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21.懲役病棟 22.墓じまいラプソディ |
【作家歴】、竜巻ガール、七十歳死亡法案可決、ニュータウンは黄昏れて、あなたの人生片づけます、避難所、老後の資金がありません、農ガール農ライフ、あなたのゼイ肉落とします。、嫁をやめる日、後悔病棟 |
定年オヤジ改造計画、四十歳未婚出産、姑の遺品整理は迷惑です、うちの子が結婚しないので、うちの父が運転をやめません、希望病棟、代理母はじめました、もう別れてもいいですか、あきらめません、行きつ戻りつ死ぬまで思案中 |
「懲役病棟」 ★★ | |
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「後悔病棟」「希望病棟」に続く、“病棟”シリーズ第3弾。 今回の主人公は、神田川医院で早坂ルミ子、黒田摩周湖の先輩医師、元暴走族で金髪という太田香織(37歳)と、ベテラン看護師の松阪マリ江(50歳頃)。 笹田部長から2人、強引に女子刑務所に派遣されます。 その際、ルミ子と摩周湖から香織、古い聴診器を是非使ってくれと押し付けられますが、受刑者の診察に使ってみると・・・。 香織とマリ江、好奇心旺盛というか、不思議な聴診器のおかげで女子受刑者たちの切ない人生を知ることになります。 そこからが面白い。 香織、何とも強引なのです。そのうえ猪突猛進というか、医師の役割を超越いや逸脱しているというか。 でもそのムチャクチャな行動ぶりが、4人の女子受刑者に希望を与えていくのですから、堪えられません。 また、香織とマリ江のやり取りにも結構、笑わされます。 ・「万引き犯」:谷山清子、62才。万引き常習。でも清子は被害者? 一人息子から手紙も来ず。 ・「殺人犯」:児玉美帆、40歳。DV夫から子どもたちを守るため殺害。舅姑の元に引き取られた子どもたちのことが気がかり。 ・「覚醒剤事犯」:山田ルル、26才。イケメン男に騙され2回も入所。しかし、他に頼れる人間はいない。 ・「放火犯」:秋月梢、80歳。娘も孫もいなくなり、もう生きる意味はない。 ※4篇中、「万引き犯」と「殺人犯」が特に読み応えあり。 ・「受刑者からの手紙」:エピローグ。 1.万引き犯/2.殺人犯/3.覚醒剤事犯/4.放火犯/5.受刑者からの手紙 |
「墓じまいラプソディ」 ★★☆ | |
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結婚する時、姓はどっちのにする? お墓は誰が引き継いでくれるのか? 誰もが行き当たる切実な問題を、常識かどうかなど放っておけ、とばかりに本音トークで描き出した痛快な家族ドラマ。 松尾五月は61歳。人が揉めているのを見聞きするのが大好き。 夫の慎二が何か電話で揉めている様子と思ったら、亡くなったばかりの姑が、夫と同じ墓には絶対入りたくないと遺言したとのことで、義姉の光代が父親に言い出せず、困っているという。 五月の次女である詩穂は32歳、中林悟との結婚準備が進んでいるところ。しかし、自称フェミニストのくせして悟、姓は詩穂が変えるのが当然と思っており、詩穂はそれが気に入らない。 ※詩穂の異父姉である牧葉はかつて、結婚を決めた相手の姓がDV男の実父と同じだったことから相手の姓になることを拒否、破談に至ったという過去あり。 一方、悟の両親は、女は結婚したら名前を変えるのが当然、お墓も引き継いでもらうのだからと、詩穂を批判。 まさに、姓の選択=お墓の継承に繋がる、というのですから厄介なものです。 慎二の実家である松尾家、悟の親の中林家、それぞれに墓の問題を巡って揺れ出します。 そこで面白いのが、娘からも常識がないと批判されている五月の口出し。遠慮も気遣いもなしに本音トークを炸裂させるのですから、抱腹絶倒となる場面が幾度もあり。 いやー、とにかく面白いです。思わず笑いだしてしまうほど。 しかし、お墓問題、厄介ですよね。改葬するにも墓じまいするにも、それなりに費用はかかりますから。 お墓についてこれからどう考えていかなければならないか、またどう考えていく道があるのか、それらの問題がよく理解できる、実益と笑いを含んだストーリィ。 なお、松尾家の菩提寺の女性住職と、中林家の菩提寺の住職の対照的な姿も見逃せません。 私自身の問題についてもいろいろ考えさせられました。元々私個人としては・・・・なのですけどねぇ。 |
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