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少年サッカー指導コラム

リフティング、本当に落としちゃいけないの?
落としてもいいんじゃないの?


 今回は少々熱く語りたいと思います。長文になりますことをご容赦ください。

 リフティングはサッカー選手にとって、ある意味ボール扱いの基本トレーニングの一つであるといえます。ですから、出来ることなら、サッカーをするすべての選手が、同じように取り組めたらいいのに、と思うことがあります。

 しかし、現実はそうはうまくいきません。ウォーミングアップにリフティングをやらせて見ましょう。「落とさないように」と言って・・・。初心者の子はボールがどこかに行ってしまい、ランニングによるウォーミングアップにはなりますが、ボール扱いとしてのウォーミングアップにはほとんどなりません。
 それどころか、「落とさないように」と言ったために、それがプレッシャーになって、ボールを手に抱えたまま、ずーっと周囲を見渡している初心者の子もいることでしょう。
 反骨心のある子はいいのです。「落とすもんか」と、何度もトライするようになりますが、初心者の選手・子どもたちがすべてそういう気持ちを持った子であるとは限らないはずです。コーチの言った一言に対して、ミスを恐れ、臆病になり、トレーニングそのものさえ、なかなかスタートできない子が必ずいるのです。

 では、そういう子にも、常に「落とさないように」という必要があるのでしょうか。

 果たして、リフティングの時に「落とさないように」と言うこと自体、正しいのでしょうか。 

 リフティングの狙いは、ボールコントロールの技術を高めること、足によるボールの感覚を磨くことにあると思います。その点からすれば、リフティングを「落とさないようにやる」ことは、必ずしもその狙いからすれば、本質を捉えているとは言い切れないように思うのです。それよりも、落としてもいいから、まずはたくさんボールに触ることこそが、ボール感覚を磨き、サッカーの技術を上達させるための本質を捉えていると言えるのではないでしょうか。

 そういう点からすれば、低学年・初心者にはまず、リフティングに向けて、段階を追って指導していく必要があると思われます。例えば、パントキックや、キック&キャッチのように、キックのポイントを捉えるトレーニングが必要でしょうし、バウンドボールキックで、まず1回落としたボールを蹴ってみることもボールの感覚(ボール自体の動きや、バウンドの大きさなどについての感覚)を研ぎ澄ますことが出来るでしょう。そして、ワンバウンドリフティング、つまり、落としては蹴る、の繰り返しでたくさんボールに触ることがリフティングへの大きなステップになるはずなのです・・・。

 このワンバウンドリフティング、実はもう一つ利点があるのです。

 そのことを説明する前に、まず、リフティングを、「よーい、はじめ!」で腿から始める選手が多いチームがあります。こういうチームは選手全体の技術レベルは決して高いとは言えないように思うのです。
 サッカーにおいて最も使う部位は足首より下の部位と言えます。ところがリフティングになるとその部位を使わずに腿ばかりでリフティングしてしまっているようでは、足先の技術は、リフティングを通じて上達することは少ないのではないでしょうか。そこで、このワンバウンドリフティングなのです。ワンバウンドリフティングは、腿を使って行うにはかなりの困難を伴います。そのため、どうしても足先を使わざるを得なくなります。これにより、足先でのボール感覚や、キックのポイントを感覚的に確保することが可能になるのだと言えます。どうでしょうか、これで皆さんのリフティングが改善され、技術的に向上が見られたら、と思うのですが、いかがでしょうか・・・?

 リフティング以外にも、様々なボールコントロールがあります。最近よく見かけるものでは、某スポーツメーカーが取り上げた、「フリースタイルフットボール」というものがあります。様々な足技や、ボールを上げる技術のレパートリーなどは、見ていてとても面白いものです。
 こうした技術ですが、「サッカーの試合には関係ないよ」と言う指導者はいませんか?実は最初からあきらめているのに、子どもたちまで、言い訳っぽく「試合には関係ないし」と言っていませんか?これ、明らかに指導者に問題ありです。子どもがチャレンジする気持ちを無理やり押し込めてしまうことになり、それが他のプレーでの「チャレンジする気持ち」を失わせることにつながりかねないからです。私が小野伸二のボール上げをいろいろ見せたところ、1ヶ月以内に、
5.6年生の何人もが私に「出来るようになったよ」と見せてくれました。子どもたちはチャレンジしていること、そしてそれを達成できたことを認めてもらいたいのです。それを指導者の「試合には関係ないし」という一言で、チャレンジすることすら生じさせずに片付けてしまうのは大変悲しいことだと思うのです。そこには技術的に大きな差が生じてしまうはずです。

 ちょっとした視点の切り替えで、技術が向上するのであれば、どうでしょう、「何回落としてもいいから、とにかく続けてリフティングしてみようかぁ!」と子どもたちに言ってみませんか?そこからリフティングの、特に足先の技術をスタートさせてみませんか?そしてそれぞれ個人個人の技量に合わせて回数を増やしていけば、上級生になる頃には4ケタ、5ケタリフティングする子が出てくるはずですよ。


コラム7月7日 リフティング、本当に落としちゃいけないの?落としてもいいんじゃないの?

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