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スイスの作曲家オトマール・シェック
スイスの作曲家と言えば、オトマール・シェックという今世紀初頭に活躍したロマンチックな作品を作った作曲家と、同じく今世紀初頭に活躍したフランク・マルタンが有名です。
今回は、シェックの番です。
シェックは、主にチューリッヒを中心とするドイツ語圏の作曲家で、ヘッセとも親交を結び、多くの歌曲を作ったことでも知られます。
で、へそ曲がりな私としましては、彼の歌のない音楽に好きな曲があるので、それをまず書きたいのです。
それはヴァイオリン協奏曲変ロ長調Op.21「幻想風」です。日本でも手に入ります。スイスclavesから出ていて、スイスのバイオリニスト、ベッティナ・ボラーがソロを受け持ち、スイス青少年交響楽団をデルフスという人が指揮したものです。
ハンガリーの女流バイオリニストに恋いをして、会いに行ったが、演奏旅行中で会えず、傷心のままチューリッヒに戻り、その恋いこがれる胸の内を曲にするという、なんともローマンチックな曲であります。
古典的な音の響きの範疇の作品ですので、万人受けするところが、専門家受けし難いのかも知れませんが、肥大化しないタイトな響きの中にヴァイオリンとオーケストラが協調し融合しあう音作りは、ヘッセのようにバッハ、モーツァルト好きの人の共感を得やすいものだったのかも知れません。ちなみにヘッセはR・シュトラウスなどは、嫌いだったそうで、ブラームスもあまり…だったそうです。
フルトヴェングラーがルガーノで手兵のベルリン・フィルと演奏会をした時、プログラムに得意のブラームスをわざわざ入れないプログラムを用意して乗り込んで、演奏会の当日、「ヘッセは来てるのか」と側近に尋ねたら、その日はヘッセは来ないと告げると、「それは残念、彼が来るだろうと思って、ブラームスは入れなかったのに」と言ったそうで、そのエピソードからも、ヘッセの音楽の好みはわかります。
さて話を戻して、そのハンガリーのバイオリニストは?
とうとう片思いで終わったようで、チューリッヒのトーンハレでコンサート・マスターのウィレム・ド・ベールのヴァイオリン、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏で初演されたそうです。
こういう話は、ハッピー・エンドでない方がいいのだろうな。
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