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1.凪に溺れる 2.青く滲んだ月の行方 3.22歳の扉 |
1. | |
「凪に溺れる」 ★☆ |
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2023年05月
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一人の音楽家、その生み出した音楽「th noise of tide」、その曲「凪に溺れる」と出会い、魅せられて、自らの人生に向かって踏み出した人物、諦めという決断をした人物等々を、連作風に綴った青春ストーリィ。 ブロローグの主人公は河崎遥、派遣社員の受付嬢。You Tubeで聴いた『the noise of tide 「凪に溺れる」』の曲が忘れられなくなる・・・。 第1章は大宮夏佳、中三。父親の仕事の関係で転校を繰り返す夏佳がその学校で出会ったのは、夏佳と同様に同級生たちから浮いている霧野十太。お互いの存在がそれぞれの力になる。 第2章は、生きる道を見失っている小崎聖来、高三。十太との出会いが、その冷たさが聖来を救ってくれる。 第3章は、大学生時代に十太とバンドを立ち上げた石田正博。しかし、いつか夢を捨て現実に向かい合わなければならない時がやってくる・・・。 第4章、音楽ディレクターの北沢。the noise of tide の曲、霧野十太の名前を聞いて思い出したものは・・・。 第5章は、十太の音楽との出会いがフリーライターの道に踏み出すきっかけとなった相場光莉。ある人物との出会いによって、十太と足跡を追いかけ始めます。 そしてエピローグは、十太のことを忘れられない人物たちの出会い。そこから、それぞれの道をまた歩み始めます。 一人の人物との出会いが、それぞれの主人公の青春、人生を変えるというストーリィ構成は、遠田潤子「雨の中の涙のように」と似ています。 比べてしまう所為か、本作について不足を感じてしまうのは、肝心の霧野十太を描き出す部分が少なかったこと。 また、それぞれの青春&人生が描かれているものの、描かれたことを知るにとどまり、その奥にあるものを感じ取れなかった点。 そうした結果なのでしょうか、霧野十太と同士であった大宮夏佳の姿は、その高校時代が瑞々しかったのと対照的に、最後の登場時はすっかり枯れてしまったという印象を受け、ちょっと残念。 プロローグ.眠れぬ夜−2019年 遥/1.さよならワンダー−2006年 夏佳/2.白ゆき−2009年 聖来/3.うまれる−2015年 正博/4.blind mind−2018年 北沢/5.破顔−2019年 光莉/エピローグ.聖来 |
2. | |
「青く滲んだ月の行方」 ★☆ |
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自分の行き場所を、自分は今何をしたらいいのかを見出せない、男子学生たち4人を描く連作式青春群像劇。 そうした男子学生たちの気持ち、理解できますが、一方で私の当時を振り返るとそんな悩みを持つ余裕はなかったなァ、とも感じます。 現代的なモラトリアム、と言うべきでしょうか。 ・「端正な夜」:主人公は大学4年生の隼人。結局、大学で自分はまったく変わることも成長することもなかった、ということなのでしょうか。 ・「街の地球人たち」:大学2年の大地。女の子を次々と引っ掛けて過ごしている。理由は暇だから。そんな大地は、特定の女子に振り回され続けている友人の俊也に我慢ならず・・・。 ・「遠方」:2年留年を続けた和弘、ついていってあげるという綾香とともに故郷へ向かいますが、綾香もまた現実から逃げ続けているのか・・・。 ・「αを待ちながら」:高校が舞台。校舎から飛び降りて自殺したA。Bとα、それぞれに自分は何をすべきだったかと悩むのですが・・・。 ※なお、題名は「ゴトーを待ちながら」のモジリ。 ・「逆三日月」:故郷で就職して3年目の隼人。かつての友人たちは結局、自分とどういう関わりだったのか・・・。 どこにも行けていない、という彼らの気持ちは分かりますが、共感はできない、かな。年代の違いかもしれません。 ※本作は、真下みこと「茜さす日に嘘を隠して」とペアになる“大人未満”4人の物語、だそうです。 1.端正な夜/2.街の地球人たち/3.遠方/4.αを待ちながら/5.逆三日月 |
3. | |
「22歳の扉」 ★☆ |
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三重県から京都の大学理学部に進学した田辺朔。 漫然と大学生活を送ろうとしていた朔が出会ったのは、旧文学部棟の地下(通称:キューチカ)にあるバー<ディアハンツ>でマスターを勤めているという大学院生の夷川歩。 その夷川、大学外のバー、クラブ等々へと朔を連れ回したと思ったら、唐突に姿を消してしまう(ナイジェリアへ留学)、「ディアハンツはお前に任せる」という言葉を残して。 それ以来、朔はディアハンツでマスターとして立ち、一年一年、大学生活4年間を送っていく。 ディアハンツに顔を出す学生たちは、いずれも個性的な面々。 同期の北垣、夷川に執着し続ける野宮美咲、二浪二留の大桂、学生演劇の三井香織、自治連盟執行部の柏、等々 そうした学生たちと出会い、交わりながら、朔はいろいろな経験を重ねていく・・・。 社会に出る前の4年間という、社会人見習いのような準備期間、しかしそれは学生だからこそ許されたもの、という青春の一時期を描いた力作だと思います。 ただし、私が本作に馴染めたかどうかは別。 酒、煙草に満ちた大学生活は、結局、私には馴染めないままのものでした。 主人公の田辺朔にとって<ディアハンツ>とは、居心地の良い巣穴のようなものだったのでしょう。 時々そこから首を出して外を眺めてみる、というだけ。 だから主人公において、積極的な行動はついに見られません。 それはこの先、巣穴から出てからのことなのでしょう。 合う、合わないで作品の評価をしたくないのですが、大学青春という共感を抱くには至らず。 1.スペア/2.少年少女/3.Everything Goes On/4.長い夢/5.Wonderwall/6.勇敢なこども/エピローグ |