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07/02
車を買い換えたので、交換に行く。サイズが少し小さくなったので、あまり嬉しくない。車というものは、収入に応じて、しだいに大きくなっていくという、高度経済成長の時代に育った団塊の世代としては、車を小さくするというのは、何となく淋しいことである。しかし子供も犬もいなくなって、妻と二人の生活になったので、コンパクトな車にするのは必然である。前の車と同じメーカーで大安売りの車があったので思わず買ってしまったが、どうもこれは若者向きの車だったみたいで、エアロパーツがくっついている。まあ、横風には強いだろうが。
貸与権についての打ち合わせ。今回は活字系の作家だけの会議。貸与権ビジネスで当面、関わりがあるのは推理小説だけだから、こちらは著作権の趣旨が守られればいいという傍観者的な立場。著作権を守るということは、お金をたくさんとるということではない。読者の立場、利用者の立場に立って、文芸文化の発展を図ることも必要である。安いレンタル料で推理小説が読めれば、活字離れをくいとめることができる。というような意見は述べておいた。
07/03
土曜日。妻と三軒茶屋まで散歩。餃子屋で餃子を食べる。焼餃子と水餃子しかない店だ。「犬」は順調に先に進んでいる。状況設定を描くまでが大変だった。あとは犬について書いていけばいい。ウィンブルドンのテニスも時々見ている。マリア・シャラポアという17歳の女の子が優勝した。ものすごく冷静で、静かなガッツがある。テニスをしている時の表情がいい。インタビューになると途端にふつうの女の子になる。
07/04
日曜日。散歩をしただけであとはひたすら仕事。「犬」は順調に進んでいる。ようやく半分を超えたという手応えができた。いまは犬についてのディテイルを重ねている。この種の本は、ディテイルが重要である。身辺雑記だが、いちおうストーリーはある。哲学的なものを深めようとしている孤独な作家(わたし)と、家族や犬の関係を描くというもので、ストーリーというのは子供が中学生くらいから大人になって家を出ていくというのがストーリーになる。犬の方は、格別に成長とか変化はないが、しだいに衰え、やがて去っていく。その時間を推移をストーリーの主軸としたい。犬についてのディテイルを充分に描いてから、一気に時間を進行させ、エンディングに向かって密度を高めていきたい。
07/05
NPO日本文藝著作権センターの総会。スタッフ3名の働きで、総会を無事、開催することができた。感謝。理事や児童文学の方々とも歓談できた。出かけるまでに原稿も少し書けた。
07/06
文芸家協会で総務省と打ち合わせ。暑い。妻に文春ビルまで送ってもらった。新しい車は音が静かだ。カーナビがついているが時々迷走する。カーナビは去年、北海道で借りたレンタカーについていたが、釧路から阿寒湖を目指すと、とんでもない林道に導かれたので、信用していない。ただ周辺の地図が見えるので面白い。
07/07
能を観る。能を観る度に思うことだが、日本の文化は上品で上質だ。もちろん大衆の芸能とは別のレベルの高い文化だが、こういうものが残っているというのは、日本人の文化度が高いからだろうと思う。「犬」着々と前進。
07/08
朝日新聞のインタビュー。視覚障害者の読書権について。必要なことは話せた。ついでに公共貸与権については話した。昨日も今日も35度を超えた。明け方でも27度くらいある。「犬」は山場みたいなところにさしかかっているが、まだエンディングの方向には進んでいない。あるポイントから、一気にエンディングに向かってスピードアップしたい。
07/09
文芸家協会理事会。今回はとくに議論をすべきことはなかったので報告だけ。「犬」進む。これは犬が主人公であるが、私小説なので私にまつわるさまざなことが出てくる。昔のことを思い出すと、胸が痛くなる。いやな仕事を始めたものだと思うが、作家というものは、こういう苦しみが好きなのだ。
07/10
土曜日。この週も週日は休みがなかった。本日は自分の仕事に集中できる。まずは投票。明日は能を見に行くので、先に済ませる。事前投票は初めてだが、いつもの小学校より出張所の方が距離が近いし、建物の中の歩く距離も少ない。しかもすいている。帰りにカルガモを見る。親と同じサイズになったカモたちだが、羽の先に青緑、青、紫の飾り羽みたいなものがあって、その色が微妙に違うのが面白い。同じ兄弟なのに色が違うのは遺伝子の組み合わせのせいか。「犬」章の変わり目で時間をとばす。子供たちを一気に大人にして、犬の晩年になだれこんでいく。エンディングの方向にそろそろと進んでいく。
07/11
日曜日。櫻間右陣さんの襲名披露公演。国立能楽堂は数日前にも行ったばかり。向かいの高速の下の駐車場に車を入れるのだが、2回とも車高オーバーの表示が出た。もっと背の高かった前の車がすんなり入ったのにどういうことか。
07/12
映像ソフト協会で打ち合わせ。築地まで妻の車で送ってもらう。妻はそこから買い物に行ったようだ。打ち合わせのあと、同行した書記局と近くの喫茶店で別件の打ち合わせ。終わってから妻に電話すると近くを走っているというので乗せてもらう。携帯電話というものの便利さを認識した。
07/13
今日も暑い。新潮社の担当者が「団塊老人」の見本を届けてくれる。新書だから、装丁は同じだが、コシマキのコピーはいい感じだと思う。タイトルが硬いので、コピーで救ってもらっている。編集者が雑誌で見つけたという、池尻大橋の店へ行く。246の向こう側はあまり行かないし、看板も出ていない店なので知らなかったが、入ってみると満席である。よい店だった。この本は草稿を書くのは早かったが、2回ほど書き直しをしたので、けっこう手間がかかった。しかし、この時代には必要な問題提起になっていると思う。
07/14
妻が実家に帰った。暑い日が続く。これからしばらく公用がないので、仕事に集中できる。「犬」も山場にさしかかっている。犬がテーマではあるが、本当は、私小説であるので、自分を書くことになる。自分の五十歳くらいの時点(今から5年前)から、犬が亡くなるまでの期間が山場になる。ここまでは準備のための設定だったが、ようやく山場に突入した。ここからエンディングまでは一気に行ける。幸い、公用がないので、今月中にゴールに到達できるだろう。
07/15
今日も暑い。ひたすら仕事。
07/16
書評のページの締切が迫ってきた。最近、本をあまり読んでいないので、何かの雑誌で見かけた若手作家の映画評の本を読もうと思い、神保町まで行く。東京堂に入って、文芸作品のタナの前で、突然、はりついてしまった。暑さのせいか老人ボケか、その作家の名前を忘失した。本のタイトルも憶えていない。これでは捜しようがない。タナをずうっと見ていても、思い当たる作家の名前に到達しない。若手作家としては人気のある人なので、本が一冊もないとは考えられない。そのタナは作家のアイウエオ順に本が並んでいるのだが、ようやくタナの一番端に、思い当たる作家を発見した。本も見つかった。やれやれ。ついでに三田誠広の本はあるかと探したら、10冊ほどあったので、まだ作家として生きながらえていることを確認した。外に出ると、数日前に三宿で飲んだ新潮社の担当者とばったり会った。暑いし、会ったばかりで立ち話をする必要もないので、やあ、と言っただけで別れた。
07/17
男声合唱団。5月にコンサートをやったので、それでわたしの頭の中から、合唱団というアイテムが消去されていた。それで6月の練習日のことをきれいに忘れていた。宇部に結納をもっていく時期だったのでそれどころではなかったのだが。先週の土曜日、幹事から電話がかかってきて、本日の練習は来週に延期になったと通知されたのだが、それでようやく、コーラスというものがこの世に存在することを思い出した。気分良く飲んで帰る。実家に行っていた妻も戻ってきた。
07/18
日曜。「犬」は長男の留学先のブリュッセルの話になっている。このあたりは主役の犬は登場しない。それから犬の散歩の途中で事故に遭う話。ここは犬がおおいに関わっている。
07/19
妻の運転で筑波山へ行く。なぜ筑波山か。次男はつくば市の科学万博の跡地にある研究所に勤務している。独身寮は土浦だったのだが、今度、妻帯者用の社宅に引っ越したというので、どんなところか見に行く。新車の慣らし運転でどこかにドライブするというのがもともとの目的。土浦北インターで降りて筑波山に向かう。ロープウェイで山頂へ。ベルギーのナミュールへ行った時、ロープウェイが修理中で乗れなかったことを思い出す。そういえば日本平の東照宮へ行こうとしてロープウェイが休止中だったこともあった。ロープウェイとは相性がよくない。息子の研究所の建物を確認した。立派な建物である。それから社宅のマンションへ。これも立派な建物である。それからカーナビを設定して、高速の乗らずに一般道だけで自宅に帰った。知らない道ばかり通ったので面白かった。
07/20
本日は新潮新書の発売日のはずだが、暑いので本屋に確認に行く気力もなかった。東京の最高気温が39度を超えたらしい。わたしは昔、八王子のめじろ台にいた時、39.4度というのを体験している。本日は散歩もせずひたすら仕事をする。
07/21
本日も38度を超えたらしい。しかも明け方の最低気温が30度以上ということだ。その間、わたしは一歩も外に出なかった。この期間、公用がなくてよかった。「犬」はラストスパート。「ウェスカの結婚式」で書いたところと重複するのだが、そのあたりのことをできるだけコンパクトに書く。この本では旅行から帰ってくると犬がボケている、というところで終わっているのだが、そこから今度の本の最後の山場に突入していく。涙なくしては書けない領域だ。
07/22
何事もなし。本日も30度以上はあるが、風が少し涼しく感じられる。
07/23
健康診断の結果を聞きに行く。すべての数字がよくなっている。塩分と油を控えた食事療法の成果だろう。ただし肝臓の数値は横這い。酒は控えていないから当然である。健康診断を受けたのは先週で、いずれも近くの医者へ行く。診察時間の前にやるので早起きしないといけない。先週は妻に起こしてもらったが、今週は留守なので、徹夜で行く。帰って仮眠。それから「私学塾」のインタビュー。わたしは塾肯定論者なので、よい話ができたと思う。学校でハードな勉強を子供に強いると、ついていけない子は苦しむことになる。学校はのんびりと平等教育をやればよい。できれば高学年でも公立小学校は昼間でにして、午後は希望者だけ、クラブ活動をやると、これも希望者に補修授業をやればいい。そして、残りの生徒は塾へ行ってもいいし、プロサッカーが主催する少年サッカークラブとか、オリンピックを目指す水泳教室とか、上級のスポーツクラブへ行ってもいい。子供は自由であるべきだし、親との合意の上で、ものすごくレベルの高い塾に入るのもいい。頭のいい子は、さらにプレッシャーを与えて頭脳をみがくべきだ。そういう人が将来、この国を支える。ただし、それをエリートと考えてはいけない。単に頭のいい子供だと考えるべきだ。中国雑技団を目指す特異的に体のやわらかい子供と同じように、頭のよい人間は、一種のへんな子供である。こういう子供は、誉め、励ますことによって資質を伸ばし、世のため人のために自分の能力を活かすように鍛錬すべきだ。ことわっておくが、頭のよい人は金持ちにはなれない。インド人や中国人の方が、たぶん頭はいいだろう。金持ちになるには、別の才能が必要である。これは教えることはできない。金持ちや権力者になるには、ある種の愚鈍さが必要である。鈍感だから役人になれる。面の皮が厚いから自民党に入れる。単に頭がいいだけの人間は、出世はできない。頭のいい人間は、自らの資質を宿命だと考えて、努力し、社会に尽くすべきである。
07/24
久しぶりに三軒茶屋まで散歩。夕方だがまだかなり暑い。しかしぬるい風が吹いている。「犬」はようやく犬の話に戻っている。いよいよ犬の老いについて書くことになる。これはつらい作業だが、死ぬシーンは最初に書いているので、心配はない。この作品は、最初、死ぬのシーンから書き始めて、それから回想が始まる、という構想でき書き始めたのだが、それではあまりに暗いので、この種の時間の入れ替えは止めて、時間軸に沿って、子犬がわがやに到着することころから書き始めることにした。だから死ぬシーンはワープロの後ろの方にそのまま残してある。そこにたどりつけば、作品は完了ということになる。
07/25
日曜日。実家に帰っていた妻が戻ってくる。やれやれ。明日は箱根で一泊するので、「犬」のこれまで書いたところをプリント。小田急特急の車内でチェックできるか。
07/26
妻の車で新宿へ。小田急に乗ったがプリントを出す意欲なし。箱根湯本は豪雨。タクシーで山のホテルへ。教育についての講演。聴衆は私立中学・高校の校長。自分の体験談などを話したが、好意的に聞いてもらえた。ついでに著作権の話もする。こちらの方が盛り上がる。夕食のあと、二次会には参加せずに部屋にこもってプリントをチェック。ほとんど徹夜で8割ほどチェックできた。冒頭の部分はかなり面白い。途中で少し暗くなるが、くどいところをカットしたので、少しはましか。
07/27
午前中1便しかない、山のホテル前始発の超特急バスで帰る。一度このバスに乗りたかった。なぜなら、最寄りの池尻大橋の地下から出口の前に、降車専用のバス停がある。降りることはできでも乗ることはできない不思議な停留所だ。「超特急」だったので足柄の次が池尻大橋だった。どのタイミングで停車を求めるボタンを押せばよいのか迷った。夜は合唱団の飲み会。
07/28
下北沢へ散歩。「犬」は軽井沢の話など。別荘を借りて犬と二人でいた時、向かいの家の花火の音におびえて犬がわたしの布団の中に入ってきて、一夜、同衾した思い出。
07/29
塾/予備校のための説明会。ここでわたしが重視していることは、塾や予備校に通う生徒や父母の方に負担をかけないようにということ。ただ著作者の権利を守るためには、無許諾無償というわけにはいかないので、適正な著作物使用料は徴収しないといけない。今日の説明会の感触は、友好的な感じで、話し合いで充分に解決の方向が探れると感じた。協会で打ち合わせもしたのでずいぶん時間をとられた。明日は午前中の会議があるが、少しでも自分の仕事をしたい。
07/30
午前中の会議は疲れる。夕方仮眠。「犬」あとわずかのところまで来ているが、ゴールはまだ少し先か。孫が生まれるところが必要。
07/31
立川の花火を見る。母のいるマンションで毎年、花火を見ることにしている。帰ると次男が来た。飲み会で遅くなったとのこと。本日は仕事は進まず。
「犬との別れ」は今月末で完成させるつもりだったが、完成しなかった。しかし、ゴールへの道筋は見えているので、あとは粛々と作業を進めるだけだ。ということで、このノートは本日をもって終了する。この続きは、「スペインの孫」という題で進める。そういう本を書くわけではない。もうすぐスペインの孫が来る。この夏はそれで埋まってしまう。仕事の予定は入っているのだが、どうなるかはわからない。そこで「創作ノート」とはせずに単なる日記をつけることにする。むろんおりにふれて、今後の創作について何か考えるだろうが。

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