毎日新聞2000年12月16日朝刊
パートの皆様あきらめず申請を なくせ労災隠し 市民団体呼びかけ「直接労基署へ」
労災保険扱いすべき事項が健康保険で処理される「労災隠し」の問題で、パートやアルバイト、派遣労働者から「私に労災を適用されないのか」という相談が、労災認定を支援する市民団体に相次いでいる。答えは「適用される」。終身雇用制度が揺らぎパート労働者等は今後も増えるとみられるが、多くは労災保険について十分な知識を得る機会がない。市民団体が「このままでは不安定な立場で働く人たちが泣き寝入りする」と訴えている
「娘が昨年夏、大阪市内のガソリンスタンドでアルバイト中、すべって転倒し頭に重傷を負った。労災にならないのでしょうか」
今月初め、関西労働者安全センター(06・6943・1527)に男性から電話があった。娘さんはすでに働くようになったが、現在の薬を服用。会社に相談したが「労災は難しい」と言われたという。
アルバイトやパート、フリーターでも労災保険は正社員と区別なく適用され、治療費負担はゼロ。休業などに対しても同様に補償される。同センターの担当者は「今からでも労基署で労災申請を」と助言した。
派遣労働者と名乗る男性は、「通勤中に交通事故にあった。労災は無理でしょうね」とあきらめ気味に別の市民団体に相談してきた。派遣先の労働に関して業務災害や通勤災害を被った場合は、派遣元の労災保険が適用される。派遣元が労災申請に協力しなかったとしても、自分で直接、労基署に出向けばよい。
労働省によると、パートや派遣社員などの「非正社員」が雇用者全体に占める割合は、1994年の約23%から99年には約28%に拡大するなど、企業の雇用形態の多様化が進んでいる。
脇田滋・龍谷大教授(社会保障法)は「パートや派遣労働者らに労災保険の情報がまったく伝えられていない。制度の周知徹底や手続きの簡素化などに行政が取り組むべき。派遣元と派遣先が労災の連帯責任を申込みも必要だ」と指摘している。【大島秀利】
パートや派遣労働者らの労災補償 雇用形態 適用の労災保険 休業や障害補償 労災防止の責任 パート・アルバイト 勤務先事業主 正社員と同じ 勤務先事業主 派遣労働者 派遣元 同上 主に派遣先