HLA分解

2月22日

HLAの話は奥が深い。という事で、今回は雑学的にまとめてみた。

ロドスタのエンジントラブルで最も多いのがHLAのトラブルだろう。しかし、私はトラブった事はない。油温118度で8200回転を常用して間瀬サーキットを25分以上走っても問題無い。トラブルの多くは油温上昇や油圧不足、オイル管理などの問題が原因だと思う。油圧や油温も含めてオイル関連の管理をちゃんとやってればそう簡単に壊れるモノではない。ましてやノーマルカムで7200回転までしか使ってないのにHLAがトラブルを起こしたようなら、自分のオイル管理の悪さを恥じるべきであろう(笑)。

HLAを排除してインナーシムにしてしまう事に憧れるヒトも多い。だが私はHLAが大好きである(笑)。こんなに便利なモノをそう簡単に捨てる気にはなれない。カムを交換しようが、バルブを摺り合わせようがナニをしようが、バルブクリアランスの調整が不要でポンっと組み立てるだけで良いだなんて素晴らしいじゃないか! これだからこそ毎年のようにカムを交換したりエンジンをバラしたりする気になれるのだ。カム交換なんかカムを載せかえるだけで、バルブクリアランスの調整が要らないんだから、こんな幸せな事は無い。だから私は8000回転+α程度の回転数で使うならHLAを残した方が良いと考える(逆に言えば288度とか304度などのカムで9000回転以上を狙うならHLAはさっさと捨ててしまうべき)。

そのHLAは非分解式となっていて、本来は分解してはいけないモノらしい。整備書にもバラし方なんか書いてない。つーか、バラすなって書いてあるハズ。しかし、問答無用でバラすのだ。各部品の正式名称は知らないので、テキトーに書いた。


写真一番上の3個はHLAの外観を示す。表、裏、側面、それぞれの外観である。

2段目は、HLA本体から中に入っている子ピストンと子シリンダをASSYで抜いたところ。

3段目は、子シリンダから子ピストンを抜いた状態。

4段目は子ピストンに付いているチェックバルブを外して完全分解したところ。

子ピストンはHLA本体の中で天上にブチ当たっている。子シリンダはバルブステムに当たっていてシリンダとピストンの関係が伸びる事でバルブクリアランスをゼロに保っている。

以下はHLAの断面図である。相変わらずベクトル系ソフトが使えないのでペイントブラシで書いた(笑)。テキトーに書いたモノなので細かい突っ込みは無しにしてね。こーゆーのを書こうとするとPhotoshopって使い物にならないんだよねー。


黒いのはHLA本体で、上がカム側、下がバルブ側。
赤いのは子ピストン
青いのは子シリンダ
黒丸はチェックボール
ピンクはチェックボールスプリングホルダ
緑はチェックボールスプリング
水色がリターンスプリング
(部品名称はテキトー。尚、実際の部品はカラフルではない(笑))

水色のでっかいスプリングは、チッェクボールではなく、スプリングホルダとピストンを押している。従って水色のスプリングはシリンダとピストンが伸びる方向に働いている。 HLA側面の穴からは油圧がかかる。オイルはHLA本体の中を満たしており、子ピストンとHLA天井との間にあるオイル通路を通って、チェックボールを押し下げてシリンダに流入し、シリンダを下に押し下げる。ピストンは天井にブチ当たっているだけで移動はしない。シリンダが油圧で下に伸びるだけだ。これによって子シリンダの下側がバルブステムにブチ当たり、バルブクリアランスをゼロに保つ。カムがHLA全体を押し下げると、子シリンダの中の油圧が上昇し、チェックボールが閉じる。これで子ピストンと子シリンダの関係は縮まなくなるので、そのままバルブを押し下げる。これがHLAの動作である。

さて、この構造を良く見れば解かると思うのだが、HLAの中はオイルの入れ替わりがほとんど無いのだ。行ったきりで戻ってくる事は無い。エアが混入してしまった場合は抜ける事はほとんど無い。HLAが壊れたってのはエアの混入やスラッジに堆積が原因ではなかろうか? 私自身はHLAが壊れた事は無いので原因を深く追求したわけではないのだが、そんな気がする。


これは子ピストンとシリンダをバラバラにしたところ。チェックボールとチェックボールスプリングの繊細さが解かるだろう。右側にあるのが子ピストンで、真ん中の穴にチェックボールが密着する。この密着具合とボールの動きの良さが命である。これらをバラすと、ドロっとした真っ黒なオイルが出てくる。金属摩耗粉が混じったようなキラキラしたオイルだった。

こんなふうに精密な部品であるHLAの最大の敵は、スラッジの堆積、油圧の低下、異物の混入、エアの混入、などである。テフロンだのセラミックだのといった異物系固形物添加剤など最悪である事は言うまでも無いだろう。そんなモンを入れたらHLAに壊れてくださいとお願いしているようなモンである(笑)。 油圧の低下はオイルの粘度不足、油温の上昇、オイルの劣化、などで発生する。エアの混入はオイルのパーコレーション(泡立ち)などで発生する。スラッジの堆積は劣化したオイルを使い続ける事で発生する。要するに良いオイルを早目に交換し、油温や油圧をしっかりと監視し、潤滑そのものをしっかりと管理してやればHLAはそう簡単には壊れないのだ。何度も書くが、私は8000回転以上を常用しながらも壊れてない。それは頻繁なオイル交換はもちろん、オイルクーラや油温計を新車の段階で取り付けてキチンとした管理を怠らなかったからである。私がいつも使っているオイルが、高温潤滑に強くて粘度低下が少なく油圧低下も少ないってのも理由の一つではあるけどね。ロドスタオーナは他のクルマのオーナにくらべてオイルにうるさい(笑)。もともと非力なNAなので粘度の違いが体感しやすい上に、高温で粘度低下が大きいオイルだとすぐにHLAの音が出ちゃうからである。オイルクーラを追加した場合はそんなに大きな問題でもないのだが。

ちなみに私は1回だけHLAの音が出た事が有る。7月の半ば、走行距離3000Km。新車のナラシが終って初めて峠を全開で走った直後である。この時は水温計も上昇した。この後すぐにオイルクーラを付け、それ以降はHLAの音が出た事も無いし水温計が上昇した事も無い。(オイルクーラの購入を検討している人にトドメを刺す物欲刺激作戦(笑))

さて、この分解したHLAの部品をすべて洗浄する。


灯油を入れた容器で一つずつ丁寧に洗浄するのだ。洗浄したら子ピストンと子シリンダを仮組して、灯油を中に入れてェックボールの機能をチェックする。中を灯油で満たしてピストンを力一杯押して動かない事を確認、チェックボールをピックで押し下げると縮む事を確認、そのまま手を放すとリターンスプリングの力で自然に伸びて灯油を吸い込んでくれる事を確認、その状態から力を入れても縮まない事を確認、これらの作業を数回繰り返して、チェックボールの動きと密着性、シリンダとピストンの動きや漏れが無い事を丁寧に確認していく。実に時間がかかる作業である。オイルより粘度が低い灯油で漏れが無ければオイルで問題が出る事は無いだろう。


全ての部品を混ざらない様に16分割にして整理する。組合わせを換えてはいけない。すべてを洗浄して機能チェックが済んだらいよいよ組み立てである。

実際に使用するエンジンオイルを湯煎にかけて温める。エアの混入を防止する為である。冷たいオイルはエアが混じるとなかなかエアが浮いてこないが、温めたオイルは簡単にエアが浮いてくる。手も冷たくないし一石二鳥である。この温めたオイルの中でHLAを組み立てるのだ。シリンダをオイルに入れて、ピストンにチェックボールをピックで押しながらハメ込む。そのままオイルの中でチェックボールを押しながらピストンを伸縮させてエアを完全に抜く。HLA本体の中にエアも完全に抜く。HLA本体側面の穴を上方に向け、オイルの中で指をHLA裏の穴に出し入れするとエアが側面から抜けてくる。完全にエアが抜けたら、ピストンとシリンダを組んだモノをHLAに入れる。この際、HLA側面の穴から激しい勢いでオイルが噴き出すのでご注意あれ。以上の作業はすべてオイルの中で行なう。


組上げたHLAはオイルに付け込んで保管する。回りに有るのはスペアとして持っているHLAだが、出番は無かった。

さて、ここで完璧なまでにO/HしたHLAは、あまりにも素晴らしすぎて、のちに問題が発生する事になるのだが、この時点での私はそんな事は知るわけもない...(^^;;;

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