生物を語るときよくある質問に、
熱力学の第2法則に反するのではないか?
というのがあります。
「全ての系は乱雑な方向に不可逆に進み、最後には熱的平衡状態になる」
というやつです。これに従えば、宇宙誕生・地球誕生からかなり時間が
たった現在、生物みたいな特定の物体が発生して、さらにいろいろに
特殊性を増しながら進化しつつあるのはどう考えてもおかしい。
地表にはなにかどんよりした一様な世界が広がっているはずだ、
というわけです。
確かに、引っかかる点ですが、法則に反してはいないと僕は思っています。 簡単に言うと、エネルギーが供給され続けているし、 今はまだ道程なかば、にすぎない。
「最後には一様に」というのがいつかと考えてみると、 数十億年後に太陽が光を失ってエネルギー供給が絶えるとか、 宇宙の物質が全て重い元素になって状態変化がなくなるとか いうことに行き着くんですが、もちろんそうなると生物もなにも なくなってしまう。生物が存在するのはつかのまで、 やがて法則どおり一様に至る。
今はまだ太陽を源とするエネルギーの流れがあって(つまり宇宙は 一様ではなく非平衡状態であって)、地球上の物質をかき回している。 物質は形を変えながら、ある時は生物の体を構成する一部となり、 また体から離れて一様に向かっていく。
その物質の流れのなかの「渦」のようなものとして生物は存在している。 大局的には一様に向かっているのだけど、細かく見ると周囲のエントロピー 増大を利用して、非一様に留まっている部分がある。
「生物は負のエントロピーを食べて生きている」といったのは シュレディンガーだったかな。
コーヒーにミルクを落とすと、初めは白い点で、やがては 茶色のカフェオレになる。でもその途中では白黒の渦巻模様が 様々に現れてなんとなく渦巻を保ちつつ、わかれたりつながったり しながら広がっていく。 その渦巻模様が生物・生命現象だと、考える訳です。
説明が難しいんですが、こんな感じです。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp