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21.サイレントシンガー 22.劇場という名の星座 |
【作家歴】、博士の愛した数式、ブラフマンの埋葬、ミーナの行進、海、博士の本棚、科学の扉をノックする、猫を抱いて象と泳ぐ、原稿零枚日記、妄想気分、人質の朗読会 |
最果てアーケード、ことり、いつも彼らはどこかに、琥珀のまたたき、不時着する流星たち、口笛の上手な白雪姫、あとは切手を一枚貼るだけ、小箱、掌に眠る舞台 |
| 「サイレントシンガー Silent Singer」 ★★ 毎日芸術賞 | |
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小川洋子作品を読むのは久しぶり。 本作で描かれるのは、これまた独特の世界です。 主人公であるリリカの母親は、彼女を産んですぐ自殺。 乳飲み子を抱えた祖母は、内気な人々が集まって暮らす<アカシアの野辺>に雑用係兼外部との連絡役として雇われ、リリカはその門番小屋で育っていきます。 野辺の会員たちは言葉を口にせず、簡単な指言葉でコミュニケーションをとるのが常。 したがって、祖母とリリカが暮らすのは、静かな世界です。 いつしかリリカは歌を覚えますが、その歌声は決して人の邪魔にならず、静かに流れていく。 祖母が死去した後、その仕事を当然のように継承したリリカですが、その結果外部の人間と接するようになり、またボイスレッスンの先生から様々な歌の仕事を依頼されるようになります。さてその結果は・・・。 音になる、ならないに関わらず、様々な音や、暴言、TVのお笑い、SNS等々、喧騒に満ちている現代社会と比較して、リリカたちが暮らす世界の静かさは、何と心地良く、安らかであることか。 静けさと歌声、それら故の優しさ、情感をしみじみと感じる作品です。 お薦めしたい佳作。 |
| 「劇場という名の星座」 ★★ | |
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建て替えのため2025年 2月に休館した<帝国劇場>を舞台にした記念碑的な劇場&群像劇。 様々な人が集まり群像劇が作りやすい舞台として、駅、空港、ホテルが思い浮かびますが、劇場もそのひとつ。 ただし、他と大きくことなるのは、劇場には現実とは別の、煌めく舞台という世界が存在していることでしょう。 本連作小説は、まさにそういった作品。 劇場を訪れる様々な人が登場すれば、それに相応するように劇場で働く様々な人が登場します。 そうしたストーリーを俯瞰して眺めれば、帝国劇場こそが真の主人公、と感じられます。 白杖の観客を丁寧に案内する劇場案内人がいれば、劇場の中を彷徨う少年もいます。また、幕内係や楽屋係といった舞台の裏方となる人たちもいます。 観客側でも、チケットが取れなかったにもかかわらず深夜バスで上京してきた少女もいれば、同窓会でチケットをもらい初めて観劇にきた青年、チケットが取れて楽しみにしていたのに・・・という初老女性もいます。 様々な人がいますが、誰もが満足して劇場を後にする、という処が気持ち良い。それも、劇場にやって来る人たちに喜んで貰いたいと、一人一人丁寧に接客する劇場スタッフたちの心尽くしのおかげでしょう。 ※中でも、白杖男性とその娘の話、パラソルおばさんという異名をとった女性からみの話が、特に心温まります。 ホタルさんへの手紙/内緒の少年/一枚の未来を手にする/スプリングゲイト/こちらへ、お座り下さい/サークルうてな/長すぎた幕間/劇場は待っている |
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