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「忘れ村のイェンと深海の犬」 ★☆ 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 | |
2013/12/21
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“忘れ村”と言われるくらいに貧しいホロー村。 そのホロー村で生まれ育ったイェンは、後に“女英雄イェン”とも“ホロー村の女傑”とも言われるようになります。 その女英雄イェンについて書かれた史書を紐解く、というところから語り始められるファンタジー冒険物語。 13歳のお転婆娘イェンはある日、入江で瀕死の状態にあった生き物を拾い、助けます。それは全身が白い毛に覆われ、短い六本の足を持った不思議な生き物。元気になったその生き物はすっかりイェンに懐き、シェールという名付けられます。 しかし、村の長老たちは“族”の子ではないかと言い、村にとって大きな危険になるからシェールを捨てることをイェンに命じます。イェンは仕方なくその命令に従うものの、シェールは何度もイェンの元に戻ってきてしまう。その結果イェンの一家は村中から排撃される羽目に。 そこからイェンの冒険物語が蓋を開けます。 本書においては13歳の少女イェンとシェールのコンビが魅力的。しかし、イェンはシェールの危険性を冷静に理解していて、そのシリアスさもまた本作品の得難いところ。 一方、イェンの冒険ってどこが冒険なの?とも、結局“族”とは何だったのか?等々、今一つ納得いかない面もあります。 主人公の魅力と面白さが、ストーリィの粗さと呆気なさと同居しているという印象。 それ故に、面白さの余韻と物足りなさも共に残った気がします。 |