「冬のマットづくり」

生駒山


1.はじめに

 幼虫の飼育にはマットが不可欠です。訳が分からない頃は、とりあえずマルカン製のジャンボクヌギマットを使用しました。ところが、いきなりサキシマヒラタの幼虫が死んでしまったのです。ショックでした。理由をいろいろ考えてみたのですが一番の原因は、マットの中身にあったと思います。
 未発酵のマットの一番の問題は、瓶につめたあと発酵するということでしょう。発酵の途中で熱が発生し酸欠状態になります。おそらく酸欠が原因で死亡したものと思われます。そうでなくても未発酵ですとカビがはえやすく、腐りやすいという欠点もあります。こうなると発酵マットを作るのが幼虫にとっても飼育管理上も良い結果をもたらすということになります。どうせ冬は成虫は冬眠し、ひまになります。発酵マットづくりに挑戦しました。

2.市販のマットは値段が高い

 私は専門店のパンフレットを取り寄せてあれこれ吟味するのが好きです。あちこちのパンフレットを眺めながら思ったのですがとにかく値段が高い。2リットルで2,000円というマットもあります。なになに「樹皮を手作業で丁寧に剥きました」なんだ、これは。こんなことをしておれば当然高くなります。「平常価格10,000円を今なら3,000円」最初から3,000円にせい。たまりません。
 次に分からないのが添加剤の値段です。「中身は秘密です」中身が分からず5,000円も払わされる人間の気持ちにもなってください。薬を買えば説明書に中身の内容が記載されています。添加剤にも書いとけ。 
こうなると自分で安く作ってみたくなるのが道理というものです。がんばるぞ。

3.用意するもの

 @マルカン製のジャンボマットかミタニ製のクヌギ大王4袋
 A園芸用のふるい
 B15リットル程度のプラスチック製の容器
 C薄力粉
 D味の素
 E水
 F電気毛布
 Gミキサー

4.マットをこして微粒子マットにしよう

 買ってくるマットは安いマットです。私は、奈良に住んでおりホームセンターはマルカンの製品ならいつでも手に入ります。現に、この原稿を書いている12月末でも地域のあるホームセンターにはジャンボマットは置いてあります。ミタニのクヌギ大王はクヌギ100%だそうですので、手に入る地域の人ならそちらの製品が良いかもしれません。私はジャンボマットを愛用しております。

 さて、ジャンボマット4袋を用意しましょう。園芸用のふるいは金網が三種類ぐらいついております。粗め、中粗め、細目です。まず、中粗めの金網をセットしジャンボマットをほうりこんでこしましょう。せっせせっせとこしましょう。
 こうして金網に残ったマットは、ウッドチップみたいな木の破片です。こいつを捨てるともったいない。どうするのか。ミキサーにかけましょう。
 かけて粉砕されたマットはまたふるいにかけましょう。こす作業の一回目が終了したら金網を細目に替え、こしたマットをほうりこんでまたまたこしましょう。こす作業の2回目はつかれます。なんせ金網が細目ですから。なんだかんだとやっているとあっという間に半日が経過しています。なんという楽しい作業なのでしょう。かわいい幼虫がおいしいおいしい餌を待っているのです。力が入ろうというものです。

 マットを微粒子にする理由はいろいろあげられていますが、発酵という観点からみれば冬の温度の低い時期にはなるべくマットを細かく均一にしておくほうが発酵しやすいというあたりにおちつきます。なお、2回目の作業で残った中粗めのマットは捨てずに再度ミキサーにかけるか成虫の埋込用に使いましょう。私は、園芸用の牛糞堆肥と混ぜてカブトムシのマットとして使用しています。

5.添加剤をぶちこみまぜましょう

 ふるいでこしミキサーにかけてできあがった微粒子マットは、ジャンボマット4袋あたりで約12リットル程度作成できます。これを蓋付きの容器にほうりこみます。衣装ケースあたりが容器として安く売っています。

 次に微粒子マットに添加剤をほうりこみます。添加剤として使用する素材の定番は薄力粉です。薄力粉が添加剤として必ず利用されるのは栄養学的に幼虫にとって有用だからです。と先人は皆さんおっしゃいますが深く考えない私はみんながいうなら良いのだろうという単純な理由でほうりこみます。割合は、微粒子マットに対し10%です。
私の場合は日清製粉の薄力粉一袋ほうりこみます。
 薄力粉の他にほうりこむ添加剤としては味の素があります。グルタミン酸です。これも栄養学的には有用だそうです。単純な私はこいつもほうりこみます。割合は適当です。人間がだしをとるときこれぐらいほうりこめばおいしいかなという感覚でほうりこみます。
以上、薄力粉と味の素は定番ですがそれ以外の添加剤ははっきりいってお好みのようです。私はプロテインをプラスしていますが、ロイヤルゼリーやキトサンとか先人はいろいろと工夫されておられます。
 さて、マットに添加剤を加えてまんべんなくこねましょう。特に薄力粉の玉ができないように丁寧にまぜましょう。

6.水を加えよう

 添加剤を加えたらいよいよ加水です。水を加えていくのです。問題は水の量です。これが難しい。少しづつ加えて混ぜていきます。乾燥している部分がなくなるように丁寧に加水していきます。先人は、にぎってマットのかたちが崩れない程度に加水しなさいと教えていらっしゃいます。ぐっとにぎって水がぽとっと落ちる程度ですか。ぽとぽとと落ちてはだめです。落ちるかな落ちないかなと行った程度の湿度でしょうか。最初は少な目でいき発酵途中で加水するという方法もあります。とにかくべとべとはだめです。

7.加温しよう

 夏場ですと、6までの作業が終わったマットが入った容器に蓋をして室外に出しておくと発酵していきます。ところが冬ですと温度か低くそのままでは発酵しません。要するに温度を上げてやらなければなりません。どうするか。私は、電気毛布で容器を包み温度を上げてやっています。容器の温度が上がるとマットの温度もどんどんと上昇します。発酵のはじまりです。マットが発酵すると強烈なにおいがします。そのにおいは、私に言わすと奈良漬けのにおいとそっくりです。このにおいが2週間程度続きます。この間毎日1回容器の蓋を開けてスプーンでマットをまぜます。まぜないと腐る恐れがあるからです。
 2週間程度経過するとマットのにおいが奈良漬けから土のようなにおいに変化し、最後はインキのようなにおいになります。マットの色も最初は白かったのが、茶色にかわり最後は黒っぽい茶色になります。ここまでくると発酵マットの完成です。作成開始から約3週間ぐらいです。

8.結び

 自家製発酵マットの作成は実際の手間を考えれば高いものにつきます。要は、アマチュアのクワガタ愛好家があれやこれや楽しみながら作成するあたりに意義があるのでしょう。手間をかけるのがめんどくさい方にはk-sugano式の簡易発酵方法もありますので参考にされるとよいでしょう。この一文はあくまでも私の経験談にすぎません。


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