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「少女モモのながい逃亡」 ★★ |
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2023年02月
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1930年代のヨーロッパ某国。 農場や家畜、すべての私有財産を取り上げた国家主導による集団農場化。農業や農民のことを何一つ知らない少年たちが集まった青年団は、農民家族たちへ暴力と搾取を繰り返す。 そして密告。家長の連行あるいは処刑により家族は引き裂かれ、残った家族はますます窮乏化していく。 集団農場化、その失敗といえば、ソ連以外の何ものでもないでしょう。 母は病死。姉、続いて父親も青年団に連行され、生死不明。 少女モモ(15歳?)は、弱った弟オルセイを懸命に守りながら、姉や父の帰りを待ちますが、ついにオルセイは死去。 そしてついにモモは、村を離れることを決意します。 村を出たからといって救われる訳ではありません。むしろ過酷になったと言うべきでしょう。 そして生き残るためにモモは権力に屈し、それでも脱出を試みますが、収容所に送られてしまう。 何と過酷な少女の逃亡劇でしょうか。 クライン「孤児列車」、ホワイトヘッド「地下鉄道」、ジェイコブズ「ある奴隷少女に起こった出来事」等、少女の過酷な逃亡劇を描いた作品は幾つもあります。 しかし、それらの物語には彼女たちを助けてくれる人たちも存在しました。 それに引き換え本作では、どこに希望を見出したら良いのかまるで分からない、という処に悲惨さがあります。 さて、モモの旅は一体どこへ行き着くのでしょうか。胸が詰まる思いです。 <プロローグ> 1932年から1933年 第一部 <A> 1930年まで/<B> 1933年/<C> 1933年から1934年 第二部 <D> 1934年から1935年/<E> 1937年/<F> 第三部 <G> 1937年/<H>/<I>/<J> <エピローグ> |