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熱湯処理による多重免疫染色法

青木潤*1 難波紘二*2 山本津由子*1 佐々木なおみ*1 谷山清己*1
   *1 呉共済病院臨床病埋科 *2 広島大学総合科学部
 近年、標本の抗原性を賦活させるためにマイクロウエープで加熱処理する方法が報告され、パラフィン包埋切片での免疫染色に大きく貢献している。われわれはこの方法が試薬の抗原性、酵素活性を逆に失活させるのではないかと考え、これを利用して多重免疫染色を試み、安定した染色結果が得られることを確認したので報告する。

材料と方法

材料は慢性扁桃炎のため摘出された扁桃の20%ホルマリン固定・パラフィン切片および凍結切片、細胞浮遊液、末梢血のbuffycoat、体腔液塗抹標本を使用した。切片にはシランコーティングスライドを、塗抹には無処理のスライドグラスを使用した。

 熱湯処理は下記の要領で行った.0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)を500ml用ビーカーに400−500ml入れガスバーナーで加熱。沸騰させないように90〜99℃に保持し、これに水洗した標本を染色用ゴンドラにいれて浸漬した。熱湯処理が終了した標本はすぐ水道水で手早く洗浄し、pH7.6の0.05Mトリス塩酸緩衝生理食塩水(TBS)に浸漬し次の染色過程に進んだ。

三重染色の手順

抗体、試薬の希釈・洗浄はTBSで行う。洗浄はそれぞれl分間、3回実施する。
内因性POX阻害3%過酸化水素・エタノール液 15分。
  標識酵素にPOXを使用しないときは省略

プロツキング反応 10分
(パラフィン切片:5%スキムミルク液、凍結切片・スメア:5%正常ヤギ血清)

一次抗体(No.1マウスモノクローナル抗体) 反応60分

二次抗体(抗マウス免疫グロプリン抗体 DAKO 1:100)30分

APAAP複合体(マウス抗体用 DAKO l:25) 30分

BCIP/NBT法発色 10分
(新鮮材料の場合は基質液にlmMのレバミゾールをいれる)

熱湯処理  10分

一次抗体(No.2マウスモノクローナル抗体) 反応60分

ビオチン化二次抗体   
    (ビオチン化抗マウス免疫グロプリン抗体 DAKO 1:100) 30分

ALP標識ストレプトアビジン(DAKO 1:100)30分

NF法発色  10〜15分
(新鮮材料の場合は基質液に1mMのレバミゾールをいれる)

熱湯処理 10分

一次抗体(No.3マウスモノクローナル抗体) 反応60分

エンビジョン/HRP(DAKO 原液) 30分

DAB発色 2−5分

核染色 
(マイヤーヘマトキシリン、BCIP/NBT発色はへマトキシリンと類似した色調のため、核染色はきわめて淡くするか省略する)

十分風乾ののちキシレンで透徹、非水溶性封入剤で封入する。 
(組織切片において、発色がNF法とDAB法のみの場合はイソプロピルアルコールで脱水する)

多重免疫染色の写真と説明