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1.精霊の守り人 2.闇の守り人 3.夢の守り人 4.虚空の旅人 5.神の守り人−来訪編&帰還編− 7.蒼路の旅人 8.天と地の守り人−第一部 ロタ王国編− 10.天と地の守り人−第ニ部 カンバル王国編− 11.天と地の守り人−第三部 新ヨゴ皇国編− 12.流れ行く者−守り人短編集− 15.「守り人」のすべて−守り人シリーズ完全ガイド− 16.炎路を行く者−守り人作品集− 21.風と行く者−守り人外伝− |
孤笛のかなた、獣の奏者1・2、獣の奏者3・4、獣の奏者・外伝、物語ること生きること、明日はいずこの空の下、鹿の王、ほの暗い永久から出でて、鹿の王水底の橋 |
精霊の木、香君 |
●「精霊の守り人」● ★★☆ 野間児童文芸新人賞・産経児童出版文化賞 |
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2007年04月
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数々の児童文学賞を受賞した上橋菜穂子さんの“守り人”シリーズの文庫化、第1巻。 実は、上橋さんの名前も“守り人”シリーズのことも全く知りませんでした。 そもそも私が子供の頃の児童書というと世界名作を子供向けに抄訳したのが殆どで、ファンタジー作品などは余り無かった気がします(ピーターパン辺りか) 今回、私が知らない中にもまだこんなに面白い本があったのかという驚きと嬉しさを感じるとともに、今の子供たちの前にはどんなにいろいろな物語が用意されていることか、恵まれているようなァという思いを強くします。ゲームにばかり熱中しているなんて、勿体ない! 本書の主人公は、短槍の達人という女用心棒のバルサ、30歳位。偶然新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを助けたことからニノ妃に皇子を託され、父帝が差し向ける刺客から皇子を守って逃避行を続けることになります。 しかし、魅力的な物語というのは文句無く面白いもので、理由付けなど不要なもの。本書もまさにそんな物語のひとつでしょう。 |
●「闇の守り人」● ★★★ 日本児童文学者協会賞 |
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2007年07月
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“守り人”シリーズの第2巻。 第1巻「精霊の守り人」が楽しかったので、本巻も読むのを楽しみにしていました。 シリーズものとなると大抵は、第1巻の面白さの延長線上にその後の巻の面白さもあるのですが、本書はそんなものに留まりません。単独の物語として抜群に面白いのです。 そして単に面白いというだけでなく、惹きつけられて止まないのです。 何故こんなに面白く感じるのか、惹き込まれるのか、それが判らない。 ファンタジー冒険物語といっても、元々児童向けに書かれた作品ですから、そう込み入ったストーリィではありません。それなのになんで? その謎こそがまた本書の魅力と言う他ありません。 さてストーリィ。 本書の魅力は、登場人物ひとりひとりが、自らの生き方を問われているところにあるのではないかと思います。 |
●「夢の守り人」● ★★ |
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2008年01月
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女用心棒バルサが主人公となる“守り人”シリーズの第3巻。 第1巻は現世界のサグと別世界ナユグが相互に関わり合うことを描いたストーリィでしたが、今回は<花>の世界との関わりがストーリィの軸となります。 <花>の世界における花は、人の夢を糧として咲き続けます。ところがその<花>の世界に異変が生じたのか? 第1巻・第2巻ともファンタジーな冒険物語でしたが、夢、そして<花>の世界がストーリィの核心を成しているという点で、本書はより一層ファンタジー性の高い作品です。 |
●「虚空の旅人」● ★★☆ |
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2008年09月
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本書題名が「守り人」でなく「旅人」となっているのは、本書に女用心棒バルサは登場せず、主人公は「精霊の守り人」に登場した新ヨゴ皇国の皇太子=チャグムであるため。 舞台は新ヨゴ皇国の南隣国、多数の島から成るサンガル王国。 本書での魅力は、何といってもバルサとの邂逅を経て著しく成長したチャグムの姿にあります。 上橋さんのこのシリーズを読み終わる度に不思議に思うことは、何故こんなにもこの物語が面白く、こんなにも強く魅せられるのか、ということ。 |
●「神の守り人−来訪編&帰還編−」● ★★☆ |
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2009年08月
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“守り人”シリーズ第5巻。 バルサとその幼馴染である呪術師のタンダは、秋の草市を目的に久々に町に出ます。 この“守り人”シリーズ、本来児童向けのファンタジー冒険物語のはずなのに、大人が読んでも何故こう面白いのかと不思議に思うくらいなのですが、本巻もそれは変わりません。 |
●「蒼路(そうろ)の旅人」● ★★★ |
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2010年08月
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“守り人”シリーズ第6巻ですが、女用心棒バルサは登場せず、新ヨゴ皇国のチャグム皇太子が主人公となる“旅人”第2弾。 前作「虚空の旅人」で南の強大国タルシュ帝国からの魔手をサンガル王国から斥けたチャグム。そのチャグムに再び、タルシュ帝国との対決の時が訪れます。 本作品で15歳になったチャグムは、自分の真価を問われる立場になります。 「蒼路の旅人」という本書題名は、チャグムが自ら選び取ったこれから進むべき困難な道のりを示すもの |
●「天と地の守り人−第一部 ロタ王国編−」● ★★ |
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2011年06月
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「精霊の守り人」を読んだのが4年前。 当初、こんなに夢中になる物語とは、思いもしませんでした。 これまでの物語の集大成となる最終巻、「天と地の守り人」。 やっとここまで来たと言うべきか、あるいはもう最終巻に来てしまったと言うべきか。おそらく、両方の思いをもって読み進むのだと思います。 前巻「蒼路の旅人」の最後、故国を救うため大海原に身を投じた新ヨゴ皇国の皇太子チャグム。 その故国では既にチャグムは死んだと公表され、三ノ妃が産んだ弟王子が皇太子に指名されています。 一方、今もなお用心棒家業を続ける短槍遣いのバルサの元に、ロタ王国に赴いた筈のチャグム皇太子を見つけ、守って欲しいとの手紙がもたらされます。 急ぎロタの港町ツーラムへ向かうバルサ。果たして無事にチャグムと再会できるのか、というストーリィ。 言い切ってしまうと、バルサとチャグムが再び会い見え、2人で力を合わせて困難に立ち向かうからこそ読み応えある物語。 本編は、そのチャグムを追い求めるバルサを描いた部分だけに、面白さとしては未だ充分ならず。 三部作のまだ始まりの編、という内容です。 |
●「天と地の守り人−第二部 カンバル王国編−」● ★★☆ |
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2011年06月
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第二部は、バルサがチャグムを守り、2人でカンバル王国を目指す、という編。 第一部では、懸命に単身で奮闘し続けるチャグムの凛々しい後ろ姿が印象的でしたが、バルサと行動を共にするようになると、時にしてチャグム、迷いや苦しみについつい弱音を吐いてしまうようです。 この第二部は、カンバル王宮への旅路を通じて、成長したチャグムの真価が問う、という要素が強く感じられます。 何もそれはチャグムだけに限ったことではなく、カンバルの国王ラダール、同国の<王の槍>であるカーム、またタルシュ帝国の弟王子ラウルの密偵であるヒュウゴについても言えること。 大きな苦難に際して自国の民のため、自身のプライドや身を捨てて厳しい道を選ぶという姿が感動を呼びます。 どこかの国の各トップたちのように、上っ面な言葉を弄ぶのではなく、その行動によって登場人物たちはその人間としての真価を問われます。身を捨てるという行為の中にあって、プライドなどは所詮無用のものでしょう。偶々ではありますが、つい今の日本が直面している苦難への各指導者たちの対応状況と比較せざるを得ません。 いよいよ山は動きだし、次の第三部へとこの壮大な物語を繋いでいく編です。 |
●「天と地の守り人−第三部 新ヨゴ皇国編−」● ★★★ |
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2011年06月
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いよいよタルシュ帝国の新ヨゴ皇国に対する侵略の火ぶたが切って落とされます。 チャグムもまたロタ王国とカンバル王国の騎兵らからなる連合軍を率いて新ヨゴ皇国へ。 チャグムにとっては2年ぶりの故国。 そして、身を以てタルシュ軍と戦ったチャグムは、清らかな存在である父親の帝から穢れた身と非難されながら、ついに王宮にて再会を果たします。まさに万感胸に迫る、場面です。 一方、バルサは激戦の跡地にタンダを探し求め、腕に傷を負って瀕死の状態にあるタンダに再会します。 迫りくるタルシュ軍団の脅威だけでなく、ナユグの春によって王都にもたらされる大災害。 帝、チャグム、そして当代一の呪術師トロガイ等々、各々信じるところに従って道を切り開こうとする姿が描かれます。 立場は変われども、それは皇帝死去後のタルシュ帝国において、兄ハザール王子と皇位継承を争うラウル王子にしても同じこと。 各人各様の思い、道があり、人はそれぞれを背に負って歩んでいくしかない。 大河ファンタジー物語の最終章に相応しいストーリィが、本編において展開されます。 「蒼路の旅人」+「天と地の守り人・第一部〜第三部」は、チャグムとバルサの2人ががっちり組んだ、“守り人”シリーズの集大成と言うべき物語。 苦難に面した時に人はどう行動するか、という点では、宮城谷昌光さんの中国歴史小説に匹敵します。 そして、数多い登場人物それぞれの魅力、物語性、ファンタジー性、全ての点において、読み応えたっぷりな大長編。 本シリーズ・文庫版完結を機に、改めてお薦め!です。 |
●「流れ行く者−守り人短編集−」● ★★☆ |
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2013年08月
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用心棒稼業で生活の糧を稼ぎながら、バルサを守り育てる武芸の達人ジグロ。 そのジグロに鍛えられながら成長するバルサの、13歳の少女時代を描いた短編集。 シリーズ番外編ながら、これはまたこれで魅力たっぷりの物語になっています。 「浮き籾」は、山の上に住むトロガイ師のところに滞在していた頃のバルサと、ふもとの農家の三男坊である11歳のタンダの交流を描いた篇。 対照的な暮らしを送る少年タンダと少女バルサの姿が鮮やかですが、そうでありながらも結ばれている2人の交誼が微笑ましい。後の2人の関係の原型がここにあります。 「ラフラ<賭博師>」はヨゴを離れロタの酒場でジグロは用心棒として、バルサは給仕として働いていた時期の、「流れ行く者」は再びロタを離れヨゴに向う隊商の用心棒として雇われたジグロとバルサの物語。 前者は、勝負というものの厳しさ、後者は用心棒稼業の厳しさをバルサに身をもって教える物語。そして後者は同時に、用心棒稼業で将来身を立てていこうとするバルサにとって成長をするための転機となる大きな試練を与える物語となっています。 本短篇集の魅力は、一流の用心棒へと成長していくためバルサにとって必要な、哲学が語られている要素が込められている点。 だからこそまた、バルサとタンダの絆が爽やかです。 浮き籾/ラフラ<賭事師>/流れ行く者/寒のふるまい |
●「「守り人」のすべて−守り人シリーズ完全ガイド−」● ★☆ |
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「守り人」シリーズの読み方案内に始まり、作者の言葉、「守り人」百科事典、レシピ、人物事典等々から対談・講演録まで、「守り人」ファンだから楽しめる諸々を収録した一冊。 「天と地の守り人」を最後に「守り人」シリーズを一通り読み終えた今だからこそ、ストーリィ全体のおさらい、その魅力を改めて整理してみる、といった楽しみが味わえる“完全ガイド”です。 中でも魅力なのは、「守り人」海外出版をめざしての英訳苦労話等が語られる上橋さんと翻訳者=平野キャシーさんの講演録。 それに付随して、海外で出版された「守り人」の表紙絵紹介も興味尽きないところです。(英語版・スペイン版・イタリア版・台湾版・中国版) また、「精霊の守り人」一部の日英対訳が掲載されており、言語の違いによって文章の順番まで変わるのかと、翻訳の難しさと面白さの一端を覗くことができます。 なお、「天と地の守り人」の後、連れ合いとなったバルサとタンダの穏やかな暮らしを描いた掌編小説「春の光」が収録されているのも、ファンとしては見逃せません。 |
●「炎路を行く者−守り人作品集−」● ★☆ |
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2017年01月
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“守り人”シリーズの中で幻の物語になっていたという「炎路の旅人」と他1篇を収録した一冊。 「炎路の旅人」は、「蒼路の旅人」から登場したタルシュ帝国の密偵アラユタン・ヒュウゴの成長時代を描いた中篇。 ヨゴ皇国で<帝の盾>を務める武人階級の嫡子として生まれたヒュウゴが、タルシュ帝国によって父親だけでなく母妹まで惨殺されたにもかかわらず、何故タルシュ帝国に仕える道を選んだのか、を描いたストーリィ。 題名の「炎路」というのは、苦しい道を敢えて選んだヒュウゴの心の内を現したものでしょう。 「十五の我には」は、十五歳当時の少女バルサを描いた短篇。 まだジグロからやがて離れていくだろう前の時代を描いたストーリィで、身の程知らず、計算しないまま向こう見ずな行動の結果として傷ついて横たわり、ジグロに諭されるというストーリィ。 本ストーリィが欠けたからといってシリーズがどう変わるものではありませんが、主要登場人物のシリーズ以前のストーリィ、エピソードとしてファンにとってはやはり嬉しい一冊です。 炎路の旅人/十五の我には |
「風と行く者−守り人外伝−」 ★★☆ | |
2022年08月
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ファンタジー大河小説“守り人”シリーズ、もうひとつの守り人物語、といった内容の長篇。 シリーズ完結後、初めてとなる長編作品。 新ヨゴ皇国の草市で<サダン・タラム(風の楽人)>の窮地を救ったバルサは、若い頭のエオナからロタ国北部のアール家領までの護衛を依頼されます。 そのサダン・タラム、20年ほど前にジグロと16歳のバルサがやはり護衛として一緒に旅をしたという縁あり。 当時の頭は、今は病床にあって地元に留まったエオナの母親であるサリ。 そこから、ロタ国の多数派を占めるロタ氏族と、少数派であるアール氏族との争い、アール領内にある「エウロカ・ターン<森の王の谷間>」でサダン・タラムが担ってきた鎮魂の儀式をめぐる謎に関わる物語が、過去と現在を結びながら繰り広げられていきます。 過去、そして現在と、二度にわたってサダン・タラムを襲撃する一味の正体は何なのか、そしてその理由は・・・。 あの懐かしい“守り人”の世界に再び戻れる、そこで繰り広げられる冒険を再び目にすることができるということに、興奮、そして感激するばかりです。 そしてそれは、“守り人”シリーズが本格的に始まる前の、ジグロとバルサを深く描くストーリィであるのですから。 “守り人”シリーズのファン、そして同シリーズを知らない方にも、是非お薦めしたいファンタジー冒険物語の逸品です。 序章.風の旅立ち/1.あらたな旅へ/2.遠き日々/3.風の行方/終章.風がいこうところ |
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