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Hwang Bo Reum 小説家、エッセイスト。大学でコンピュータ工学を専攻し、LG電子にソフトウェア開発者として勤務。転職を繰り返しながら、初の長編小説「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」を刊行。 |
「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」 ★★☆ "Welcom to Hyunamdong Bookstore" 訳:牧野美加 |
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2023年09月
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2024年本屋大賞、翻訳小説部門第一位ということで読みました。 本好きにとってはとても嬉しく、心地よい作品。読めてよかったです。 会社を辞めたヨンジョが、ソウル市内の住宅街で新たに開いたのが<ヒュナム洞書店>。 その店を開くに至ったヨンジョも訳ありらしいのですが、その書店に吸い寄せられるようにして常連客となった人たちもまた、いろいろ訳あり。 競争社会に疲れた人たちが、心を休めたい、心身ともに寛げる場所が欲しい、そんな場所がヒュナム洞書店だったのでしょう。 本好きにとって居心地の良い場所のひとつは、やはり書店でしょう。そこではコーヒーを飲みながら長い時間を過ごすこともできます。 本作を読みながら、ヒュナム書店で寛ぐ人たちと一体になれる気がします。 だからこそ、本作を読むのが楽しい、楽しい時間を過ごせる。本好きだからこその幸せ感がそこにあります。 ヒュナム洞書店でバリスタのバイトを始めたミンジュン、編み物が趣味のジョンソ、今に疑問を感じる高校生のミンチョル、兼業作家のスンウ、彼ら彼女らの一人一人が愛おしい。 しかし、そこは決して逃げ場所であってはならない筈。 ヒュナム洞書店、ヨンジュらとの出会いから、時間は掛かっても再び前に向かって歩み出す、そんな人々の姿に接することができることが嬉しい。 ただ、実際に書店を経営する上では難しいこと問題も多いことでしょう。でも、こんな書店が自分の暮らす近くにあったらとても幸せなことだと思います。 とくにドラマチックなストーリーではないからこそ、読み心地の良さを楽しめる作品。 是非お薦めです。 書店はどんな姿であるべきか?/もう泣かなくてもいい/今日のコーヒーはどんな味ですか?/去ってきた人たちの物語/良い本を推薦できるだろうか?/沈黙する時間、対話する時間/書店主みずから司会を務めるトークイベント/コーヒーとヤギ/ボタンはあるのに穴がない/常連客たち/たわしイベントは無事に/ごくたまにはいい人/すべての本は公平に/和音あるいは不協和音/あなたの文章はあなた自身とどれくらい似ていますか?/下手な文章が良い声を隠す/心満たされる日曜日を過ごした夜には/なんでそんな顔してんの?/仕事に対するわたしたちの姿勢/書店が根を下ろすということ/さっぱり断りたかったけれど/受け入れられる感覚/怒りを鎮める能力が必要/ライティング講座スタート/あなたを応援します/オンマたちの読書クラブ/書店を開いて食べていけるだろうか?/今日はバリスタのいる月曜日/わたしが添削しましょう/率直に、心を込めて/コーヒーを淹れるときはコーヒーのことだけを考える/ヨンジュを訪ねてきた男性は誰なのか?/過去を解き放つ/なんでもないように/ただお互いに好きでいようということ/いい人が周りにたくさんいる人生/気持ちを確認するテスト/自分をもっといい人間にする空間/ベルリンで会いましょう/何が書店を存続させるのか? |