◆ ゾウの時間 ネズミの時間 / 本川達雄 / 中公新書 1993年からずっとノンフィクション部門のベストセラーとなっている本です。 今頃読んでいますが。 サイズと時間の話は本の半分以上を割いていろんな観点から述べられています。 結局のところ、「どんな動物にとっても、自分より大きな動物はのそのそと 動いて見えるし、自分より小さな動物はチョコマカとすばしっこく動いて 見える。」ということです。(この程度でも数式は苦手だ。) それよりも、その後に語られる、 「昆虫−小サイズの達人」 「動かない動物たち」 サンゴ、木 「キョク皮動物−ちょっとだけ動く動物」 ウニ、ヒトデ、ナマコ の章が面白かった。 どの動物もそれぞれに優れたやり方で生きているんですね。ヒトデやウニの なんとうまくできていることか。コストがかからず、優れたやり方を見つけて 繁栄した昆虫や植物やナマコたち。 人間は自分が一番偉い、賢い、強いと思っているようだが、生物種として 最も数が多いわけでもないし、最も大きいわけでもない。自分の都合の良い 基準を作って、その穴の中で俺は偉いぜ、と叫んでいるだけだ。 人間が、複雑で高性能な「脳」を発達させたのは、それがないとうまく 生きられないという必要からであって、多くのコストをかけてその器官を維持 しなくてはならない。 その点、何も「考え」なくともこれだけうまく生きていける昆虫や植物の方が 実はずっと偉いのではないか、という気がします。だいたい、「価値観」を 持つのはおそらく人間だけだろうから、優劣比較すること自体おかしい。 進化の果ての現在で、生きている生物はみな同等にすごい。 ____ あとがき より | ……(中略)…… | このショックを機に、動物の世界観について考えるようになった。おのおのの | 動物は、それぞれに違った世界観、価値観、論理をもっているはずだ。たとえその | 動物の脳味噌の中にそんな世界観がなくても、動物の生活のしかたや体のつくりの | 中に、世界観がしみついているに違いない。それを解読し、ああ、この動物はこう | いう生活に適応するためにこんな体のつくりをもち、こんな行動をするのだなと、 | その動物の世界観を読みとってやり、人間に納得のいくように説明する、それが | 動物学者の仕事だと思うようになった。そう思い定めてやったのが、終章で紹介 | したキョク皮動物のデザインの仕事である。 | ……(後略)…… (ゾウの時間 ネズミの時間 / 本川達雄 より) * 生物学者って面白そうだなぁ。 \ / \ / - ☆ - みねわき - ☆ - / \ MINEW / \
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp