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1.泡をたたき割る人魚は 2.カプチーノ・コースト |
「泡をたたき割る人魚は」 ★☆ 群像新人文学賞優秀作 | |
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主人公の薫が望んでいたのは魚になりたい、ということ。ただし全身ではなく、足だけ。 現代の人魚姫像がまず斬新です。 「人魚姫」のような悲愴な恋物語ではなく、積極的選択という行動であっても、所詮人魚姫物語の結末は悲運なのでしょうか。 ストーリィに面白味を感じることはあっても、正直なところ、それ以上のものを感じることは無かったです。 |
「カプチーノ・コースト」 ★★ | |
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森長早柚(さゆ)、26歳。 ある事情から2ヶ月間休職することとなり、暇な日々を家から近い海岸で過ごすようになります。 うっかり水の中に腕時計を落としてしまったことがきっかけとなり、海辺のゴミを拾うようになり、やがて本格化。 一ヶ月間、ただ海辺でゴミを拾うだけのことがストーリィになるのか?と思っていたのですが、それがなるものなのですねぇ。 読んでいて結構気持ちが寛ぎます。 ゴミを拾い始めると余計にゴミが目に付くようになる、効率的かつ安全にゴミを拾うためにはそれなりの服装、道具も必要だと分る。 そして、ゴミを拾う人にもいろいろなタイプがいるし、それぞれの思い入れがある、という現実も分かってくる、という次第。 一人でゴミを拾う行為、無心になれて気持ちが落ち着く、というのはそれを読むこちら側も同じこと。快いのです。 しかし、屁理屈をつけたり、一方的に決めつけたりと、早柚の気持ちを傷つける人間も出てきます。 それに対して早柚はきちんと反論することができない・・・。 最後に、早柚が休職した事情が明らかになりますが、正しいことを唱えてもそれを世間が受け入れてくれるとは限らない、という不条理。 でも、世間がどう言おうと、正しいことはやはり正しい、それは自分の心を救うこと、と思うのです。 |