1月1日

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サッカー
第81回 天皇杯 全日本サッカー選手権大会 決勝
清水エスパルス×セレッソ大阪

(国立霞ヶ丘競技場)
キックオフ:13時31分、観衆:46,728人
天候:晴れ、気温:13.6度、湿度:20%

清水 C大阪
3 前半 1 前半 0 2
後半 1 後半 2
延長前半 1 延長前半 0
20分:三都主アレサンドロ
68分:森岡隆三
97分:バロン
森島寛晃:79分
尹 晶煥:89分

交代出場
清水

64分:横山貴之(久保山由清)
C大阪
59分:大久保嘉人(杉本倫治)
59分:真中靖夫(大柴健二)
70分:濱田 武(岡山一成)
 今年3度目の決勝進出で悲願の初制覇にかける清水は、前半立ち上がりからC大阪の猛攻に揺さぶられ、15分過ぎまでシュートチャンスを作ることさえできなかった。逆にC大阪の森島寛晃を中心とするゴール前での早い展開に振られ、15分までに3回も決定的なピンチを迎える。しかしC大阪の決定力の甘さに助けられ、前半中盤過ぎからは少しずつペースを取り戻し、帰化後代表入りを目指している三都主アレサンドロの突破にも精彩が見られるようになった。20分には、センターサークル付近から吉田康弘が出したロングボールを澤登正朗が頭でゴール前の三都主へ。これを一端右足で切り返し、前に出てきていたGK下川誠吾の頭上を越える緩いループシュート。これが決まって、いい時間帯に先制点をものにした。
 そのまま前半は1点リードで折り返し、後半23分には、C大阪のファールからもらい、フリーキックを澤登が正確にゴール前のDF森岡隆三へ流す。森岡はヘディングでこれを決めて2−0となり、試合を決めたかに見えた。
 しかし後半34分、そこまで決定的なものも含めて5本のシュートを外していた森島に決められ1点差とされる。さらに、ゴール前のボール処理からGK黒河貴矢がファールを犯しPKを与え、森島とともにC大阪の攻撃をリードする尹 晶煥が右足で決め、ロスタイムに同点となる劇的な試合となった。
 延長は15分ハーフのVゴールとなったが、延長前半7分、センター付近左サイドでボールを奪った三都主が、そのままスピードでボールを持ち込んで横山貴之とワンツー。このボールを左サイドから三都主が中央のバロンに折り返して、バロンは一度ポストに当てたもののこれを押し込んでVゴール、清水が苦戦の末、C大阪を3−2で振り切った。
 清水はこれまで決勝に2度進出しながら昨年は鹿島に敗れるなどしたが、3度目の正直が実った形となった。なお今年から賞金総額が高くなり、1億円となった。

Jリーグ・川淵三郎チェアマン「正月を飾るに、また2002年を飾るにふさわしい気持ちのいいゲームだった。最後は運、不運もあると思う。大体正月の決勝なんて、(勝ちにこだわるために)退屈な試合になりがちなものだ。それと、表彰(両チームがメインスタンドに上がって表彰を受ける形)も負けたほうは本当に感じ(表情や態度)が悪い。しかし、きょうのC大阪は本当にさわやかな表情ですばらしい態度だった。グッドルーザーだったと、感謝したい」


「おいしい!」


ゴールを決めた三都主(左)と祝福するバロン
 シャワーを浴びてミックスゾーンに出てきた三都主は、2002年最初のゲームで、初めての得点を上げた感想を聞かれると、「おいしいです!」と声を弾ませた。
 日本語も流暢、帰化して、W杯代表にかける意気込みを存分に示したこの試合、彼から最初に発せられたコメントが「うれしい」ではなくて「おいしいです」というのがどこかユーモラスだった。日本語の使い方が間違っているのではなくて、この試合を表現する極めて正しい表現が「おいしい」だったのかもしれない。
「最初10分くらいはスペースがあったのになかなかパスが来なかったので何とかしようと思った。あのシュート(1点目)は、狙い通りに蹴るタイミングを外してGKを外した。みんな、ミスキックだよ、って言うんですけど」
 笑いながら話す後ろを、背中をくすぐったり、頭をたたいたりしながらチームメートが通過して行く。Vゴールもお膳立てし(バロンが一度ポストに当たって跳ね返ったボールをまさに「おいしく」決めた)、1得点1アシストの最高の形で2002年をスタートさせた。
 体調は依然疲れが残り、万全ではないという。しかし、立ち上がり、明らかに意図しながらペースを抑えていた。清水全体として、これは澤登、大榎といったベテランの意図でもあったが、「抑えて」入って行ったのだ。もたついているようにも見えたが、「全力で」入っていったC大阪に対して正反対のアプローチだった。
 最終的には詰めの甘さから同点に追いつかれる格好になったが、試合を分けたのは序盤10分だった。

「あそこがすべてです。休養? いえ反省にあてます」
 C大阪の森島は、試合後、苦笑いをした。15分までに作ったチャンスは4回、うち3回は決定的なチャンスだった。
「なぜかわからないんですが、あれほど足にボールがくっつかないこともなかったですね。何ででしょうか。どうにもこうにもまあ足につかない、ボールが離れていく」
 そういう経験はサッカー選手なら誰でもあるのだろうか。森島が「どうにもこうにも」と嘆いた技術的な問題は、やはり「行くぞ」というはやる気持ちにあった。三都主の言葉を借りれば「おいしくない」試合をしたのがC大阪だ。
 西村監督に交代してからはここまで負け知らずで、J2降格という事態からも這い上がって来た。来年は厳しい1年になる。しかし、ここまで這い上がったことを思えば、J2の一年から這い上がれないわけがないだろう。
「0−2から盛り返したことは、自分たちにとって何よりのプラスになったし、いい財産になりました」
 森島はそう言った。
 逆境を試合で跳ね返すことがひとつの財産なら、この日の観衆は4万6000人。C大阪が一年間見ることのできない観衆と、その声援の暖かさは、J2を戦う来年へのこれ以上ない「財産」ではなかったか。
 好天気に恵まれ、風もなく、退場者もいない。警告数は7枚だったが、選手同士のダーティーなプレーは、両者の一年間のリーグでの戦いを示す(ともに反則金は下位)ように少なかった。しかも5得点、シュート合計で38本、見る者にとっても久々に「とても美味しい」試合であった。

試合データ
清水   C大阪
17 シュート 21
13 GK 14
6 CK 6
21 直接FK 15
2 間接FK 7
0 PK 1



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