大阪わいせつリンク」事件について

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1997・4・17(第一報)
被疑者Mr・K弁護人弁護士牧野二郎

はじめに


大阪府警は、4月10日、某アダルトサイトへのリンクを行ったMrKを、
リンク自体が違法と判断して逮捕、勾留した。

容疑事実は、勾留状によって確認した所では、上記アダルトサイトの
URL等を表記したMrKによるリンク行為が、上記アダルトサイトの主
宰者おこなった「わいせつ図画公然陳列」を、「容易ならしめ」た、とい
うものである。

一部の新聞発表では、MrKに対し、極めて悪意な非難、誹謗中傷が行われ
ており、また、同氏の開発した画像処理ソフトが違法なものであるかのごとき
間違った決め付けを行い、同氏を強く非難するという違法行為があったが、そ
の原因が大阪府警の新聞社に対するリークによるものか、新聞社の捏造に
よるのか、はまだ不明であるが、順次明らかにする予定である。

このページでは、これまでの誤報に対し、事実に基づき、現在の事件の進行
を明確にし、もってMrKに対する誤解、及び同氏の開発したソフトに対する誤
解を解き、同氏の名誉を回復するとともに、事態の正確な把握を可能にする
ことを目的とするものである。


被疑事実概要(逮捕・勾留にかかる事実の概要)


MrKは、アスキーの会員であるが、アスキーのサーバーコンピューター内に、
ホームページを開設し、同ページ内に自己が開発した画像処理ソフト「FLマ
スク」を販売中、右ソフトの販売促進のため、
1)東京都内某プリバイダー内に開設された「アダルトクラブJボックス」(主宰
者は「わいせつ図画公然陳列罪」にて起訴され、大阪地裁平成9年2月17日
に有罪判決、後確定)に対し、平成8年9月から11月までの間(第1事件)
2)東京都内某プロバイダー内に開設された「あまちゅあふぉとぎゃらりー」(主
宰者は現在起訴され、まもなく公判開始となる)に対し、平成8年10月から平
成9年2月までの間(第2事件)、
MrKのホームページ内の「関連リンク」内に、右二つのホームページへのリン
クを行い、わいせつ図画公然陳列の幇助をなしたものである。

MrKの主張

リンクした事実は間違えない。

リンクする際に、礼儀として、リンクすることの承諾を得るなどを取る主義であり、
無断リンクを避けたまでであり、特別な意図はない。

リンク先が画像処理を行った画像を掲載しているという事実は認識したが、その
画像の内容までは確認していない。

単純なリンクを行ったまでである。


弁護人の見解(4月17日時点、追って追加の予定)


1 本件は、幇助犯というもので、極めて異例な逮捕、勾留である。
しかも、大阪府警が東京のプロバイダーに設置したホームぺージを問題にする
という、違和感のある捜査である。しかも、前記第1事件の被告人以外は、大阪
に居住していないといった状況である。

2 法的な見解

正犯(主犯)の各事件は、わいせつ画像を陳列していたというが、その画像は、
いずれも「マスクを付した画像データー」というものであり、まずその画像の
「わいせつ性」「わいせつ物性」が問題となる。

(猥褻物とは)
刑法では、陳列するものは猥褻物そのものとされており、声(ダイアルQ2事件)
等が猥褻物ではないことから、「物」自体を追求するというのが、判例上一致した
判断である。画像と画像データーとの差を無視することはできず、ここで、データ
ー(デジタル信号)を猥褻物と判断すると、形のないものを処罰対象とすることに
なり、刑法の基本原則である、罪刑法定主義に反する結果ともなる。この点は、
関西大学園田寿教授のご見解を参照されたい。

(「わいせつ性」とは)
マスク処理されたものが「わいせつ」なのか、という点が、次の大きな問題である。
これまで、モザイク等といわれ、ビデオテープ等においても、通常一般人に見えな
いというものは、わいせつの認定をしない、認定できないというのが基本であった。
ビデオでも、「モザイク消し」というものが売られており、それは利用者の判断とさ
れ、ビデオ自体のわいせつ性判断は、ビデオ自体の客観的判断であった。今回
の第1事件も、第2事件も画像は、ビデオと同様に問題となる部分はすべて、処
理され、不特定多数人が、当該画像を閲覧しても「劣情」をもよおすことはない。
そうした画像処理をしたものを見て、興奮するという特殊な体質を持った人もいる
かもしれないが、刑法では「一般人」の感性を基準にするので、通常の感性から
は画像処理された画像を「わいせつ」と感ずることはないと断言できる。
公然陳列とは、「公然」を要件とする。不特定または多数人が認識できる状態に
置くことを言うもので、客観的に判断するほかない。端的に言えば、第1事件や第
2事件のホームぺージを見たものが、何を見たかということである。

警察、検察はこの点、利用者が当該処理済の画像をダウンロードして、いったん
回線を切って、利用者の判断で、利用者が自己のコンピューター内で、画像処理
ソフトを稼動させ、成功した場合には、これを利用者個人で私的に鑑賞していると
いう、利用者の特殊な行為をも、「公然」の要件に加える判断をしている。
これは、従来の刑法理論では、因果関係の中断(故意行為の介入による中断)
ともいわれ、当該故意行為によって共犯者を決めるというものであった(現在この
理論は支持されていないので、利用者が共犯になるということはないが)。

わいせつ性の判断が、利用者の各コンピューターの中で、展開されたものを問題
とするなどというのは、「公然」の概念に反するものであり、許されない。

(リンクの法的評価)

警察、検察はリンクをもって、幇助行為と評価するが、この点も大きな疑問がある。
そもそも幇助というのは、ある犯罪行為が想定され、その犯罪行為を容易にした
というもので、犯罪の前に凶器を用意・提供する(予備的従犯)行為や、犯罪の実
行中に見張りをする(随伴的従犯)行為といったものを言い、犯罪が終了してから
の事後従犯は認められていない。

本件リンクは、第1事件、第2事件共に、MrKのリンク以前に、当該行為を行って
おり、リンク以前において既に行為は完成し、継続状態にあったというものである。
この点、公然陳列行為は継続犯といわれ、行為のつつくかぎり、犯罪状態がある
といわれ、それに対する加功が、途中から起こりうることも否定しない。しかし、リ
ンクの前後において、公然陳列行為には何らの変化もなく、また、リンク自体は、
当該第1事件、第2事件のホームページに対し何らの影響も持たない。結局、当
該リンクによる変化はないことは明らかで、公然陳列への加功は認められないの
である。

リンクは、利用者、情報を求めるものに対して、行き先を案内するものであり、こ
の点の認識は、争いはない。行き先を案内することが、「公然」「陳列」に加功す
るというのが、警察・検察の認識であるが、弁護人の認識は、単に利用者に対
するサービスであるとの認識である。
そもそも、リンクが発達したのは、情報の探索を手助けするものであり、探し手
に対する援助行為としてであった。サーチエンジン、ディレクトリーサービス、人
気投票、トップテンなどといったサービスも、リンクそのものである。
最近では、書籍において、リンク以上の詳細な解説と、アドレスを告知し、利用
者の便利に供するものが多数ある。

こうしたサービスが適法なのは、利用者の利用における便利であり、いわば電
話帳を提供するようなものなのである。NTTが電話帳を提供していても、犯罪
(幇助犯)に問われないのは、犯罪行為への加功ではなく、利用者の便宜を
図ったに過ぎないからである。利用者に対する情報提供が犯罪だとなれば、
NTTも犯罪者であり(犯罪者の電話番号や広告宣伝を掲載している場合があ
る)、プロバイダーも、みな犯罪者となる。NTTにリンクしている首相官邸も犯
罪者になる。果たしてそうか。

リンクは、一方的な案内である。それも、極めて無責任な案内に過ぎない。
同時にリンクは、自己の好みを表現するに過ぎない。「私の好きなホーム
ページ」というものを表現しているに過ぎない。自分の好きな本と販売店を書
いているのと同じである。
そして、利用者は、リンクによって、便利になることはあっても、リンクがないか
らといって特段の変化もない。その、「私の好きなホームページ」をどう評価す
るか、リンク先を見て、どう判断するかは利用者の責任であって、リンクしたも
のの責任ではない。

リンクは、犯罪行為を構成するものでもなく、犯罪行為の執行を助けるもので
もなく、犯罪に関与するものでもない。


(結論)
被疑者MtKは、無罪である。


争いなき事実(警察及び検察に確認済み)

FLマスクは、適法なソフトであり、販売することも、利用することも
何ら違法ではない。


(弁護人の判断)

したがって、これを販売するページを閉鎖することも、アクセス制限すること
も許されない。自由な経済活動を制限することになる。
また、上記ソフトは禁制品ではないので、利用者は自由にこれを利用する
ことができ、何らの制限もない。
過剰反応、過剰規制、不当の自己規制は必要ない。

事件報告1

進行状況

準抗告内容

広島ワイセツリンク事件も参照ください。

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