三井のロンドン絵日記(9)

閑話休題(そればっかし)


 『掲示板(BBS)』情報から


 我が勤務先の誇った(非公式サイト)の別の掲示板は、「藤岡=よしりん」受け売りの排外ご都合主義政治プロパガンダの場になっちゃったので、「まともな」世界の情報をいくつか。





フットボールをマスコミ界の一企業が左右?
 いま、英国の社会を席巻している大問題は、北アイルランド問題でも、EMUと欧州共通通貨発行問題でもなく、「マンチェスターユナイテッド、マードックに買収さる!」です。

 英国フットボール界でもしにせであり、また特別の存在とされるMU、それが「世界のメディア王」とも「労働党ブレア政権誕生の黒幕」ともされる、オーストラリア出身・「ニュースインターナショナルグループ」を率いるルパート・マードックのBSkyB衛星放送局(日本でも始まった、デジタル多チャンネル放送)に、のべ£6億2千5百万で買収されようとしているという一件です。

 これは、「マンチェスターの場所だって知っているかどうか怪しい、外国の怪しげな事業家に、英国の魂を売れるか」という素朴な反発とともに、そもそも「各地域のフットボールクラブ」を基盤として成り立ってきた、英国伝統の国技のその存在を揺るがすことになりそう、という問題が絡んでいるからです。

 私も、そうした「地域のクラブ」がとうの昔に、公開株式会社(plc.)になっているとは知りませんでした。 まあ、そうでなければ、外国の一流選手を破格のギャラで呼んでくることなど、入場料収入やスポンサー広告料や(フットボールチームの大半の公式スポンサーは、シャープ、ビクターなど日本企業)地域フアンの寄付だけでは、とうていできないでしょう。それでも、一応、それぞれのオーナーやスポンサーの都合があっても、それとは別に、「リーグ」として動いてきたわけですし、TV放映権もフットボール協会が握ってきたわけです(MUはトップレベルの「プレミアリーグ」所属))。

 ところが、マードックは、明らかにMUの経営を握って、その試合の放送をBSkyBの「目玉」にしようともくろんでいるわけです。衛星放送って、日本でもそうであるように、なかなか加入者を獲得できませんので。現状では、スポンサーなどの意向で、個々のクラブチームが勝手に放送局と交渉したり、放映権を売ってしまうことは、協会が認めていませんが、最大人気チーム(そのキャラクター商品の売り上げだけでも莫大といわれる)のオーナーがマードックとなれば、その意向を協会も無視できなくなりましょうし、強引なマードックなら、独断で放映権を握ったり、それを協会が認めなければ、脱退して別のリーグを結成するくらいやりかねません(実際、これとは別に、「ヨーロッパスーパーリーグ」結成の動きが浮上している)。

 それですから、MUの地元フアンはもちろん、全国的に、国論あげて、「買収反対!」「政府は介入を」「反独占委員会にかけろ」といった騒ぎになっているのです。これには、「ニュースインターナショナル」グループの目玉、The Sunや The Timesも、幾分静観せざるを得ません。


 ただ、お気づきでしょう。どこかの国のやはり「国技」の「のきゅう」とかいうプロスポーツでは、最大部数を誇る「よみすて新聞」とかのオーナーまさりき一族が、最大人気チームを握り、その試合の放映権などを半ば独占し、それでもって、新聞やTVの拡販に最大限活用してきたということを。そして、他の「チーム」はあまりにゼニがなくて、まさりき一統の「王国」をひきついだ、現オーナー・なべつねとかいう怪人物の意向にいつも従わざるを得ないということを。

 もっともこのなべつね氏には、世界最大のスポーツ・フットボールも、あんまり自国内での拡販に役立たず、その協会もうるさい理念ばかり振り回すので、いやになって手を引きかけており、おかげでそのチームは最下位を低迷しているとか。

 いや、それどころか「のきゅう」のTV中継放送も、「よみすて新聞」の意向で、そこの「チーム」ばかり中心に組まれ、シーズン終盤ともなれば、下位低迷のその「チーム」のどーでもいい試合ばかり放送され、肝心の白熱の「首位争い」なんか、地元ローカル放送以外、誰も見られないんだそうです。「フットボール」ばかりか「のきゅう」もこれでおしまいでしょう。



牧師の強欲と「信仰の復活」
 第二の三面記事的話題は、英国国教会の牧師の一人が、自分の教会での結婚式や葬式に、「オーバーチャージ」をして、法外な収入を懐に入れていたかどで起訴され、裁判で懲役9ヶ月の判決を受けた、というニュースです。



 42年間、まじめな牧師で通っていた人物が、「窃盗犯」と同じ扱いを受けるに至った犯罪とは、「本来£40=約7000円の結婚式に対し、£320=約80000円を徴収した」とか、「本来無料で行うべき、死産児の葬儀から金を取った」といったものです。結婚・離婚・再婚で二度も違法料金を取られた女性もいるそうです。実に悪質、暴利じゃありませんか。

 え、どこかの国の某宗教では、葬儀からウン十万円も取るのが「常識」ですって?もちろん、それは寺院の改修維持やら、社会への貢献やらに当てられているのでしょうから、この国教会牧師のように、懐へ入れて、そのゼニで海外でのホリデイを楽しんだり、老後の生活の場としてのマンションを買ったりなんて、そんな想像を絶するようなことは罰せられて当然と、誰もが思うでしょう。


 英国国教会に限らず、英国では「教会に来る」信徒の数が減る一方、まさに「結婚式と葬式だけ」の場になりかねない(あと、「洗礼」というのもあるけれど)との危惧から、各宗派大同団結して、「教会に行こう!」の一大キャンペーンを開始したそうです。 そのスローガンは、「人はみな、生まれ、生き、死んでいく(born, live and die)」という言葉。これを各地のビルボードに掲げたり、新聞雑誌やTV広告で流すのだそうです。


 え、「教会へ行く」って?そうです、「まじめなキリスト教徒」は、日曜日には必ず教会へ行って、定例ミサに参加しなくちゃならないんですよ。えらく不便で厄介なものですね、キリスト教って。

 よかったですねえ、みんな「非キリスト教国」ニッポンに生まれて。あれ、でもみんな「結婚式やるなら是非教会で」って言うか?




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