阿蘭陀風炮:巡り合い/試射披露 第3章 テレスコッフと天狗:玄妙なる筒/天狗少年 第4章 国友村:帰郷/神鏡/役に立つ道具/海にもぐる船 第5章 海へ空へ:空を飛ぶ船 第6章 神通叶う:眠りの龍/村を救え |