ポケットに入らないポケコン (笑)
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- Last Modified '01/05/19 -

ゲームボーイが登場する前、ファミコンが一世を風靡するよりも前、電子ゲームというモノが子供達のマストアイテムになっていたことがありました。今思えば、1つのゲームしか遊べない (まぁ、レベルの違いはありましたけど) モノに5000円以上ものお金を注ぎ込んでいたとは恐ろしい話です (もっとも、当時は親が金を払っていたので自分のフトコロは全く痛みませんでしたけど (笑))

まぁ、そんな電子ゲームの中にも後期になってくると、1台で複数の違うゲーム (レベルが違うというのではなく内容が違う) が出来るようなモノ (エポックのゲームボックスペンタ、とかトミーのスリムボーイシリーズとか)も出てくるのですが、1枚の画面の中では色々と制約がある為、内容は違っていてもキャラクタに変化が乏しく見た目のインパクトが無いためにアピール度は高くありませんでした (実際に遊んでみると違いが分かるんだけど、やはりオールマイティにゲームをこなそうとすると当時の液晶やFL内に描画出来るキャラクタには制限があったので、凝ったキャラは作れなかった・・・ま、コレはコレで味があって良いんだけど (笑))。また、液晶画面ごと取り替えてしまおうという意欲作 (バンダイのデジカセシリーズ) も出されましたが『素直に最初から2台にした方が』というシロモノで広く普及はしませんでした。そして、そうこうするうちに例のファミコンブームが起こり、電子ゲーム自体が完全に廃れてしまいました。

そんなファミコンブーム真っ只中の1985年の春に発売されたのが、このゲームポケコン (エポック)です。エポックといえば、当時スーパーカセットビジョンを発売していたのですが、ファミコンの前に苦汁を舐めていました。ゲームポケコンは低価格と手軽さでファミコンに挑戦しようとしたマシン・・・かどうかは分かりませんが、何はともあれ、このページではこのマシンの魅力について書いていこうと思います。

威風堂々 (笑)

まず、本体から見ていきましょう。え〜と、隣に並んでいるのは初代ゲームボーイです (正確には Bros. シリーズ)。はい、ゲームボーイカラーじゃありません、あのイチバン大きいゲームボーイです。いやぁ、ゲームボーイもポケットに入れるのはかなり苦労しましたが、コレはオーバーオールの胸ポケットでも難しいんじゃないでしょうか (笑)。でも、何気にゲームボーイよりも薄かったりするのがまた驚き。
まぁ、言葉の響きとか色々あったと思いますけど、ハンドヘルドですよね、コレって。良く考えてみるとゲームボーイが発売される4年も前にコレだけの大きさに集約したというのはある意味スゴイことなのかもしれないけど・・・いや、やっぱ当時も大きいって感じてたよ、絶対 (昔は自分自身も小さかったから余計にね (笑))


カートリッジのパッケージは結構凝ってる

本体に負けず劣らずデカイのが、ROM カートリッジ。ちなみに、パッケージ (外箱) のデザインは本体とカートリッジでシルバー×ブラックに統一されてて、並べて片づけるとなかなかカッコイイです。

で、このパッケージの大きさ自体は、それほど大きいと感じない (ある意味、後期GBのモノよりもコンパクト) のですが・・・


GBのカートリッジ (左)と比べてみました

中身を取り出してビックリ!なんじゃ、このブ厚さは (笑)。左に置いたGBのカートリッジに比べ、ゆうに3倍の厚みがあります。重量的に言ってもこの中に回路が密集してるとは思えません。おそらく、耐衝撃性を高めるに大きくしたのでしょう。カートリッジ自体の耐衝撃性があるのでパッケージもほとんど同じ大きさ、緩衝材を入れるGBのパッケージ (外箱) よりも小じんまりした印象なのはこういうカラクリがあったという訳ですな (いや、そんなに大そうな話じゃないですけど (笑))


カートリッジの挿込口はココ

無論、本体の厚みに合わせたというのもひとつの理由であるのは間違い無いでしょう。本体は切り欠き状になっていて、カートリッジを挿しても端は外に出ています。この部分は滑り止めが付いており、ここを引っ張ってカートリッジを抜くようになっています。当時の実装技術 (基板の大きさ、電池ボックスの配置、液晶板の厚みなど) を考えると、厚みを抑えるために良く考えられた構造だと思います。もっとも、この構造で厚みは少なくなっても、肝心の大きさ (平面上) が余計に大きくなってしまったのでは本末転倒な気もしますけどね (苦笑)


カートリッジの確認窓

このカートリッジ挿込口には見ての通り天窓が付いており、ココから何のカートリッジが挿入されているか一目で確認することが出来ます。しかも、エポックの開発者さん達のエライところは、カートリッジのラベルにソフト名だけでなく、操作に使うキーの説明を絵付きで記載しているところ。ココを見ればいちいち説明書を見なくても操作方法が確認出来るというスグレもの。もっとも、マージャン以外には、迷うほど複雑な操作を必要とするモノは無いのですが (笑)


お絵描きエディタの画面

ちなみに、カートリッジを使用しない時には、ゴミ避け用のダミーパックを入れておきます。この状態 (あるいは何も挿していない状態) で電源を入れると、後述するパズルゲームお絵描きエディタのいずれかが使える様になります。他のゲームがソフトが無ければタダの箱なのに比べると結構オトク。もっとも、そのぶん値段も高くなってるのでお買い得とは言えないですけどね (笑)
ちなみに、このお絵描きエディタはドットを打つ、消すことしか出来ません (液晶自体がモノクロですしねぇ)。カーソルを動かす方向によって音が変わるのは凝ってますが、ちとウルサイです (苦笑)


電源スイッチとサウンドスイッチ

そんな時には電源スイッチの下にあるサウンド切換スイッチをオフにすればOK!あっという間に何も聞こえなくなります。ボリュームではなく、切り替えスイッチというあたりに時代を感じます。当時、親や先生に隠れてゲームをするのに音を消す機能は必須でした (笑)。私の場合、ゲーム&ウォッチの圧電ブザーに細工して音を消すようにして遊んでたくらい (そういう意味じゃ、バンダイのゲームデジタルシリーズはデフォルトで音が消せて良かったなぁ)。もっとも、こんな大きなゲーム機だと音を消しててもすぐに遊んでるのがバレそうですけどね (笑)。ちなみに、スピーカーは圧電タイプっぽいです。多重和音が使える訳でもないし (使うようなゲームも無いし (ぉぃ))、別に良いんですけどね。逆にピコピコサウンドが懐かしい。


時代を先取り4ボタン仕様!!

さて、次に操作系について見ていきます。驚いたことに、START、SELECT の他に4つのボタンが使えます。すでに、GBアドバンス並の操作系を持っていたということです (20年近く前に!)。もっとも、実際に発売されたソフトの中に、この4つのボタンをフルに使っていたモノは麻雀だけ。他のソフトの中にはどれを押しても全部同じ機能というモノまでありました。うーん、将来に備えてあらかじめボタンをたくさん用意しておいたという見方もありますが、その割に後発のソフトがまったく続かなかったというのが悲しいです。ボタンの配置も絶妙にスクウェア配置になっててイマイチ。クロス配置ならコントロールパッドと合わせて、クレイジークライマーとか出来たかもしれないのに (無理)


コントロールパッド

そのコントロールパッドですが、見た目PCエンジンの丸パッドみたいなんですけれども、感覚的にはネオジオポケットのグリグリに似てます (無論、構造は違うので反応はダンチですけど)。手に持って親指で操作する分にはナカナカ良いカンジです。ただ、本体を持ったまま長時間遊ぶのはナカナカ根性が要りますね、このゲーム機の場合 (なんつっても、470gもあるんだから (笑))。机に置いて使う場合、親指だと腹を使うことになると思うんですが、窪みが付いてるのとツルツル滑るのでちょっと操作性が落ちる気がします。まぁ、慣れの問題かもしれませんが、もうちょっと表面加工に気を遣ってもらえると良かったのになぁ、と少々残念です。


延々と螺旋を描き続けます ハイスペック (笑)

ゲームポケコンの最大の特徴である液晶画面。それまでの電子ゲームがゲームごとに専用のマスクを起こして一つ一つ作っていたのに対し、汎用のドットマトリクスタイプを採用。これにより、ゲーム毎に全く違うグラフィックを映し出すことが可能になりました。もっとも、当時画期的だったとはいえ75x64ドットではひとつのキャラに使えるドット数には限りがあり細かな描写は難しいため (モノクロの2階調表示しか出来ないので表現力にも限界があったし)、専用マスクで起こされた液晶のゲーム画面に比べて華が無かったのは否めないところ (専用マスクだと活き活きとした表情も可能でしたからね)。私のように、純粋なポケコンでドットキャラを描いて動かしてたような人間以外にはウケは良くなかったようです (ある意味、カセットビジョンと変わらないもんなぁ)。
右は電源を入れた直後の状態 (カートリッジ未装着)。何もボタンを押さずにいると、BGMと共に延々と螺旋を描き続けます。液晶画面上方には『75x64 LCD』というメッセージがスクロール表示されます。うーん、よっぽどこの液晶画面を自慢したかったんですな (笑)


ACアダプタ端子とコントラスト調整ダイアル

本体に左側面に液晶のコントラスト調整ダイアルが付いています。元々、モノクロ仕様 (白か黒か) であり、画面サイズが大きい割にドット数が少ない=ドットとドットピッチが大きいので光量が少なくても明るく見えるため、初代ゲームボーイの液晶よりも見やすい気がします (GBより液晶のサイズが大きいのも一因か?)。まぁ、あくまで初代ゲームボーイと比較した場合に限ってのことですけどね。
ちなみに、この隣にあるのはACアダプタ端子です。本機唯一の端子ですが、ACアダプタを持っていないので、唯一使ったことの無い機構だったりもします (笑)


電池ボックス

電池ボックスは本体の裏側下方にあります。単3電池を4本使います。連続稼働時間は約30時間で、ほぼ初代ゲームボーイと同じです。これだけ長く使えれば外に持っていっても安心ですね?!環境問題や経済的なことを考えるとACアダプタの方が良いと思いますけどね (どうせ部屋で遊ぶことの方が多いんだろうし (笑))


12パズル

画像は本体に内蔵されているパネルゲームのモノです。game.com よろしく、何もカートリッジを挿入しないで電源を入れるとメニューが現れ、そこから選択して遊ぶことが出来ます。ま、遊ぶといってもねぇ・・・良くも悪しくも15パズル (12パズル?) 以外のナニモノでもない訳で、あまり面白いとは言えません (苦笑)。せめて、ピースが無味乾燥なアルファベットではなく自分の描いた絵とかがパズルになるというのであれば・・・まぁ、絵心の無い私にはどっちにしてもダメですけど (笑)。

なお、ゲームポケコン対応のソフトは、内蔵ソフトのパネルゲームお絵描きエディタを除いて、5本 (アストロボンバーブロックメイズマージャンリバーシ、倉庫番) がリリースされました。


目の付け所は非常に良いハードだったと思います。それは、後年のゲームボーイの成功が証明しています。では、なぜ本ゲームが成功し得なかったかというと、やはり時期が悪かったんでしょうね。長く続いたモノクロの時代からファミコンのきらびやかな世界に移ったばかりのユーザーには、今更モノクロに戻れるか!という気持ちが強かったと思います (ゲームボーイが出る頃になると、逆にそういったカラーが一般的になり、重厚長大よりも軽薄短小が望まれる時代になっていた)。ファミコンとそう値段が変わらなかったのも割高感を与えてしまったかもしれません。

ソフトの数が揃わなかったのもイタイですが (カセットビジョン並に出てれば・・・)、携帯ハードとして外に持っていこうと思わせるゲームが無かった=対戦や交換という概念が無かったのも残念なところ。ファミコンの登場によって、COM相手の1人遊びよりも人との対戦が面白いと誰もが気付き始めた時期でもありますからね。もっとも、後のゲームボーイの通信ケーブルという概念は故横井軍平氏の単なる思い付きで生まれたというシロモノであるからして、当時の人に同じ様な発想をしろというのは無理だったかもしれませんが。

ある意味、不幸なハードな訳ですが、イチバンの不幸はこうやって物好きな人間に購入されて好き勝手言われることかもしれません (笑)。ただ、現在の携帯ハードの流行の影にはこういったハードもあったんだということは是非知っておいて欲しいです。たとえ今後のゲーム史において表舞台に出ることのないハードであったとしても (笑)