- 山行も三日目になった。851m二股のテントを撤収し、七ツ沼から下ってきた新冠川と別れ入ノ沢を登りはじめた。間もなく函になった。写真を撮ろうとしたら前日転んだときに濡らしたせいか、カメラが故障していた。函は股下まで水に浸かると中を通過できた。次の釜を持った小さな滝は右岸をへつって通過した。
- 970mの上二股は川床の高い右股へ入った。後から来た早足の単独行に抜かれた。1050mの二股を左に入るとすぐ10mの滝が有った。右岸の巻道を途中まで登り、濃い踏み跡につられて沢の上に出た所でO氏が川床まで2m滑落した。幸いかすり傷で済んだ。私の方はO氏に足場を見てもらったので無事川床に下りる事ができた。ナメを繰り返し登り、1370mの最終水場で水をくんだ。以後は涸れ沢の登りになった。
- 太い沢を選んで登っていくと1540mでスラブ状の所に突き当たった。霧が出てきて雨が降り始めたのでレインウェアを着た。鈴は服につける所がなくなったので、カラビナを使ってストックの輪に付けた。登山靴に履き替えた。いったん1430mまで下り、他に顕著な沢がないことを確認した後、再度登って1520mから踏み跡の有る沢に入ってみた。下りになりやがて元の沢に戻ってしまった。やむなく1540mスラブまで登り返した。2時間もロスしていた。わずかに霧が晴れ、右手にカールが有る雰囲気がした。意を決して右手に薮を漕いで進んだ。15分も薮漕ぎすると灌木帯の高みから前方に茶色い草原が見えた。草原の丘を越えるとカールが有った。
- 霧で視界は70-80mだった。磁石で方角を合わせカールを登った。いったん灌木の薮になった。再び草原になった所には10-20回分と思われる熊の糞が有った。鈴を勢い良く鳴らし大声を上げた。すぐ上の平らな所にたき火跡が有り、近くには雪渓が有った。最後は腕で潅木を引っ張りながら急斜面を登り稜線に着いた。
- 稜線もところどころにハイマツや潅木の薮が有り、北峰までは苦労した。北峰を過ぎ、ようやく着いたエサオマントッタベツ岳は霧雨で風が強かった。後2時間かかることを予想しナイターを覚悟した。札内岳分岐までの間で手が冷たくなり手袋を付けた。札内岳分岐の先でカールへの下り口に着いた時はほっとした。
- 暗くなる直前にカールに着いた。水が流れていた。懐中電灯を使いながら設営した。テントは2張りだった。
- 最終日。テント内は7℃だった。朝焼けに染まるカールを後にエサオマントッタベツ川を下山した。ナメ滝は左岸の巻道を慎重に通った。997mの二股では早足の単独行がテントの撤収準備をしていた。ところどころの巻道にはピンクのテープが取り付けられいた。途中で早足の単独行が素晴らしいスピードで抜いていった。
- 今回の4つの沢中、この沢が一番やさしかった。飛行機の時間に余裕を持って車の所に着く事ができた。