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1.流跡 2.きことわ |
●「流 跡」● ★★ ドゥマゴ文学賞 |
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2014年06月
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「・・・結局一頁として読み進められないまま、もう何日も何日も、同じ本を目が追う」という書き出しから始まるストーリィ。 意識は川のように流れていき、妄想あるいは幻覚かもしれませんが、主人公をしていろいろなキャラクターに作り替え、まるで人生の流れのように形作っていく。 先の読書に悔いが残っていたため、再読。 前回は、ストーリィを追おうとしてしまったことがまず間違いだったと思います。 本作品から流れ出してくるのは、言葉、そして言葉のながれ、羅列。 普段見ることもなかったような言葉が、幾度もごく自然な様子で顔を出します。 やたら難しい言葉を避け、漢字をさけてひらがな遣いが増えている現在の風潮を背景に、逆にそうした言葉がリズムや品格を醸し出し、楽しく感じられます。もちろん、文章の端正さがあってこそのこと。 ストーリィの行く末を気にすることなど、本作品にあっては本来不要のことなのでしょう。 どこまでも流れていく文章の中にあっての文章へのこだわりと清さ、清流に手を浸すような喜びを感じる一冊。 |
2. | |
●「きことわ」● ★★☆ 芥川賞 |
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2013年08月
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貴子(きこ)と永遠子(とわこ)、春子と貴子の母子が葉山で夏を過ごした頃、一緒に時間を過ごした間柄。 25.年ぶりの再会だというのに、2人はすぐに昔からずっと一緒だったようにやり取りします。 文章そのものを味わう楽しさ、という点では「流跡」と共通しますが、具体的に2人の女性が登場してのストーリィである分、読み易い。お薦めです! |