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1.ペンギンは空を見上げる 2.ナイフを胸に抱きしめて 3.同じ星の下に |
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「ペンギンは空を見上げる」 ★★★ 坪田譲治文学賞 |
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2022年09月
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小6・佐倉ハルの夢はNASAのエンジニアになること。 風船ロケットを自分で設計する程のオタクですが、何故かクラスで孤立、誰も友達がいない状況。 同じ商店街で育った幼馴染の三好さえ、ハルは自分に近寄るなと約束させ、遠ざかっている風。・・・何故? そんなハルのクラスに突然、米国から転校生がやってきます。 父親が日本人、母親が英国人というハーフの鳴沢イリス。のっけから同級生たちと親しくなるのを拒否する風で、ハルとはまた違い、目立って孤立。 しかし、ある出来事がきっかけとなってハルはすっかりイリスに懐かれてしまい、いつも付きまとわれる始末。 そんな経緯もあって、風船ロケット第2号の打ち上げに際し、ハルは三好のほかイリスもメンバーに加えることになります。 一体何故、ハルはクラスでの孤立を選んだのか。それには一年前のある出来事が絡んでいるらしい。・・それは何なのか? 自分とイリスでは全く違うと言いつつ、三好に言わせれば、2人はよく似ている、ということになります。 そんなハルとイリスのやり取り、さらに三好も加えた三人の同級生関係は、ちょっと羨ましいような親密感が感じられます。 しかし、・・・・。 世の中とは中々思うようには行かぬもの。そのことを身に染みて感じているのが、ハルなのかもしれません。 その理由、隠されていた秘密は、終盤になってやっと明らかにされます。 読み終えた後は、ハルたちに向かってこう言いたくなる気持ちを抑えられません。 君たちの前に未来は開けている、君たちは夢を膨らませることができるんだ、と。 青春、イジメ、未来への夢、友情、予想もしなかったミステリ仕掛けと、本作は読み応え、感動、爽快さ、ともたっぷり。 これはもう、是非お薦めです。 ※なお、表題の「ペンギン」とは、飛べない故に空を見上げるしかない鳥、という意味らしい。 プロローグ/1.海の向こうから/2.言葉の壁/エピローグ |
2. | |
「ナイフを胸に抱きしめて」 ★★★ |
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小学校教員の和奈と、高校三年生の莉緒という姉妹。 莉緒が小二の時、父親は不倫相手を選んで家を出ていき、その後昼夜を問わず働きづめだった母親は、過労がたたって3年前に心筋梗塞で死去。 妹と2人、静かに生きていくことだけが和奈の願いだったのに、あろうことか新しく担任した2年生の授業参観で、父親を奪った不倫相手の西井千賀子に出逢ってしまうとは! 自分たち姉妹から父親と母親を奪った相手が今、こずえという娘と幸せに暮らしているなんて、絶対に許せない・・・・。 そしてその後、西井千賀子はマンションから転落死を遂げる。 そこに事件はあったのか、なかったのか。 いつまで経っても癒えない哀しみ、消えない怒り、許せないという悲痛な思いを題材にした、息詰まるストーリィ。 「ナイフを胸に抱きしめて」という題名、復讐心を胸に秘めて、という意味だと受け留めていました。 しかし、あぁ、そんな深い意味を持つ言葉だったとは! 刑事も登場し、ミステリ要素もしっかり備えたストーリィ。 でもそれは、本作が抱える様々な要素のうちの一つにしか過ぎません。 当事者の主観的な面からだけでなく、和奈の恋人である同僚教師の村山恭平、捜査一課の刑事である高峰という客観的な視点からも構成されていて、ストーリィ全体のバランスがとても良い。 そして極めつけは最後、一人のいたいけな少女が口にした一言の何と素晴らしいことか! 是非、お薦めです。 プロローグ/1.身代わり/2.偶然/3.何者かの見えない手/4.相似/5.告白/6.嘆きと叫び/エピローグ |
3. | |
「同じ星の下に」 ★★★ |
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中二少女の誘拐事件、犯人の目的は一体何だったのか、そして犯人は何者だったのか。 スリリング、感動、そして謎、それら全てが見事に融合して、抜群の面白さ! 主人公は北海道の田舎町に住む中二の有乃沙耶、14歳。 ずっと両親から虐待を受けてきたというのに、さらに両親は保険金目当てに沙耶を殺害しようと目論んでいるらしい。 そんな下校途中の沙耶に声を掛けてきたのは、児童相談所の児童福祉士で渡辺と名乗る男性。 沙耶が相談電話を掛けていたことから、救い出しにきてくれたのかと車に乗り込んだ沙耶でしたが、男は何と誘拐犯。 男は犯行声明の手紙を道警に送り付け、身代金2千万円を要求するのですが、沙耶の両親は建設現場の派遣社員、スーパーのパート、そのうえ多額の借金を抱えているという貧乏家族。 何故そんな家の娘を犯人は誘拐したのか。 犯人の目的は一体何なのか、そして犯人は何者なのか・・・。 実の両親よりずっと沙耶のことを大事に扱ってくれる渡辺とのやりとり、誘拐犯である渡辺に対する沙耶の切ない想いには、胸が熱くなるばかり。 一方、娘の身の安全などそっちのけで金のことばかり気にしているクソ親に対する道警捜査一課の進藤警部補と、若い女性刑事である相良巡査部長の怒りは、もう至極当然。 どう展開していくのか全く予想つかない中、テンポは実によく、冒頭から最後まで、面白さが増すことがあっても途切れることは一切ありません。 最後のエピローグで全ての事情が明らかになりますが、関係者それぞれの心中を思うと、胸がいっぱいになります。 名作とは言えないかもしれませんが、抜群に面白く、胸洗われるような気持ちになる作品であることに間違いなし。 是非、お薦め! 1.影の子/2.親心/3.偽物/4.団欒/5.金の篝火/エピローグ |