|
|
2.魚籃観音記(文庫改題:夢の検閲官・魚籃観音記) 3.天狗の落し文 4.銀齢の果て 5.壊れかた指南 6.モナドの領域 |
●「わたしのグランパ」● ★★ |
|
2002年06月
|
どちらかというと軽い作品。でも、私好みの楽しい作品です。
ちょうど珠子は悩みの多い時。学校では校内暴力が吹き荒れ、珠子も同級生からいじめにあっています。さらに、五代家は、やくざから地上げの為脅しをかけられているといった状況。 一時代前の青春小説における、ヒーロー教師(石原慎太郎「青春とはなんだ」等)のような存在なのですが、独特の風格と、孫娘と世代差がありながらピッタリのコンビを組んでいるところが、すこぶる楽しいのです。 現在の日本社会に閉塞感が強いだけに、風穴を開けてもらったような爽快感があります。 |
●「魚籃観音記(ぎょらんかんのんき)」● ★ |
|
2003年06月 2018年05月 2000/10/11 |
およそ在りえない筈のことばかり、というショートストーリィ集。 「分裂病による建築の諸相」は意外な面白さ。「谷間の豪族」はメルヘンティックと言うべきか、それともブラックユーモアと言うべきか。 魚籃観音記/市街戦/馬/作中の死/ラトラス/分裂病による建築の諸相/建物の横の路地には/虚に棲むひと/ジャズ犬たち/谷間の豪族 |
●「天狗の落し文」● ★☆ |
|
2004年08月
|
筒井ワールドを存分に楽しみたいというのであれば、一気に読むことをお薦めします。私はちょっと時間が空いた時の読書用として少しずつ読んでいましたが、そんな読み方では楽しさ半減、だったような。 |
●「銀齢の果て」● ★★ |
|
2008年08月
|
日本において爆発的に増大した老人人口を調整し、若年層の負担軽減・破綻寸前の国民年金制度救済するため、厚生労働省が“老人相互処刑制度(シルバー・バトル)”を発足させたという、極めつけのブラック・ユーモア作。 何しろ、地区毎にシルバー・バトル開始が命じられ、決められた1ヶ月以内にその地区に住む70歳以上の老人は殺し合わなければならない。引越し・旅行も禁止。その結果1人が生き残れば良いが、万が一複数の老人が生き残った場合には全員が処刑されるという、恐るべき制度。
|
●「壊れかた指南」● ★★ |
|
2012年04月
|
本書の題名を見て、どう思います? 実際読んでみると、期待したような興奮は感じませんでしたけれど、それは玉石混交の短篇、ショートショートを集めた短篇集だから。 面白いかどうかは別として、本好きなら見逃せないのが「耽読者の家」。古い家の中に積まれた名作文学の数々を、片っ端から読み続けるという話。一見、充実していてとても楽しそうです。私も昔、大学入試を終えた後の約1ヶ月、これと同じ生活を送ったことがあります。充実感は、やはりあったなぁ。 漫画の行方/余部さん/稲荷の紋三郎/御厨木工作業所/TANUKI/迷走録/建設博工法展示館/大人になれない/可奈志耶那/遠蘇魯志耶/優待券をもった少年/犬の沈黙/出世の首/二階送り/空中喫煙者/鬼仏交替 |
6. | |
「モナドの領域」 ★★ |
2023年01月
|
「我が最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」というのが本の帯に記載された著者の弁。 しかし、最近の作品は常に「最後の」という言葉が付されていたように思うのですが・・・。 まぁそのことには関わりなく、GODが登場するストーリィとのことで読む気をそそられたという次第。 河川敷で若い女性のものと思われる片腕が発見されます。ついで近くの公園から今度は片足が発見。すわバラバラ殺人事件かと思えば、舞台は近くの“アート・ベーカリー”というパン屋へ。臨時バイトの美大生が人間の腕そっくりのバゲットを焼いたところ大評判を呼ぶ。 そしてその店の常連客である美大教授に何と神?が憑依。 その言葉どおりと神と信じた多くの人が公園に集まり、ちょっとした騒動に。そこで事故が起き、憑依された老教授は法廷に引きずり出され、裁判官相手に自分のことは「GOD」と呼ぶようにと指示します。 ストーリィにどういう意味があるかは別として、GODを取り囲む人々との会話、裁判官と検事相手のやりとりが面白い。 人間界に議論はあり得ても、神の領域において議論などある筈もないこと。 その人間界と神の領域の間で質疑が繰り返されるのですから、そうしたやりとりが好きな人間にとっては堪らなく面白い。と言って良い内容です。 特に「大法廷」が圧巻。サンタの実在有無をめぐって裁判が争われたV・ディヴィス「34丁目の奇跡」をふと思い出しましたが、底知れないものを漂わせながら面白く読ませる処は流石、筒井康隆健在、と思わせられます。 本作品の賛否は読み手の好み次第という処でしょう。 ※なお、「モナド」とは世界の構成要素のことらしいですが、本書でいう「モナドの領域」とは“神によるプログラムの中”といった意味のようです。 ベーカリー/公園/大法廷/神の数学 |