進化的恋愛論 (2) 恋愛のはじまり:そこに淘汰の波が襲いかかります。ざぶぅん。つまり、食えないものや 身を守れないものは死んだり殺されたりします。生き続けることはとても 難しいことですから、多くはばたばたと絶滅してゆきます。
> ◆恋愛の定義: 生殖の相手を複数の異性個体中から 能動的に選択すること
> こうして「好み」と「特徴」は進化の中に一本の道を刻み始めます。
絶滅と、好みとの関連を考えてみましょう。
例えば「より力が弱くてのろまな個体が好き」、という好みの生物が
いたとして、ある世代でペアができて子供ができたとしましょう。
子供は親の好みを反映して、親よりもより弱く、よりのろまとなるでしょう。
その子供らのペアから生まれる孫は、さらに弱いでしょう。
この循環が続けぱ、世代を重ねるごとにその種の生物はさらにさらに弱く なって行くことになります。そういう生物が生き残れるでしょうか? ノー。それらはあっという間に捕食者に捕えられ、戦う術もなく殺され、 絶滅するはずです。
逆に「より力強くて頭が良い個体が好き」、という好みの生物の場合は、 世代が進むごとにどんどん強く賢い子孫が現われます。こちらは獲物を つかまえ、身を守る能力に優れていますから、子孫は増え、繁栄して 行くでしょう。
このように、ある傾向が始まると、どんどんとその方向が加速し進んでゆく
様子は、「正のフィードバック」と良く似ています(と、「ブラインド・
ウォッチメイカー」の中でも説明されています)。
何かの偶然をきっかけとし、それを強める方向に反応が進み続ける。
斜面を転がり下りる雪ダルマのようなものです。
「強いものが好き」「弱いものが好き」という例はわかりやすいですが、
極端です。強い/弱いというのは複雑な環境での相対的な問題ですから、
単純な生物にとってそれを判断することは簡単ではありません。
ただし、それぞれの個体が持つ、いろいろなわかりやすい特徴の中にも、
「(生命力が)強いということと相関を持った特徴」
があるはずです。
例えば「より体が大きい」ことは、敵のダメージを受けにくく攻撃力が大きい、
という点で有利に働くはずですし、「より動きの素早い」ことは
餌をつかまえたり、敵から逃げたりするのに有利でしょう。
「角が長い」ことは体が大きいことと相関を持つだろうし、
「ケンカが強い」ことは力が強くすばしこく、戦術に長けていると
いうことでしょう。
「鳴き声が大きい」ことは体が大きく筋力が強いことと関係がありそうです。
また、因果関係が遠回りで間接的に作用していたり、 直接は因果関係がないけれども、DNA 上で近い位置に遺伝子があるから 相関がある(目印になる)、なんてこともあるかもしれません。
結果として、生きることに有利な特徴に関連することを、 たまたま好みの傾向として持つものは、世代ごとにその傾向を強め、 生き残り繁栄してゆくことが説明できます。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp