● 生命誕生の現場 / NHK


NHK, 1998/2/2,3,4 22:00-22:45
ETV特集「生命誕生の現場」

第1回 (2/2) は優生学の発祥と発展の歴史でした。

イギリスで、移民労働者が街にあふれるのを見て、 このままでは質の悪い人間が増えてしまう、と思ったある学者が、 頭の形を測る器具を持ってあらゆる階層の人の頭を測って回った。
データを集めて見ると、頭の大きさとか人相と、「人間の質」に 関係がありそうだ。
この辺から、学術的に「人間の質を科学的に測定できる」という 考えが固まり、ヨーロッパに優生学会が設立し、政治にも影響を 与えるようになっていった。

イギリスで優生学を始めたその学者は、フランシス・ゴールトン。
頭の形を測定する器具は「ヘッド・スパナ」。
1882 年「人間能力の研究」出版。優生学 eugenics 始まる。
1912 年、第1回 国際優生学会開催、世界に広まる。
戦争が拍車をかける。
ドイツのT4計画。それが発展して戦争時の大虐殺。

アメリカにも優生学は渡り、巨費を投じて研究所を建て、 膨大な数の家系データ集めが行われ、人間の善し悪しが 遺伝的に根拠がある、という思想が広まっていった。
アメリカでの指導者はチャールズ・ダベンポート。
家系図 75 万枚調査。
1920 年代アメリカ各州で断種法制定。

イギリスでの優生学指導者はジュリアン・ハクスレー。
断種法は制定されず。結婚相手を慎重に選ぶよう運動。

優生学に異義を唱えるもの、作家オルダス・ハクスレーによる 未来小説「すばらしい新世界」1932年。
全てがコントロールされた世界、人工ふ化研究所を描くが、 そこはユートピアではない。

しかし現実は「人工ふ化研究所」に近づいている。
1978 年、試験管ベビー「ルイーズ」誕生。不妊治療として広がる。
人工子宮の研究、日本でも。
ヒトゲノム研究プロジェクト。
クローン羊、遺伝子組み込み動物。
頭のない赤ん坊を遺伝子操作で人工的に作れる。

人類学者、フランシス・ハクスレーによる優生学への 批判と悲しみに満ちた語りで終。


第2回(2/3)は、出生前診断などの遺伝子診断の話題でした。
番組を観直しながら書いたメモ。

 第2回 検査社会の到来
 最新技術がもたらす重い課題

 ・日本の検査会社 血液、尿などの検体 伸びる市場、新しいビジネス
 ・遺伝子の解析 白血病、リンパ腫、胎児異常
 ・出生前診断 血清マーカーテスト、ダウン症を確率で表示
 ・ダウン症の団体からの抵抗
 ・可能な診断でも倫理的にやらないものも多い、普通の人でも
  遺伝子の障害はいくつかもっているもの
 ・生命の質をだれが判定するのか

 ・イギリスでの出生前診断の普及
 ・社会的予防システムの普及
 ・行政が診断費を負担
 ・出生前クリニック
 ・妊婦への血液検査、羊水検査、超音波検査
 ・遺伝カウンセラーの存在
 ・羊水検査の危険性
 ・検査の積極的紹介、受けるかどうかは妊婦自身が決める
 ・イギリスでは胎児異常の場合、臨月まで中絶が可能、法的に許される
 ・検査費用は公費で負担する、なぜなら障害者が生まれるよりも
  生まれない方がトータルでのコストが低いから

 ・イギリスでの出生障害の歴史
 ・二分脊椎症という障害 神経管不全、不治の病
 ・治療手術法の開発、死亡率の減少 ロバート・ザカリー教授
  どんな子供でも生かす努力をするべき
 ・アリソン・デイビスさん、手術で助かった女性
  大学を出て、社会学、障害カウンセラー
 ・手術で助かっても、重い障害は残る、死んでしまうものも多い
 ・小児科医 ジョン・ローバー教授
 ・統計的な追跡調査から、治療すべき子供と、そのままにするべき
  子供を分けるべきと主張
 ・議論の対立

 ・遺伝学者デビッド・ブロック
 ・妊娠の段階で、血液検査で二分脊椎症を診断する方法の発見
 ・妊婦の血液中のAFPという物質の量で判定、多ければ二分脊椎症
 ・1978年には出生前診断はスコットランド全域に広がる
 ・そして二分脊椎症児の中絶も増えた
 ・検査の普及によって、二分脊椎症児の出生数は年500人(1970)から
  2人(1996)に減少した
 ・検査で障害がわかっているのに産むことへの非難
 ・二分脊椎症の診断(AFP量)がダウン症にも応用可能、AFPが少なければ
  ダウン症に

 ・WHOのガイドライン「予防は優生学ではない」「夫婦の自発的意志決定」
  「障害者は社会の負担である」
 ・経済で割り切ることについて、ナチスの優生思想との共通性
 ・ナチスのT4計画、精神障害者7万人の殺害計画、「消毒」
  経済効果の試算

 ・日本での診断技術の開発
 ・金沢医科大 産婦人科 高林助教授
 ・100%診断可能な遺伝子技術、妊婦の血液に含まれる、胎児の赤血球を
  分離、遺伝子を抽出して診断
 ・10種類の遺伝病の診断実験に成功
 ・実用の際に何が起こるかの議論はまだこれから
 ・出生前検査の世界的競争
 ・厚生省による一般人の意識検査実施
 ・大事なことは「確実な情報を与えること」「話し合いを持つこと」
  中絶を強制しない、選択させる
 ・日本では1万円で出生前診断が可能
 ・妊婦に判断させることで、社会が責任を逃れるという面も

 ・ロンドン、出生前診断による中絶相談センター SATFA
 ・専属のスタッフ、24時間対応
 ・相談センターまで含めて出生前診断のシステムができあがった
 ・出産においての大きなジレンマに直面する妊婦


第3回(2/4)は、胎児組織などを用いた、人体組織移植についての 話題でした。

とても良く取材された、考えさせられる番組だったと思います。


1998/03/01 T.Minewaki
1998/07/07 last modified T.Minewaki

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