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「信長を生んだ男」 ★★☆ |
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2020年09月
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戦国大名たちの中でダントツに面白い素材は信長、というのが私の思いなのですが、その信長にまだこんなストーリィの余地があったとは! 驚愕させられたと同時に興奮させられた、というのが率直な思い。 勘十郎信行と言えば、兄=信長に謀殺され、その後に信長が家中を統一し天下に向けて飛躍するスタート台になったという、象徴的な人物。 本書の題名「信長を生んだ男」とは、その勘十郎信行のこと。 主人公は当然にして勘十郎信行なのですが、むしろ信行と信長、そして帰蝶(濃姫)の3人と言うべきでしょう。 実母である土田御前の寵愛の偏りから疎遠になっていた信長と信行が和解したのは、信長の底にある思いを信行が知ってから。 そして兄=信長の類まれな資質を認めた信行は、それ以降、信長が天下を目指すための軍師を自認するのですが・・・。 しかし、軍を率いるのに類まれな資質を見せながら、その一方で信長が非情に徹しきれない甘さを抱えているのに気づいた時、信行は・・・・。 終盤での、信行・信長・帰蝶それぞれの想いが交錯し、帰結に向けて雪崩れ込むような展開は、まさに圧巻。 また、天下取りに向けて走り出す前の信長を描いているという点でも興味深いのですが、平手政秀、柴田権六勝家、林佐渡守といった織田家宿将の、曲者だらけの人物群像も生き生きとして充分楽しめます。 斬新な戦国ストーリィ。お薦めです。 序章/1.盟約の日/2.謀将前夜/3.乱世の掟/4.新たな誓約/5.宰相の哲学/6.張り子の虎/7.非情の敵/8.なすべきに鳴く/終章 |