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12.沈黙法廷 13.図書館の子 |
【作家歴】、ベルリン飛行指令、エトロフ発緊急電、ストックホルムの密使、黒頭巾旋風録、制服捜査、暴雪圏、廃墟に乞う、地層捜査、回廊封鎖、獅子の城塞 |
11. | |
「犬の掟」 ★★
(文庫改題:警官の掟) |
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2018年03月
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暴力団の小橋組幹部=深沢が射殺死体となって発見されます。 深沢殺害の犯人は誰か、そしてその真相は何だったのか。 最後は予想もつかなかった驚愕の展開。 |
12. | |
「沈黙法廷 The Court of Silence」 ★★ |
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2019年10月
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警察小説と法廷小説が一体化した、新しい長編ミステリ。 不動産賃貸収入で裕福、一人暮らしの老人が赤羽の自宅で絞殺死体となって発見されます。 容疑者として浮上したのは、その老人の自宅に数回通った事実がある、個人で家事代行業を営む女性=山本美紀、30歳。 折しも、彼女が以前やはり家事代行をしていた老人が風呂場で溺死した事件の再捜査が埼玉県警で開始され、両捜査陣の間に連続殺人ではないかという疑いが生まれます。 結果として山本美紀は、前者の強盗殺人罪で起訴され、法廷で争われることに。 全550頁の内350頁程が警察の捜査員たちによる捜査、残り200頁程で検事と弁護士が審理を競う法廷場面に充てられているというストーリィ構成。 本作の秀逸なところは、容疑者から被告人となった山本美紀が果たして有罪なのか、それとも無罪なのかが、読者の目から見ても五分五分であること。 そんな読者の思いを共有する人物として裁判を傍聴するのが、かつて山本美紀と真剣な交際をしていた青年=高見沢弘志。 なお、公平な第三者の立場といっても、若干気持ちは山本美紀に傾きます。それは彼女の恵まれない生い立ち、そして現在の慎ましく抑制的な生き方から生まれる思い。その辺りの手加減が絶妙の上手さ。 新たな読み応えという魅力を感じる力作長編。お薦め! |
13. | |
「図書館の子」 ★☆ |
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2023年05月
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時間旅行者、彼らに関わった人々の運命を描く6篇。 タイムトラベルものと言えば梶尾真治作品、というのが私の思いなのですが、同じタイムトラベルものであっても佐々木譲さんが描くとそこはやはり全く別の趣きある作品になっています。 梶尾作品には必ずやロマンの香りがありますが、本作にはあるのは、人が背負う運命の重さ、でしょうか。 6篇の中には、元々の時間旅行者もいれば、奇しくも時間旅行をしてしまったという人もいる、時間旅行者と出会った人もいる、といった具合で様々。 中でも印象に強く残ったのは、冒頭の「遭難者」、表題作である「図書館の子」、そして最後を締める「傷心列車」。 時間旅行というのは、その旅行者に対しても悲運を与えることがある、という処が胸を打ちます。 ・「遭難者」:昭和12年、隅田川から助け上げられた男は、時間旅行から落ちてしまった人物だったのか。 ・「地下廃駅」:冒険のつもりで防空壕に入りこんだ少年2人が辿り着いた先は、15年前=1945年の東京だった。 ・「図書館の子」:猛吹雪の夜、図書館に閉じ込められてしまった少年の前に現れたのは、どんな人物だったのか。 ・「錬金術師の卵」:錬金術師が 500年前にかけた呪いは現実となるのか。 ・「追奏ホテル」:大連ルフラン・ホテルの宿泊客となった男女2人は、85年前=1935年の同ホテルに誘われ・・・・。 ・「傷心列車」:大連で女給をしていた千春をして哈爾濱に向かわせた安西順二という人物は何者なのか。そして千春に向けた約束を果たして守るのか。 遭難者/地下廃駅/図書館の子/錬金術師の卵/追奏ホテル/傷心列車 |