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11.夜明けのはざま |
【作家歴】、夜空に泳ぐチョコレートグラミー、ぎょらん、うつくしが丘の不幸の家、52ヘルツのクジラたち、コンビニ兄弟、星を掬う、コンビニ兄弟2、宙ごはん、あなたはここにいなくとも、コンビニ兄弟3 |
「夜明けのはざま」 ★★☆ | |
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地方都市の町にある、家族葬専門の葬儀会社<芥子実庵>。 本作は、その葬儀会社で行われる葬儀に関わる人たちの、これぞ“正念場”、という場面での選択と覚悟を描いた連作ストーリィと言えます。 ・「見送る背中」:芥子実庵に勤める佐久間真奈は、突然連絡を受けた親友の心中死に動揺を抑えきれず。否応なく真奈は、葬祭ディレクターとしての覚悟を問われることになります。 ・「私が愛したかった男」:花屋で花祭壇作りを専門に任されている牟田千和子、元夫の恋人の葬儀に関して元夫からの指名と聞いて困惑。元夫と揉めた過去が蘇り・・・。 ・「芥子の実」:芥子実庵に入社したばかりの須田、遺族の中に中学時自分に酷いイジメをしていた同級生を見出して席を外そうとしますが、またしても身勝手な言葉を投げつけられ・・・。 ・「あなたのための椅子」:子育て中の専業主婦=良子、中学時から大事な仲間だった一人が事故死した知らせを受け葬儀に参加したいと思いますが、夫は男友達の葬儀なんてと許そうとせず。 それがきっかけとなって、これまでの自分の選択は間違いだったのではないかという悔いがこみ上がり・・・。 ・「一握の砂」:真奈、恋人の純也からついに、結婚するにあたって葬儀会社の仕事だけは辞めてと選択を突き付けられます。それに対して真奈は、どう決断するのか。 自分にとって大事な選択を、何かと天秤にして決めてしまったら、後で後悔することになりはしないか。 出版社の紹介文に「自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。」とありますが、そんなことは生きているうえで何度だってあった筈。 だからこそ、ここぞという時の判断は、自分の本心を誤魔化さず、大事にしなければならないのだと思います。 そんな作者のメッセージを感じる連作ストーリィ。お薦めです。 ※葬儀会社を舞台にしたシリーズ作品に、長月天音「ほどなく、お別れです」があります。興味がありましたら、是非どうぞ。 1.見送る背中/2.私が愛したかった男/3.芥子の実/4.あなたのための椅子/5.一握の砂 |