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「「いじめ」をめぐる物語」 ★★ |
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「いじめ」をテーマとしてアンソロジー5篇。 「いじめ」であれば、当然ながらある程度ストーリィは予想が付くもの、要はどういう解決が示されるかがポイントだろうとつい先入観を持って読み始めてしまったのですが、実に驚いた。 同じ「いじめ」をテーマにしながら、こんなにも異なる趣向のストーリィになるのか、と思い知った故です。 5篇それぞれストーリィに違いがあるのですが、作家各人の個性、持ち味を十分に発揮した結果の違い、というところが楽しい。 5篇の内ではどうしても、元々好きな作家であった荻原浩さん、越谷オサムさん、辻村深月さんの篇に惹かれてしまったのは、私としてはやむを得ないところです。 荻原浩「サークルゲーム」の主人公は、イジメが密かに起きているクラスを急遽担任することになった中学校教師の矢村琥代。この主人公のキャラクターが傑作。鈍感さも痛快さに繋がれば賞賛せずにはいられないというものです。 越谷オサム「20センチ先には」はファンタジー要素を含んだストーリィですが、何というシニカルなユーモアであることか。 両篇に共通するのは、戒め、読者への警告と言って良いかと思います。 辻村深月「早穂とゆかり」は、中学時の同級生が大人になってから再会するストーリィなのですが、何の用心もしないまま読み進んだところ、途中で思わず震えあがってしまう程、スリリングかつサスペンスな一篇。辻村さんはやはり上手い! 荻原浩 「サークルゲーム」 小田雅久仁「明滅」 越谷オサム「20センチ先には」 辻村深月 「早穂とゆかり」 中島さなえ「メントール」 |