・第1章
若き作家の章 |
田辺俊一(私)
旧制から新制への学制の切り替えで男女共学になり、札幌南高校の二年生で時任純子と同級生となる。17才の誕生日を祝ってあげると手紙を貰い、はじめて口を聞く関係に。純子は私にとって未知なる、とらえがたいものでもあった。少年にはわからぬ不透明で妖しい部分に満ちていた。 |
・第2章
ある画家の章 |
浦辺雄策
時任純子の絵の先生。妻子のある32才のとき、道立女学校の3年生(14才)の純子が絵を習いたいと訪ねてくる。女学校の美術の先生には平川先生がいたが、純子が言うには「才能がない」という。
秋の道展に「ホオヅキと日記」を出品し入選。「最年少女流画家」として新聞に載る。 |
・第3章
ある若き記者の章 |
村木浩司
H新聞社の学芸部記者。時任純子の姉、時任蘭子の愛人。純子を知ったのは、純子が高校一年生の時。プレイボーイとして幾人かの女性を手なずけてきた村木は、純子の方から慰められ、愛されたような受け身の思いが一層奇妙で、体も心も自分の手元に捕らえておきたいと思う。 |
・第4章
ある医師の章 |
千田義明
札幌のある協会病院の内科長。時任純子が二度の自殺を図った時、胃の洗浄をして助ける。友達というか、信頼しあった関係の立場の人間である。
自殺未遂の後、千田宛に出された日記の束を保管していた。そこには自らの悩みが吐露されていた。 |
・第5章
あるカメラマンの章 |
殿村知之
東京のT医科大学三年生の時に、左翼運動に加わり、深入りした挙句、その後左翼グループのオルグとして札幌へ乗り込んだ。弟の康之が札幌南高校の定時制に通い、同人雑誌をはじめて、その中に天才少女として名高い時任純子も誘ったことから、純子を知ることになる。
左翼運動で釧路刑務所に留置され、その保釈金を用立て会いに来た後、阿寒に果てた、最後に純子にあった人物。 |
・第6章
蘭子の章 |
時任蘭子
純子より4才年上の姉。 駒田(30才年上)と付き合っているが、村木を紹介され駒田という安全な港を持ちながら、村木という外洋へ新しい冒険をはじめた。
純子とは厳格な父親に対抗するように、一緒に抱き合って寝る仲。そこで純子の色々な行動の真意を知るが、やがて純子に負けていく自分を感じ、駒田との別れを告げ、東京に出る決心をする。 |