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3.どうにかしたい! 4.限界集落株式会社 6.綾香 7.経済特区自由村 9.となりの革命農家 10.本日は遺言日和 |
あさ美さんの家さがし、国会議員基礎テスト、AIのある家族計画、お会式の夜に |
●「万寿子さんの庭」● ★★ |
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2009年10月
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主人公の竹本京子20歳は、就職したのを契機にアパートを引っ越す。 若い女性と老女のバトルを中心に進んでいくストーリィかと思ったら、意外にもすんなり京子が取り込まれる形で、2人はすっかり年齢を超えた友だち関係になってしまいます。 京子、彼氏いない歴20年、今も男性との付き合いに不器用。 年齢を超えた友情を結んだ2人の、心底にあるせつなさが忘れ難い。 |
●「女子は、一日にしてならず」● ★★ |
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2011年09月
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身体のサイズは4L〜6Lという極めて太めのOL=赤野奈美江29歳の、仕事に食欲に、恋に、ダイエットにという奮闘記。 冒頭の奈美江はそろそろ4Lを越えそうという、相当に太っている女性。でも彼女は格好いいのです。 “太り過ぎ”“ダイエット”という言葉は本ストーリィにおいて避けられないものですが、太っているから悪い、ダイエットこそ全て、というストーリィでは決してありません。 |
●「どうにかしたい! Sumire in Junior high school」● ★★☆ |
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ごくフツーにマジメな女の子、麻丘菫14歳が味わった試練の中2生活を描いた児童向け作品。 和気藹々とした小学校生活を楽しんで中学に進んだスミレは、愕然とする。乱暴な物言いする生徒が大勢いたから。 主人公スミレが置かれた状況は、今やどんな中学生にも、いつ起こっても不思議ないことかもしれません。 世の中、学校生活の中でさえ、自分の力ではもうどうしようもないことがあります。でも努力し続けることが大事なこと。 |
●「限界集落株式会社」● ★★ |
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銀行員、IT企業と職歴を重ねてつい最近退職届を出したばかりの多岐川優、暫し都会生活を離れてのんびりしようと、亡き祖父の住んでいた止村(とどめむら)にBMWでやって来ます。 日本の農業が存続の危機にあるのは否定できませんが、個別補償といった補助金政策を続けていれば済むことなのか。 農業とは経営的にみたらどうなのか。その視点からも興味津々、活気溢れる村おこしストーリィになっています。 |
5. | |
●「極貧!セブンティーン」● ★★ |
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26歳の女医=貴美が、自分の元を訪れた17歳の女子高生=川名美香を相手に自分の17歳時代を語る、という設定の下に描かれる極貧青春ストーリィ。 貴美、貧しいが故に不良高校と言われる公立高校生。父親が失踪した後、残された母親と妹を支えて頑張ろうとするものの、母と妹は自分勝手な言い分ばかり。加えて働き始めたバイト先でもトラブルが起きて・・・。幼馴染で同級生の優太郎、高校を中退して上京し工場で働く予定という。その優太郎に誘われた貴美、家を出て優太郎と一緒に東京へ出ることを決意します。 底まで落ちたという状況の中にあっても、夢を抱くことを忘れず、2人でそれを叶えようと奮闘し、お互いを思い合う姿。 |
6. | |
●「綾 香 Ayaka」● ★★ |
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男たちの前に姿を見せ、男たちに何かを残して忽然と姿を消す若く美しい女。彼女が去った後には何故か、男たちの死があった。 その度に姿をくらます謎の若い女というと、宮部みゆきさんの初期作品「火車」を思い出しますが、もちろん本書ストーリィは全く別のもの。 いったい綾香の目的は何だったのか。そしてそもそも綾香とはどういった女性なのか。それは第1章を読んだら誰しも強く抱く疑問でしょう。 終盤明らかにされる彼女の秘密は、読み手とするとそう驚くべきものではありませんが、その代わりに残るのは、綾香という一人の女性が抱えた哀しい宿命に対する切なさ、愛しさ。 1.2007年/2.2006年/3.2002年/4.2004年・2008年/5.2002年−2007年/6.2009年/最終章 2010年 |
7. | |
「経済特区自由村」 ★☆ |
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2015年06月
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本書題名から、最近多くなってきた村おこし小説の一つだろうとてっきり思っていたのですが、大間違い。 一言でいうと、本来長閑である筈の農村を舞台にした、正体の定かならぬストーリィという印象です。 三部構成からなるストーリィにして、どの部もそれなりにハラハラドキドキという展開。一体本ストーリィはどこへ行き着くのか、やはり村おこしなのかあるいは新趣向のサスペンスなのか、皆目予想が付きません。 1.脱マネー 自給自足/2.ある男のクロニクル/3.人々の行きつく果て |
8. | |
「脱・限界集落株式会社」 ★☆ |
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2016年11月
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「限界集落株式会社」の続編。 |
9. | |
「となりの革命農家」 ★☆ |
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このところ農業あるいは農家をテーマにした作品が続く黒野伸一さんですが、本書もまたその系列にある作品。 農村地域であるY県大沼村を舞台に、片や有機農業を目指す木村春奈と小原和也という若い2人、片や大手食品会社系列の農業生産法人=アグリコ・ジャパンで農業の近代化を目指す営業・生産部長の上田理保子独身30歳、という2つの流れを並行的に描いた長編小説。 和也と春奈の若い有機農業コンビ、本社返り咲きの為の功績狙いから大沼村のためと気持ちを変えたビジネスウーマンの上田理保子。それぞれを主人公にしたストーリィ部分は共に充分面白いのですが、二兎を追った分、面白さが分散されてしまった向きを否めません。そこがちょっと惜しまれるところ。 戦後日本は工業化により社会発展を遂げてきましたが、中後進国の追い上げ、生産のグローバル化等々で頭打ち気味。そうした今こそ、手つかずだった農業の近代化、グローバル化を推し進めるべき時代と思います。 |
10. | |
「本日は遺言日和」 ★☆ |
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小さなイベント会社=弥生プランイングに就職した川内美月、グルメや旅行企画を幾つも提出したものの全てボツ。ところがやけっぱちな気分で書いた“遺言ツアー”なる企画を、なんと社長が面白いからやってみろと即決。 慌ててバタバタと、先輩社員のサポートを受けながらツアー実行に漕ぎ付けたものの、温泉旅館での二泊三日ツアーへの参加者は僅か4名。 上品な老婦人、娘の付き添い付きの老人、年中酒を飲んでばかりの老人、そして何故か19歳の青年というのがその顔ぶれ。 その最初から予定外のトラブルが発生し、美月は参加者それぞれの事情に振り回されます。 さて新人の川内美月、参加者全員に遺言書を書かせ、初の“遺言ツアー”を成功裏に終わらせることができるか、というストーリィ。 ちょっとお仕事小説+幾つもの家族ドラマ、という趣向。 もちろん“遺言”がキーワードになっている訳ですが、遺言をする側と遺言をされる側では“遺言”の受け留め方も異なります。 短くコミカルな味わいのストーリィですが、そもそも遺言とは必要なものなのか、何を伝えるべきものなのか等々、突き詰めて考えようとすると意外に深いものがあることに気付かされます。 そんなことをするのは資産家ぐらいなもの、とこれまでは思っていたのですが、“遺言”がこうした連作ストーリィの題材になる時代になったのですねぇ。 プロローグ:ようこそ遺言ツアーへ/1.遺言書講座/2.個人面談/3.子どもの遺言/4.情けない大人/5.ツアー解散/6.第二回ツアー/エピローグ:遺言の行方 |