漫然とOL生活を送っていた坂瀬川虹子、22歳が主人公。
料理旅館で行われた会社の宴会でやり玉に挙げられた虹子、自分が何の評価もされていないと気付き、好きな仕事をしたいと、その場で退職宣言。
翌日、そのサービスに感動した、件の料理旅館「かぐら屋」の女将を訪ね、ここで働きたいと直訴します。
驚いたことにその場で採用された虹子、先輩仲居の綾風らに導かれながら、表側から見ただけではまるで窺えなかったキツイ仕事に大奮闘し始めます。
“お仕事小説”と言ってしまえば簡単ですが、むしろ本書は、虹子の“青春お仕事小説”と言った方が相応しいかと思います。
料理店、旅館といえば、その裏方仕事は相当の力仕事。体力的にもキツイ仕事場と思いますが、まして京都で老舗の“料理旅館”もなるとさぞ大変なことだろうなと想像力が働きます。
そして旅館、ホテルという処は、そこを訪れる人々の様々な人生ドラマが繰り広げられ、交錯する場所。
そんな中にいきなり飛び込み、明るい性格ではあるものの決して器用ではない主人公、成功も失敗もみな体当たりでの奮闘の結果です。
幾らなんでもここまではなァと思うこと度々ですが、ストーリィとして読むならそれなりに楽しめます。
読後改めて感じることは、主人公をはじめとしてかぐら屋で働くスタッフたちが一丸となってお客をもてなそうとしていること。
主人公をはじめとし、そんなかぐら屋の従業員たちを、心から応援したくなります。
さあ、まずは本書の頁を繰り、かぐら屋に足を踏み入れてみてください。
1.凪/2.風/3.波/4.虹/5.桜
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