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1.よるの美容院 2.紙コップのオリオン 3.ABC!−曙第二中学校放送部− 4.小やぎのかんむり 5.しずかな魔女 |
「よるの美容院」 ★★ 講談社児童文学新人賞 | |
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主人公は小学6年生の女の子、まゆ子。 |
「紙コップのオリオン」 ★★☆ | |
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主人公は中2の橘論里。小2の妹=有里と両親という4人家族。ただし、母親は未婚で論里を生み、3年後に4歳年下の今の父親と結婚したという関係。 家庭、学校の双方において取り組まなくてはならない課題を抱えた論里の、中学生らしい成長ストーリィ。 どの登場人物も魅力的ですが、特筆したいのは、論理の妹である有里と一緒に実行委員を務めることになった同級生の水原白の2人。共に夢中になるとついついのめり込んでしまう、その分性格は真っ直ぐ、という共通点あり。如何にも同級生たちから浮いてしまうタイプですが、夢中になれるということがどんなに素晴らしいことかを2人が感じさせてくれます。 |
3. | |
「ABC! 曙第二中学校放送部 Akebono Broadcasting Club」 ★★☆ | |
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訳有って2年途中にバスケ部を退部し、放送部に転じた本庄みさと、3年生になったものの、肝心の放送部は同級生で機材担当を自称する古場和人とたった2人だけ(校内放送を担当する放送委員が別にいる、というのが立場の苦しいところですね)。 それでも無難に過ごせばいいやと思っていたところ、新しく顧問になった新人教師の須貝がやたら張り切って・・・・というストーリィ。 そうした中でみさとは、誰もが目を瞠る美少女でありながら孤高を貫く転校生の真野葉月のことが気になり、またやはり同級生で“いいヤツ”である新納基にも気を惹かれと、中学生はいろいろ忙しいのです。 須貝のハリキリぶりが効を奏したのか、放送部にも新入部員が入って計5人となり、放送部の活動も本格化してきます。 嫌味な同級生もいれば、頑固な教師もいる。そしてみさとや葉月のように、過去の失敗に未だ捉われている生徒もいます。 ごく当たり前の中学校生活の中で放送部の特徴は、人に何かを伝えようとする部である、ということ。 人に何かを伝えようとすること、人に伝えたい言葉を持つということ、その大切さが知らず知らず伝わってくるところに本作品の素晴らしさがあります。 そうした中学生の素直な気持ちを受け留めようとせず、聞くふりをして聞く耳を持たないといったベテラン教師の何と最悪なことでしょう。教師のみならず、職場の上司にもよく見受けられることです。 特訓でみさとたち放送部員が短い間に成長していく姿も魅力的ですが、クラス内での確執、淡い恋愛感情も当たり前のこととして描かれている点も好ましい。お薦め! 1.新学期/2.勧誘/3.お昼の放送/4.新入部員/5.発声練習/6.始動/7.根/8.出場部門/9.片手/10.けんか/11.台本/12.録音/13.エントリー/14.大会/15.夏空/終章.はじまりの声 |
「小やぎのかんむり」 ★★☆ | |
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中高一貫の有名女子校に通う中3生の万木(まき)夏芽、夏休みに親友から誘われた勉強合宿にはいかず、何故か山の中にあるお寺でのサマーステイに応募して参加。安くて遠いというのが申込理由でしたが、何と参加者が夏芽一人とは予想外のこと。 それでも迎えてくれたサマーステイの担当者だという小宮美鈴と穂村の2人は男性は実直で人の好さそうな印象。 ともあれ、夏芽の夏休みはこうして始まるのですが・・・。 ちょっとした夏休み物語かと思って読み出したのですが、母親かが強引に寺へ預けて行った雷太という5歳の男の子が飛び込んできたかと思えば、草取りの最新兵器として高1生の葉介がヤギの「後藤さん」を連れてきたりと、中々賑わしくなってきます。 それぞれ和気藹々として楽しそうなのですが、雷太には隠された事情があることが判ってくるかと思えば、夏芽が抱える問題もやがてクローズアップされ、さらには穂村や美鈴にも苦悩の過去があったことが明らかにされていきます。 子供にとって辛い現実は、親を子供は選べないということ。 それでも新しく人と繋がることによって救われることができる、そもそも子供は宝なんだと知ることができるのは、どれ程大切なことでしょうか。 夏芽、美鈴、穂村、雷太、美鈴の祖父でカラオケ好きの住職、檀家の平治さん、その孫の葉介と、どんどん人の繋がりが広がり、同時に繋がりが強まっていく様子が、背景に切ない事情があるからこそ素晴らしく感じられます。 市川朔久子さん、まだ4作目なのですが、これからも目が離せない作家であることはもう間違いなし。お薦めです! 1.夏のはじめ/2.サマーステイ/3.新顔/4.助っ人/5.三匹のヤギ/6.小さいヤギ/7.わるい草/8.小石/9.中くらいのヤギ/10.山の晩餐/11.大きいヤギ/12.小さいヤギ 中くらいのヤギ 大きいヤギ/13.最後の夜に/終章.夏のたからもの |
「しずかな魔女」 ★★☆ | |
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学校に行けなくなってしまった中一の瀬尾草子(そうこ)は、学校に通う代わりに毎日図書館へ通う日々。 物静かな図書館司書の深津さんから、<しずかな子は、魔女に向いている>という言葉を貰って励まされます。その言葉が書かれている物語を読みたいと、草子は勇気を出して深津さんにレファレンスを依頼します。 その結果、草子が渡されたのは白い紙の束。そこには、2人の少女の、溌溂としたひと夏の物語が綴られていた・・・・。 最初の「はじまり」と最後の「もうひとつのはじまり」が、草子の物語。 そしてその間の「1.〜終章」までが、深山野枝と早川ひかりという2人の少女が主人公となる、作中作。 大人しい性格の野枝は、夏休みの間祖母の元にやって来たという活発な少女のひかりから引っ張り出され、夏休み中2人で<魔女の修業>をすることになります。 2人に魔法を教え、魔女修業の指導役となるのが、ひかりの祖母で、同じ団地に住むユキノさん。何やら梨木香歩「西の魔女が死んだ」に登場した英国人のおばあちゃんを思い出させられます。 元気に飛び回る2人の姿、2人の喜びに輝く溌溂とした姿は、もう眩しいほどです。しかし、夏休みが終わる頃になると・・・。 2人の姿も眩しいのですが、黙って2人を見守っていた大人たちの存在も素敵です。 そして、草子に届けられた想いも・・・。 こういう物語があるから、児童向け作品も読まずにはいられません。本書も読んだことを幸せに思える一冊です。 はじまり/1.かしのき団地の夏休み/2.さいしょの修業/3.ダンゴムシの旅/4.二号棟五〇四号室/5.魔法の書/6.お祭りの夜/7.切れた!/8.消えたひかり/終章.しずかな魔女/もうひとつのはじまり |