![]() |
![]() |
※無断転載を一切禁じます サッカー キリンチャレンジカップ2002
日本代表は前半24分、この日、トルシエ監督下の代表で初めて起用された市川大祐(清水)がサイドをせり上がってコーナーキックを獲得。そこから代表初出場の三都主アレサンドロ(清水)がショートコーナーから中央にボールを入れると、混戦から最後には戸田和幸(清水)が代表初ゴールとなる「初もの尽くし」の先制点を奪った。 中盤に高さのあるウクライナに対して、日本は高い位置からの積極的な守備で中盤でのボールを優位に支配。柳沢 敦(鹿島)、西澤明訓(C大阪)、森島寛晃(C大阪)らによるはやい攻撃から再三、相手ゴール前を脅かすが追加点には至らなかった。逆にピンチの場面は、昨年のフランス戦でミスから大量失点の一因を作ってしまった楢崎正剛(名古屋)が、ウクライナのシュートにファインセーブを連続し、流れを終始キープする。 前半は1−0のまま終了し、後半、脚の負傷の心配もあった三都主と、中村俊輔(横浜FM)を交代、西澤と鈴木隆行(鹿島)を替えて、1点をしっかり守る体制を整えた。また、代表初出場となる小笠原満男(鹿島)も森島と交代で入り、中盤での持ち味を発揮した。後半に追加点を奪うことはできなかったが、今年最初のゲーム、しかもディフェンス面を引っ張ってきた森岡隆三(清水)、服部年宏(磐田)、伊東輝悦(清水)らを欠いた不安を、新加入した選手の勢いで押し切り、まずは本番へ向け2002年白星スタートを切ることになった。トルシエ監督就任以来、日本代表はホーム戦これで20戦10勝2敗8分けとなる。
トルシエ監督「みなさまもご存じの通り、本日の私の誕生日は、日本が私に大きなプレゼントを用意してくださったということです。それは本当にうれしいことで、人生において重要な誕生日になることは間違いない。今日の試合は勝利することが重要だった。勝利することによって、勢い、自信をキープできる。周りの人々の信頼もそれによって保つことができる。ウクライナは若い選手を起用していこうという勢いのあるチームで、フィジカル面、リズム感の意味でも非常に難しい試合だった。今日は日頃、試合に出ていない選手がそれぞれ仕事をしてくれたことによって、日本代表の構成要員が幅広くなった。故障者、欧州組がいないことでチャンスがめぐってきたことを、非常に積極的に生かしてくれた。小笠原については大変満足した。しかし驚きはない。彼はいつでも自己表現をもっとすればいいのにということだけだった。彼のなかに染みついているそういった考えがあるからで、彼の才能はもう十分わかっていた。小笠原だけでなく、チーム全体に多くの選手が入り得ることを証明できた試合だが、しかし誰にも特権があるわけではないし、ワールドカップに向かって何が決まったというのではない」 ウクライナ/レオニド・ブリャク監督「親善試合の一方で真剣な試合だった。私たちは秋に向けて準備をしていこうと思っている。日本には、招いてもらい試合をすることができて、日本に近づいて勉強することができたと思う。私の口から日本のみなさんに、ぜひワールドカップでがんばってほしいとお伝えしたいと思う。ウクライナはみな、応援しています」
代表初出場の三都主アレサンドロ(清水)「自分だけの問題ではなく、チーム全体としてどんどん試合や練習をやっていけば、もっともっとよくなると思う。自分がアピールできればもちろんいいのかもしれませんが、自分のことを忘れてライバルのことを考えてもダメかなと思っている。誰も、全員が、ワールドカップに行きたいという気持ちをでいるのだから、自分にいいところがあればそこをもっと磨きたいし、今日ダメだったところは明日直したいと思う。この合宿から先発で出たいとずっと思っていた。監督には今朝、『準備しているか』と聞かれたので、『しています』と答えた。足のほうは大丈夫です。踏まれただけですから」 代表初ゴールの戸田和幸(清水)「素直にうれしい。得点よりも、それが勝ちにつながったことがうれしい。しっかりと守って速く攻めると試合前には言っていましたが、そうじゃない場面もあった。100点の出来かと言われれば、そうではないし、もっと中盤を落ち着かせなければいけない。昨年のイタリア戦以来、代表にとって久しぶりのゲームだったから、すべてがうまくいくとは思っていないし、難しい面もある。自分が求めるプレーに近づけたことはうれしかった。
代表初出場の小笠原満男(鹿島)「(自分をアピールできたかと聞かれ)べつに変な気持ちでやる必要はないでしょう。いつも通り試合に入りました。ホームだしお客さんも多いし、気分よくプレーができた。監督からは、チャンスがあれば前に行きなさいと言われていた。(トルシエ監督が自己表現が下手だと言っていましたが、と聞かれ)僕は自分が変わったとは思えないし、いい選手なら呼ばれるんでしょう。自己表現がどういうものをかっていうのがよくわからないです。僕はプレーが一番大事だと思うんです。ポジション争いについては、僕らはチームとして戦っているので、(周りを)ライバルだとは思っていません。チームの1つのオプションになれればそれでいいと思う」 森島寛晃(C大阪)「両方のチームで長いボールが多く、追いかけてばかりいる感じだった。でもそんなにはよくない状況の中でフィニッシュまで持っていけたことはよかったと思う。中盤からプレスをかけて行ったのはいいのですが、向こうが蹴ってくるので、同じリズムで同じように合わせて動いてしまったことが反省点ですね」 柳沢 敦(鹿島)「(後半の決定的な場面は)もちろん入れるつもりで蹴ったんですよ。(先制点は)戸田さんはもらったと思ったのではないでしょうか。自分が振り向いて打てる場面ではなかったし、あの判断でよかったと思う。課題はいろいろありますが、それなりに満足のできる初戦でした」
「もしもシェフチェンコがいたならば」
報道陣から、守備の危なっかしさを指摘された木之本興三強化推進副本部長は「確かに」と唇をかんだ。「おっしゃるように守備は弱かった。もし本大会ならミスで1点となるシーンもあった。それをどうカバーしていくか、これをポーランドで修正してきてほしい」と注文をつけた。 宮本、中田、松田の3人のディフェンダーはこの日、プレーが雑だった。能力ではなくて、単に雑だった。コーナー付近で抜かれているのに、背中を向けて相手を追う、ポジショニングのミスから相手を後ろから倒したプレー、つまらない反則でのイエローと、激しさの結果ではない。この日もっとも大きな課題は、つまりこれが本大会だったら、と想定したならば、守備の選手(宮本、中田)が「2枚の」イエローをもらったことにある。 「修正すべき点は明らかであるし、それには時間もかからない。心配はない」と監督は説明をした。 シェフチェンコがいて、しっかりと調整して、それでもこのチームがW杯に出られなかったのだと、ウクライナを見ながら考えてしまった。 ※この試合のコラムはsportsnavi.comに掲載される予定です。
|