起死回生01

2024年9月

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09/01/日
新しい月になった。スペインの孫たちは一昨日、成田から帰国した。といっても上海経由でブダペストに行き、一泊してからバルセロナに向かうということなので、まだスペインには到着していない。孫たちのいた長い夏休みが終わった。その間、ぼくは『デーヴァ』再校の白ゲラを読み、校正の入った本ゲラとつきあわせ、さらに本ゲラを最初から読み始めて、ようやく第三部に入ったところだ。これから第一の父殺しの物語が始まる。まだ先は長い。
スペインの孫たちが帰ったので、ノートのタイトルも新しくした。それにしてもスペインの孫って何だろう。何でスペインに孫がいるのだ。思えばピアニスト志望の長男が、芸大卒業にあたって、ブリュッセルに留学したことから話が始まる。ブリュッセルの音楽院は授業料がただで、パリに比べて物価も安く、当時は円高でもあったので、親の負担は少なかった。ああ、パリではなく、ブリュッセルなのか、よかったと思った。そかしそこでスペインのお嬢さんのとの出会いがあって、いまもスペインに住んでいる。いまは円安の世の中になって、スペイン人は東京の物価の安さに驚き、ダイソーやユニクロでものを買いまくっていた。まあ、4人の孫たちも楽しめただろう。
新しいタイトルは「起死回生」とした。何のことだか自分でもよくわからないのだが、いまはそんな気分だ。ライフワークであり絶筆とも考えた作品を書き終え、まだ再校を見ているとはいえ、読みながらあらためてすごい作品だと思い、もはややり残したことはない、あとは静かに余生を送ろう、などと考えそうになっていたのだが、日本人の平均寿命を考えるとあと何年から生きることになりそうなので、何かしようという気分になりつつある。文学というものを、最初から考え直してみたい。そんな気分にもなっている。これからは試行錯誤が続くだろうが、原点に戻って最初からやり直そうと思っている。余生というのはそういうことだろう。ゼロから出発してもう1度、人生を生き直すということで、だから「輪廻転生」という語も考えたのだが、これでは人間に生まれ替わるとも限らないので、このまま人間の作家でいたいと思う。起死回生の逆転人生、みたいなものを夢想してみるのだが、ぼくの余生は、「檸檬」を書いた時の梶井基次郎よりも短いのではないかと思われる。だから、自分にとっての「檸檬」を書きたい。そんなことも考えている。
日曜日。妻は朝からiPadで孫たちの乗った飛行機の軌跡を眺めている。そういうアプリがあるようで、ヨーロッパの地図の上に、小さな飛行機のマークが出ていて、現在地を示している。ブダペストを出た飛行機が、クロアチアからベネチア、ミラノ、ニースとフランス南海岸を進んで、バルセロナに到着した。こちらはもう夕刻だが、向こうはまだ朝のうちだ。これから空港に駐めてある車でサラゴサまで移動するのだが、荷物が多いので、3列シートが使えず、5人乗りになってしまう。長女だけは特急列車に乗るとのこと。列車の方から先にサラゴサに着く。路面電車を乗り継げば自宅まで帰りつける。今夜遅くには、全員が自宅に帰ったというラインが届くだろう。
こちらは再校ゲラ。第三部が終わった。あと7章。今週中に仕上げれば、月曜に編集部に届くように発送できる。少し余裕ができてきた。エンディングはじっくりと読みたい。

09/02/月
午前中に文化庁とZOOMで打ち合わせ。4人だけの会議なのでしゃべる回数がけっこうあった。iPadにイヤホンをつけているので、ひとりでしゃべっている感じになる。妻が不在でよかった。再校ゲラは24章が終わる。これは夢の章。ジャータカの前生譚のなかからデーヴァダッタが出てくる話をピックアップしてくりかえし同じような夢を見るということにした。何度読んでみてもこの章は輝いて。実はこの章を一番最後に書いた。法華経28品にちなんで全体を28章にしたかったのと、前生譚を入れようと考えながらどこにも入らなかったので、1章まるごと夢の話にして、わが子ラーフラとの最後の会話の直後に入れた。この夢の章のあとにアジャータシャトル王子の父殺しの話があり、釈迦がヴァイデーヒー夫人に観無量寿経を説くということになる。

08/03/火
本日も午前中に会議。午後、再校ゲラのチェック完了。長かった。書き始めたのが去年の4月だから、1年半くらいこの作品に関わってきた。これですべての作業が終わった。これでFootballに集中できる。日本時間の金曜日が開幕戦。残念ながら会議があるのでリアルでは見られないのだが、Footballはビデオでくりかえし見るものだ。というか、スローモーションやコマ送りで見ないと、攻撃や守備の陣形、それぞれの駒の動きなどがわからない。Footballは日本将棋に似ている。攻撃と防御の陣形があり、陣形のぶつかりあいがあって、ほころびたところにロングパスが決まったり、ランニングバックが突破したりする。そのほころびを生じさせるために、さまざまな作戦がある。ただ開幕戦のチーフス対レイブンズは、あまり見たくない。チーフスのディフェンスは若手ばかりで、チームワークで防御するのだが、開幕直後の段階ではまだチームプレーが練れていない。さらに今シーズンのレシーバー不在で始まることになった。マホームズがいくら頑張っても、ボールをキャッチできるレシーバーがいないとボールは先に進まない。昨シーズンはシーズン途中から新人のライスが短いパスをキャッチできるようになった。タイトエンドのケルシーとライスが、短いパスだけで前進して、何とか勝てるようになった。たまにロングパスを受けていたスカントリングがいなくなった。かわりに一昨年のエースだったスミスシェスターが戻ってきたが、ペイトリオッツで使いものにならずに放出されたのを拾ったのだ。そういうポンコツでも、マホームズのボールならキャッチできる。新人レシーバーのワーシーがそのうち台頭するだろうが、まだ練習不足だ。これに対して、レイブンズはレシーバーが揃っているうえに、タイタンズからランニングバックのヘンリーを引き抜いた。ボールを手渡すだけでどこまでも前進していく高速戦車のようなランナーだ。ヘンリーに手渡すか、ラマ―・ジャクソンが自分で持って走るか。このラッシングを警戒してディフェンスが前がかりになると、ロングパスが決まる。たぶんチーフスは大敗するだろう。しかしビデオを見て、どこがよくなかったかを検討すれば、3連覇の可能性が見えてくる。最大の敵のレイブンスと初戦で当たれるのはラッキーといっていい。おそらくプレーオフの決勝戦でレイブンスと再戦することになるが、それまで4ヵ月半くらいの時間がある。その間に作戦を練ることができる。来週の対戦相手がベンガルズなので開幕2連敗も予想されるのだが、その後の3つの対戦相手は勝てそうで、そこでバイウィークの休みが入る。そこまでで何とか攻撃の陣形を調えたい。休み明けの相手が49ナーズ。これも負けそうだが、3勝3敗のところから連勝して、プレーオフ圏内にたどりつければ、今シーズンも何とか行けそうだ。ただベンガルズ、ビルズだけではなく、ロジャースのジェッツ、ストラウドのテキサンズ、ラッセル・ウィルソンのスティーラーズと、今年のAカンファは強敵が多い。たいへんなシーズンになりそうで、それだけに楽しみの多い5ヵ月がいよいよ始まることになる。

09/04/水
昨日で『デーヴァ』の校正作業が終わった。金曜日に発送すればいいのでまだ荷造りはしていないが、もう手にとることはない。で、とりあえずFootballのことを考えよう。応援しているチーフスはまだレシーバーの陣容が定まっていない。移籍してブラウンは故障、スミスシェスターも使い物になるかわからない。新人ワーシーは脚は速いが競り合いに弱そうだ。キャッチ能力も未定。去年のレシーバーのライスはオフに交通事故を起こしてその影響がどうなるのかわからない。ということで、今年もレシーバー不在で開幕を迎えることになる。それでもドラフト3巡で入ったタイトエンドのワイリーは、ケルシーの後継者というだけでなく、2人同時にフィールドに出て、パスラッシャーをブロックすると同時に近距離のパスを担当する。あるいはどちらか一方が中距離に出ていく。そんな展開が期待できる。ランニングバックのパチェコをレシーバーとして起用するということも考えられる。まあ、チーフスの心配はこのくらいにして今年の注目ポイントは何といっても新人QBだろう。Footballの試合のほとんどはQBで決まる。今年は指名順15番以内に6人のQBが指名された。1番はベアーズのケイレブ・ウィリアムズ、2番はコマンダーズのジェイデン・ダニエルズ、12番がブロンコスのボー・ニックス。10番がバイキングスのJ・J・マッカーシー。8番がファルコンズノマイケル・ベニックス。そして3番がペイトリオッツのドレイク・メイ。わざと指名順とは異なる順番で書いたのは、この順番がベースボールマガジン社発行のドラフトガイドで解説者の有馬隼人さんの採点表の順番。有馬さんは何しろドラフト最下位指名のパーディーを最有力に押した炯眼のもちぬしなので信用している。案の定、ドラフト3位でペイトリオッツの指名されたメイは、いろいろな欠点があるようで開幕戦の先発から外された。ファルコンズのベニックスも先発はしない。バイキングスのベテランQBカズンズを移籍させたファルコンズがなぜベニックスを指名したのかわけがわからない。去年のロジャースのように、カズンズも開幕早々に負傷することを見越しているとしか思えない。そしてカズンズを引き抜かれたバイキングスはマッカーシーを指名したのだが、今期絶望の怪我をしてしまった。ということで、開幕先発が予想されるのは、1番ベアーズのケイレブ・ウィリアムズ、2番コマンダーズのジェイデン・ダニエルズ、12番ブロンコスのボー・ニックスの3人。有馬さんの上位3人がぴたりと当たっている。この3チームは先発不在で新人に頼るしかない状況だった。ブロンコスは12番でボー・ニックスが残っていたのはラッキーだった。気の毒だったのは13番の指名順をもっていたレイダーズで、ファルコンズが余計な指名をしなければビッグ6の誰かが残っていたところだが、もはや指名すべきQBがいなくなったので、コルツを首になったミンシューで行くしかない。全体ビリになって来年のドラフトに賭けるしかない。この3人のうち、チーム力ということではベアーズだろう。通常ドラフト1番は全体ビリのチームのはずだが、ベアーズは昨シーズンの1番をパンサーズに譲って今年の1番を貰っていた。ドラ1ヤングでそこそこの順位となるはずのパンサーズが1勝16敗という悲惨な成績だったので、ベアーズにドラ1が転がりこんできた。中の下くらいのチーム力があるので、ナンバー1のQBを獲得して、地区優勝を狙うだろう。ブロンコスにもチャンスがある。コマンダーズは残念ながら、同地区にイーグルスとカウボーイズがいるので地区優勝は難しいが、勝ち越せばプレーオフの可能性がある。去年の新人QBで大活躍したテキサンズのストラウドは今年も地区優勝が期待できる。去年は怪我でリタイアしたリチャードソンのコルツも期待できる。問題はドラ1なのにビリだったパンサーズのヤングが今年は立ち直ることができるかだ。というふうに、若いQBに期待したい。

09/05/木
文藝家協会評議員会、常務理事会、理事会。三つも会議があるとかなり疲れる。まあ、こちらは時々発言するだけで、理事長の林真理子さんはしゃべりっぱなしだからお疲れになっただろう。それでも評議員会は大幅に若返り、女性が増えたので活発な意見の交換があった。よい方向に向かっていると思う。さていよいよ明日が開幕。チーフス対レイブンズ戦は会議があるので見られないがビデオではじっくり見る。それよりも月曜日が楽しみ。明日はサースデーゲームで1試合だけだが、日本時間の月曜日は現地のサンデーなので午後、夕方、夜と、各地で試合が実施される。新人QBが初登場するベアーズはタイタンズ戦。ランニングバックの巨人ヘンリーがレイブンズに移籍したタイタンズは最下位候補で、ベアーズの圧勝だろう。ケイレブ・ウィルアムスの初戦は大勝利のはず。ワシントンのダニエルズは、数年前のドラ1QBメイフィールドを擁するバッカニアーズ。ワシントンは昨年ビリから2番目でこのナンバー2のQBをゲットしたのだが、攻撃も防御もビリから2番目のままで、新人にとっては苦しい。去年のドラ1のヤングが苦しんだパンサーズと同様、初年度は耐え忍ぶしかないだろう。12番目でボー・ニックスを採れたブロンコスはシーホークスが相手。ベテランQBスミスが昨年以上の活躍をするとは思えないが、レシーバー陣はもしかしたら最強なので、点の取り合いになるかもしれない。ボー・ニックスの実力を測るにはちょうどよい相手だろう。ケイレブは勝ち、ダニエルズは負け。ボー・ニックスは互角。この試合に勝つようなら、勝ち越しも狙えるだろう。

09/06/金
いよいよ開幕戦。だがSARTRASの会議があってリアルタイムでは見られない。どうせ負けるから見なくていいと思ったがビデオには録ってある。と思ったら勝ってしまった。いずれにしてもレイブンズは最強で、プレーオフの最終戦で当たることは確実。初戦は負けると思ったのは、新人レシーバーのワーシーがマホームズのパスをキャッチするにはある程度の練習と慣れが必要で、去年のライスもシーズンの中盤でようやく慣れてきた。これに対しレイブンズの新戦力は移籍のヘンリー。巨漢のランニングバックで、これは球を手渡しするだけでいいから練習は必要ない。それでレイブンズ有利と思っていたのだが、マホームズは何とワーシーにボールを手渡しして走らせた。スピードが速いだけでなく俊敏にターンできるので、レイブンスのディフェンスに体を触らせもせずに走りきった。後半にはパスもキャッチして、2度のタッチダウンで勝利に貢献した。それでも接戦で、最後のレイブンスの攻撃でタッチダウンパスが決まって同点、ヘッドコーチが2本指を出していたから、2点コンバージョンで逆転負けか……と思ったら、レシーバーがラインを踏んでいてビデオ判定でタッチダウンが認められなかった。薄氷の勝利ではあるが、幸先がいい。午後、住んでいる集合住宅内にある配送センターから再校ゲラを送付。これですべての作業が終わった。

09/07/土
今日はブラジルでイーグルス対パッカーズ。イーグルスの勝ち。パッカーズのQBラブが負傷したらしい。控えQBがいないのではないか。そもそもラブ自身がロジャースの控えだった。タイタンズからウィリスを貰い受けていたはずだが、先発経験のない無名のQBだ。イーグルスはジャイアンツで昔大活躍したランニングバックのバークリーが入って、ラン攻撃が格段に進歩したようだ。49ナーズの強敵になりそうだ。久し振りに床屋に行く。ところで数日前に寝酒を飲みながら古いビデオを見ていて、終わったので放送に切り替えたら、車椅子ラグビーをやっていた。トップシードのオーストラリアを相手に善戦していて、終了間際に同点に追いついた。さらに延長戦でもインターセプトに成功して勝ってしまった。翌日の決勝では大差をつけてアメリカに勝ったようだが、この準決勝のオーストラリア戦が事実上のファイナルだったようだ。車椅子ラグビーと称してはいるがラグビーとはまったく違うスポーツで、チームに女性が入っているところがおもしろかった。そんなスポーツ、ほかにあるか? 陸上でも水泳でも混合リレーというのはあるが、フィールドで闘うチーム戦で女性が入るというのは異例だろう。車椅子ラグビーはパスをする場合、ワンバウンドさせてドリブルすることもあるが、車椅子の座席の前の棚にボールを置いて前進することが多く、そのままゴールゾーンに飛び込んで得点する。フリーになった選手がボールを保持すれば簡単にゴールゾーンに飛び込むことができるので、1点ずつ取り合う闘いが延々と続くことになる。従った一回のインセプトが命とりになる。試合を少し眺めているうちに原理がわかってきた。ポイントゲッターの選手が一人いて、その選手がボールを保持すれば必ず得点になる。そこでディフェンスの選手が陣形を組み、相手のポイントゲッターの選手を両側からブロックする。動きがとりなくなって、やむなくパスしたところを、インターセプトする。そういう戦略とか陣形とかがあるので、Footballや日本将棋に近いと思った。もう一つ、このスポーツの特色がある。障害の重さに応じて選手ごとにポイントがつけられていることだ。一度にフィールドに出場できる選手の合計ポイントが定められているので、障害の軽い選手ばかりを出すことはできない。ポイントゲッター2人出ていれば、残りの選手は重い障害の選手ばかりということになる。重い障害の選手はパスもできないし、スピードも出せない。そういう選手が陣形を作って、相手のポイントゲッターをガードする。このガードの選手がいかに監督の作戦どおりに陣形を作って相手の攻撃を阻止できるかが勝敗の分かれ目になる。女性の選手にも有利なポイントが付与されたいるので、女性選手が出場していれば、障害の軽いポイントゲッターがつねに出場させることができる。そのポイントに応じて役割が決まっているところが、将棋の駒みたいでおもしろかった。

09/08/日
「起死回生」というタイトルのノートを始めたのは、ここから自分の新たな文学創造を始めたいという思いがあったからだが、いまは開幕直後なのでFootballのことしか頭にないので、しばらくはこの話題が続くことになる。開幕戦のビデオをじっくりと眺めて感じたことがある。まずは新人のゼイビア・ワーシーのこと。この名前は英語の発音ではゼイビアだが、スペルをそのまま読むとザビエルだ。戦国末期に日本に初めてキリスト教を伝えた人として教科書にも出ている。スペインではXを「ハ」と発音するのでハビエルという名が多い。長男の嫁さんの親族にもいる。何となくドラフト前からこの名前に惹かれていた。ドラフト前の新人はリーグが用意した体力測定を受けることになっていて、そこでこのルーキーは歴代最速の記録を出した。オリンピックのリレーの候補より速いとされたタイリーク・ヒルよりも速いということだ。2年前にタイリーク・ヒルがドルフィンズに移籍して以来、俊足レシーバー不在だったチーフスに待望の選手が入った。ただプレシーズンの3試合だけでは経験不足なので初戦からの活躍はないだろうと思っていたのだが、ヘッドコーチのリードはこの新人に活躍させる戦略を考えていた。まずはパスを受けるのではなく、ランニングバックの代わりに手渡しで球を受けたこと。本来のランニングバックのパチェコは球を持たずにダッシュしておとりになったが、オフェンスラインはそのまま前進してワーシーに道を作った。それでも横合いから次々に相手のディフェンスバックがタックルしようとしたのだが、真っ直ぐ走ったワーシーのスピードについていけず、タックルどころか手で触れることもできなかった。これで独走のタッチダウン。次は4クォーターに入ったところで、ワーシーは右のレシーバーとしてサイドライン際に位置していた。マンツーマンで相手のコーナーバックが対峙している。センターが球を動かす前にまず左のレシーバーのスミスシェスターが右に移動。これには相手のディフェンスが対応してついていったのだが、球を出す直前にランニングバックのパチェコも移動して、スクリーンパスを受ける体勢になった。この動きに、ワーシーについていた相手コーナーバックが一歩前に出てパチェコに備えた。そこでワーシーは走り始め、簡単にフリーになった。これもリードの戦略だろう。スミスシェスターとパチェコの動きに、相手のセーフティー二人も気をとられて、ワーシーをカバーできなかった。初戦で2本のタッチダウンを決めたワーシーだが、ただ走ったというだけのことで、相手ディフェンスと競り合って難しいパスキャッチに成功したというわけではない。まだ真価は不明だが、試合後にインタビューを受けるなど目立つ活躍をして気分をよくしていることはまちがいない。もう一つ、レイブンスには怪物ランニングバックのヘンリーが新加入した。タッチダウンを1つ決めたものの、それ以外に目立つ活躍はなかった。これはチーフスのディフェンスが分厚くラン攻撃に対応していたからで、ランはほとんど進まなかった。しかしディフェンスがランニングバックに備えると、QBはフリーになる。これは罠のようなもので、もともと走るのが好きなラマ―・ジャクソンは、ヘンリーに球を渡さずに自分で走ってしまった。100ヤード以上走ってしまったために、体にかなりダメージを受けたはずだ。ラマ―・ジャクソンは外に出たりスライディングするのではなく、どこまでも走ってしまうので、体当たりやタックルで止められ、その度に地面に倒れることになる。最後はパスに頼ることになったが、パスの精度もあまりよくなかった。最後にタイトエンドのライクリーに投げたパスが決まったかに見えたのだが、つま先がラインを踏んでいた。これもパスの精度がよくなかったからで、ジャンプしないとキャッチできず、チーフスのディフェンスに押し出されてしまった。まあ、接戦であったことは確かで、これからヘンリーも走るようになるだろう。チーフスもケルシーにはほとんど投げなかった。戦力を温存して、奥の手を見せなかった。トーナメントの最終戦で必ずレイブンスと当たる。ただこの1勝は、シード1位で最終戦をホームで迎えるためには貴重な勝ち星だったといえるだろう。

09/09/月
近くの医院に行きいつもの薬を貰う。帰ってFootball中継。ライオンズ対ラムズ。ラムズは勝つチャンスはあったが守りきれずに同点に追いつかれ、延長戦はコイントスに負けて、ライオンズにタッチダウンを決められた。プレーオフ(スーパーボウルも)の延長戦は先攻がタッチダウンでも後攻にもチャンスが与えられるのだが、レギュラーシーズンではコイントスに勝った方が有利だ。他の試合にも言及しておく。新人QB3人の試合は、ベアーズのケイレブ・ウィリアムスはタイタンズに勝ったものの、得点はパントブロックとインターセットによるもので守備が挙げたもの。QBとしてはまったく仕事ができなかった。投球のモーションが大きいという欠点があらわになったようだ。ただベアーズは守備陣ががんばっているので、今後に期待。ブロンコスのボー・ニックスは何もできずにシーホークスに完敗。コマンダーズのワシントンも最悪。相手のバッカニアーズQBメイフィールドにタッチダウンパス4本決められるようでは守備も期待できない。ビリ候補。去年の新人QBの対決となったテキサンズのストラウドとコルツのリチャードソンはストラウドの安定感が際立った。リチャードソンはランで活躍したもののパスの精度には疑問が残る。タイタンズのリーヴィスは新人ケイレブに負けた。去年のドラ1パンサーズのヤングはセインツに大敗。今年もビリ候補だ。他の試合は、スティーラーズがファルコンズに圧勝。ただしキッカーのボズウェルがフィールドゴール6本決めた。ラッセル・ウィルソンは膝の怪我が長びき、ベアーズをクビになったジャスティン・フィールズが先発したが、フィールドゴール6本というのは、攻めきれなかったということ。ただスティーラーズは今年も守備が強い。ピルズはカーディナルズに辛勝だが、QBジョシュ・アレンがタッチダウンパス2本、ラン2本の一人舞台。今年はレシーバー陣が弱くなったので自分で走ることが多くなりそう。ペイトリオッツがベンガルズに勝った。これは予想外。新人QBのメイではなく控えのブリセットが先発した。大活躍というわけではなかったが、守備陣がベンガルズのバローを封じた。バローはどうした。去年の不調がまだ続いているのか。ランニングバックが今年は弱いのでそのせいか。ドルフィンズがジャガーズに大勝。今年もタゴヴァイロアからタイリーク・ヒルへのパスが決まりそうだ。ランニングバックの去年の新人エイチェンがラッシングで1本。ジャガーズのエチエンヌも1本。名前がまきらわしい。バイキングはせっかくとった新人QBが大怪我で今期絶望。数年前のドラ2ながらまったく活躍していないダーノルドが先発。相手がビリ候補のジャイアンツなので完勝。チャージャーズがレイダーズに完勝。レイダーズはファルコンズのまさかのQB指名で、新人QBをとれなかった。去年、コルツの控えで活躍したミンシューを移籍させたがダメだった。カウボーイズがブラウンズに快勝。2年前に鳴り物入りで移籍したQBワトソンはインターセプト2本。ワトソンはもうダメではないか。さて、明日はジェッツと49ナーズの試合がある。怪我から回復したロジャースがどの程度のプレイができるか。40歳を過ぎている。ブレイディーは走らずに勝てる奇蹟的なQBだった。ロジャースも脚が衰えているので49ナーズの強力ディフェンスに吹っ飛ばされるのではないか。またも開幕戦負傷退場ということにならなければいいのだが。49ナーズは何とか去年の勢力を維持している。QBパーディーのギャラが安いのは今シーズンまでだから、スーパーボウル制覇のラストチャンスだ。そこへいくとチーフスは、ギャラの安いディフェンス陣が、マホームズ、ケルシー、クリス・ジョーンズのギャラを陰で支えている。ただそのディフェンス陣やランニングバックのパチェコも今年が3年目なので、来シーズンはギャラが上がりそうだ。

09/10/火
さて、Footballのことばかり書いているわけにもいかないので、文学の話をしよう。絶筆となる最後の作品を書いたあとなので、改めて原点に戻って、文学について考えてみたい。還暦という言葉があるが、いまから60年前、自分が16歳の時に、ぼくは小説家になろうと決意した。翌年、17歳の時に高校を休学して、「Mの世界」という最初の作品を書いた。幸いその作品は『文藝』に掲載されて、デビュー作となった。それから半世紀にわたって小説を書き続けていたわけだが、そのスタート地点で、ぼくは文学というものをどのようにとらえていたのか。ここでいう「文学」というのは、「小説」と同義だろうと思う。夏目漱石の夢の話や梶井基次郎のエッセーとも散文詩ともつかない作品も、広い意味での小説だと思う。宮沢賢治の童話も小説といっていいだろう。短歌や俳句、川柳、現代詩などの言葉のリズムを重視した短い作品に対して、散文である程度の分量のある作品は小説と考えておく。16歳の自分は、小説というものをどのようにとらえていたのか。振り返ってみると、文学というものには、「大きな文学」と「小さな文学」というものがあるように思う。小さな文学というのは、「小説家になりたい」という願望というか人生の目標と重なっている。職業として成り立つような作品が「小さな文学」だ。ほんとうはそんなことはどうでもよいのであって、フランツ・カフカも、梶井基次郎も、宮沢賢治も、書くことを生業としていたわけではない。彼らは書くことに命をかけていたのだと思う。ただ命がけで書いた作品というだけでは「大きな文学」といえるかというとそうではない。書くことに命をかけていた書き手はたくさんいるはずだが、彼らの作品が今日まで残っているのは、彼らが書きたいと思った作品、書くことに命をかけていた作品が、文学の歴史にインパクトを与える独創的なものであったからだ。また書くことを生業としていながら、独創的な作品を書き続けた作家は多い。「ドグラマグラ」を書いた夢野久作は職業作家であり、ある程度の人気作家でもあった。ただ人気作家というものは、ファンの期待の延長上に作品のプランを設定する。ところが「ドグラマグラ」は誰もそんなものを読みたいとは望まなかった奇怪な作品だ。だからこそそれは「大きな文学」だったのだとぼくは思う。ドストエフスキーもある程度は人気があったようだが、晩年に向かって彼は奇怪な長篇を書くようになった。だからこそ彼の作品は「大きな文学」なのであり、読者が支持した初期のセンチメンタルな作品は、偉大な文豪の若書きとして評価されるにすぎない。ぼくは個人的には初期のドストエフスキーも好きなのだが、『罪と罰』以後の作品がなかったとしたら、ドストエフスキーはロマン派のマイナーな作家としか認められなかっただろう。それで16歳の自分に戻るのだが、ぼくの気持のなかに「小説家になりたい」という気持があったことは確かだ。ただそこには見通しの甘さみたいなものがあった。とりあえず本を何冊か商業出版社から本を出す、という程度の小説家になるのは、それほど難しいことではない。確かにある程度の文章力と発想力と多少の運さえあれば、本を何冊か出すことは可能だ。難しいのは、職業作家として持続的に仕事をするということで、これができる書き手は限られていく。新人賞は純文学と大衆小説をあわせれば年に十数人の新人を世に送り出す。しかし本を何冊か出したところで、作品が売れなくなり、出版社から見放されると、本が出せなくなる。そうやって消えていく作家はあまたある。ぼくの場合は、子育てのエッセーや、哲学や宗教の入門書のようなものを書くことで、何とか年に何冊か本を出してきた。しかしその種の雑文に追われていると、「大きな文学」についてじっくり考えることができなくなる。これも幸いなことに、早稲田大学および武蔵野大学から声をかけていただいて、専任教員としての仕事をさせてもらった。ここにも雑用はつきまとうのだが、自分を認めてくれる編集者とだけ仕事をしていれば、年に2冊くらいは、自分が書きたいと思ったテーマで作品を書くことができた。これも幸いなことに、専任教員を長く務めたことで、筆一本の作家にはない勤め人のための年金というものをいまは貰っている。だから収入を求めて書く必要はない。「これで絶筆」などといっていられるのは、書かなくても生きていけるということで、生涯筆一本の作家は、若いころに売れた収入で資産を積み立てていなければ、飢え死にするしかないたろう。わたしが大学の教員として招かれたのは、作家としての実績があったからで、結果としては「小説家になりたい」という16歳の自分の目標は達成され、それなりに書き続けることができたといっていい。ただそれで充分に満足しているかというと、そういうわけにはいかない。「小さな文学」は達成されたが、16歳の自分は「大きな文学」についても、ある程度の目標をもっていたはずだ。60年前のことだから、当時の自分が何を考えていたか正確には思い出せないのだが、「誰も書いたことのないようなすごい作品」を書きたいという思いがあった。それは「作家として認められる」とか「文壇から高い評価を受ける」といったモノサシではなまく、カフカや宮沢賢治が梶井基次郎のような、小さくでもいいから大きな作品を書きたいという思いだったのではないかと思われる。目標として当時意識していたのは、ドストエフスキーと埴谷雄高だった。ただそれは過去の作家だ。ぼくは小説というスタイルでドストエフスキー論をやるという試みで長篇小説を4冊出した。今回「絶筆」として書いた『デーヴァ』は埴谷雄高を意識している。これらは60歳を過ぎてからの試みで、それなりの手応えと達成感をもっている。しかしドストエフスキーや埴谷雄高を意識している限りは、「誰も書いたことのないようなすごい作品」を書いたことにはならない。「起死回生」を誓って書き始めたこのノートは、その夢の実現に向けての、五里霧中の第一歩ということになる。まさに五里霧中であるから、当分の間は、一歩も先に進めないという気がしている。しかしここでも不毛な試みになるかもしれないと思いながら考えているのは、「自分なりのカフカ」や、「自分なりの梶井基次郎」なら書けるかもしれないという思いがある。人の真似をしてどうするのだという思いもあるが、ぼくはカフカでもなければ梶井基次郎でもないから、似たようなことをやっても、「すごい作品」にはならないだろうが、「誰も書いたことがない」ものにはなろだろうと思う。カフカも梶井基次郎も、本が出たのは作者の没後だった。だから書き溜めておけば何とかなるという思いはある。

09/11/水
今週は木曜に会議が2件あるがあとは公用はない。月曜に医者に行き、火曜に新宿のマッサージに行った。今日は住んでいる集合住宅の地下にあるスーパーに行って酒と牛乳とチーズを買った。それだけ。で、昨日の続き。16歳の時に、大きい文学と小さな文学というふうに、はっきりと区分けしていたわけではないが、人生の目標みたいなものとしてすでに設定していたと思う。子どものころは、誰でもそうだろうが漫画家になりたかった。中学生の時の友人で、漫画家になりたいというのがいて、始めはノートにエンピツで描いていたのだが、そのうち彼は本気で漫画を描き始めた。まず最初に白い紙にモノサシとカラスグチ(製図の道具)を用いて枠を描く。そこにエンピツで下書きをして、最後に黒インクで仕上げをする。ぼくは手先が器用ではなかったので、カラスグチというものを見ただけで、自分にはとても無理だと思った。大学を卒業して最初に勤務した玩具業界誌では、デザイナーを雇うことができず、編集記者が自分でレイアウトし、見出しの凸版まで作っていた。その見出しを作る時に、カラスグチで線を引く必要があり、ぼくも銀座の伊東屋に行って自分のカラスグチを買ったのだが、使いこなせなかった。線の太さの異なる黒いテープが売られていて、そのテープをぴんと貼れば、カラスグチの代用になることがわかった。そんなことはともかく、中学生の時に、漫画家への道は諦めた。作家になったあとで、世の中にはさまざまな職業があることがだんだんわかってきた。コピーライターとか、ゲームプランナーとか、ゲーム用シナリオライターとか、漫画の原作者とか、小説を書くより楽そうな仕事がいっぱいあるなと思ったが、一人で好きなように書くという点では、小説家は孤独な作業ではあるが、親しい編集者だけを相手にしていれば気をつかうこともなく、精神的な楽な仕事だということができる。

09/12/木
本日は会議2件。一つの日本点字図書館で本間賞の選考。これはリアルな会議。猛暑のなかを高田馬場に向かう。選考が長びくと次の会議への参加が送れるなと気にかかっていたが、とくに問題もなく受賞者が決まった。自宅に帰って少し休憩してからネットに接続してSARTRASの分配委員会。必要な発言はした。さて、昨日のメモの続き。大きな文学と小さな文学という話だが、小さな文学が、とりあえず作家になる、ということだとすると、「もっとささやかな文学」というものもあるだろうと気づいた。「ささやかな文学」というのは、作家になるなどという、ある意味で大それた願望ではなく、さりあえず文学を趣味として楽しめばいいという考え方だ。ただ16歳の人間にとっては、それはあまりにもささやかすぎるだろうという気もする。高校生の未来というのは、無間の可能性を秘めている。野球の選手ならば、甲子園出場のチャンスのある名門野球部のレギュラーにでもなっていないと、「将来はプロ野球の選手になる」という夢は語れないわけだが、「将来は作家になる」という夢なら誰でも語れる。たとえば医者になる、という夢なら、とりあえず医学部に入らないといけないし、医学部に入れば勉学を怠らなければ医者になれる。しかし文学部に入っても作家になれるわけではない。その意味では、作家になるというのは、実現の確立の低い願望だといっていいだろう。しかし当時の風潮としてぱ「文学は尊いものだ」という考え方があって、たとえば歌手になりたいとか、俳優になりたいという願望よりは、いくぶん知的で高級な夢だと考えられていたように思う。趣味とか、楽しみといったもののなかには、好きな選手を応援するとか、好きなタレントを追いかけるとかいったものがある。16歳のぼくも、プロ野球の中継はよく見ていたし、好きな映画俳優みたいなものもあった。しかしそれは好きなだけで、自分が野球をやろうとか、俳優になろうとは思わなかった。そけと同じように、本を読むには好きだけれど、作家になろうとは思わない、という人も多かったはずで、その点、ぼくは確信犯的に、作家になろうと考えていた。ぼくは中学一年の時にドストエフスキーの『罪と罰』とスタンダールの『赤と黒』を読んで、文学はすごいものだと思った。しかしそれは外国の文学だから、自分がそういうものを書くことになるとは考えなかった。梶井基次郎や埴谷雄高を読むようになって、日本の文学もなかなかのものだと思うようになり、大江健三郎とか柴田翔とか、同時代の文学を読むようになった。ただそこにはある種のギャップがあった。志賀直哉や武者小路実篤ならば文庫本が出ているのだが、当時の岩波、新潮、角川文庫(その3種しかなかった)は古典ともいうべき作家や作品しか収録していなかったので、同時代の作家は文芸雑誌か単行本で読むしかなかった。これは高校生にとっては負担が大きかった。それでかなり偏った読み方をしていたように思う。それでも新人賞に応募するために『文芸』や『文学界』は読むようになったので、少しずつ、文壇の状勢も見えるようになってきた。新人賞を受賞した作品を読んでみれば、この程度の作品で作家の第一歩が踏み出せるのかと、具体的なレベルが見えてくる。「小さな文学」というものの輪郭がつかめたように思った。

09/13/金
Footballの開幕からもう1週間たってしまった。本日の中継はビルズ対ドルフィンズ。Aカンファ東地区の優勝争いに関わる好ゲームを期待したのだがビルズの圧勝。タゴヴァイロアというQBは遠投力はあるのだが、判断が遅くサックされることが多い。何度も脳震盪になった過去がある。オフェンスラインが弱いのか。マホームズと比べるのは気の毒だが、昔はチーフスのオフェンスラインが弱く、マホームズは個人技でサックをかわしていた。今年のスーパーボウルでも49ナーズの強力ディフェンスに前半は苦労していたが、相手ディフェンスの疲労がたまった後半にはサックされなくなった。タゴヴァイロアは最後までサックされまくっていた。今年もドルフィンズには期待できない。東地区ではペイトリオッツが初戦でバローのベンガルズに勝った。新人QBのメイが出遅れて控えのブリセットが先発したのだが、平凡な出来だった。平凡だというのは悪くないということで、ディフェンスの力で勝ったようなものだが、これならタゴヴァイロアにも勝てそうだし、ロジャースのジェッツにも勝てる。ビルズ1位、ペイトリオッツ2位というのが見えてきた。ただ途中でメイを先発させて失敗するような気もする。ついでに初戦を終えた段階でも各地区のようすを見ておきたい。北地区はレイブンスがチーフスに負けて出遅れたが実力はこの地区では抜け出ている。バローがどうしたことか。ペイトリオッツに負けるようでは先が思いやられる。2戦目はチーフスなので、ここで実力が試される。スティーラーズがファルコンズに勝っていまのところ単独首位。相手が弱すぎた。ラッセル・ウィルソンを出さずに、ジャイティン・フィールズを先発させたがパスが決まらなかった。このチームもディフェンスで勝てるので、QBは平凡でいい。ラッセル・ウィルソンが復帰した時に悪化するのではと懸念される。それでもベンガルズ1位、スティーラーズ2位ということにしておこう。南地区はテキサンズだけが勝った。残り3チームはプレーオフ出場は無理だろう。西地区はチーフスとチャージャーズが勝った。チーフス1位、チャージャーズ2位で決まり。Nカンファ東地区はイーグルスとカウボーイズが勝った。ここは2強2弱。北地区はパッカーズがイーグルスに負けただけで3チームが勝利。イーグルスが強すぎたのでこの地区は混戦になりそうだ。ベアーズは勝ったもののドラ1QBケイレブ・ウィリアムスは本領を発揮できなかった。勝ち星が良薬になってしだいに調子が出てくることもあるだろう。意外だったのはバイキングスがQBダーノルドの安定感でジャイアンツに完勝したこと。相手が弱すぎたということもあるが、それにしても完勝できたのは、ダーノルドの本領発揮ではないか。メイフィールドがドラ1だった時のドラ2だったが、メイフィールドは1年目に大活躍したのに、ダーノルドはさっぱりで、その後は先発の機会にも恵まれなかった。期待された新人QBの大怪我で先発のチャンスが回ってきた。この地区は3位までがプレーオフの可能性を終盤まで残すのではないか。南地区は負け越しでも地区優勝で有名になったところ。バッカニアーズはメイフィールドが安定していて優勝候補。セインツがパンサーズに完勝。大ベテランQBのカーが絶好調。すでにベテランとなったランニングバックのカマラも活躍。今年のセインツは強そうだ。西地区は49ナーズがマカフリーなしでも完勝。シーホークスも勝ったが相手がブロンコスなので勝って当然だろう。ラムズはライオンズに負けたがこれは相手が強すぎた。接戦にもちこめたので、ラムズは2位でプレーオフまで行けるだろう。

09/14/土
「大きな文学」について16歳のぼくがどのように考えていたのか昔のことなのでよくわからないのだが、頭のなかに漠然と、「新しい文学」といった考え方があったはずだ。文学は進化し更新されていく。ぼくの実家には、4人兄弟の共通財産として、新潮社版の「世界文学全集」と「日本文学全集」があった。とりあえずはこれがぼくにとっての「文学」だった。どういうラインアップだったか定かではないが、それとはべつに筑摩書房の「古典文学全集」が発行されていて、そこにはギリシャ悲劇などが入っていた。少しあとの河出の「世界文学全集」には、「ドンキホーテ」や「デカメロン」が入っていたようにも思う。「マノンレスコー」などもあったはずで、これは例外的に近代以前の古典といっていいけれども、大部分は19世紀以後の文学作品だったように思う。ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」や、スタンダールの「赤と黒」、それからアレクサンドル・デュマやバルザック、ゲーテの「若きヴェルテル」、ヘルマン・ヘッセ、新しいところではフランツ・カフカ。そしてロシアの偉大な文豪の作品。これらが文学だとすれば、新しい文学とは、カフカを先駆者として、サルトルの「嘔吐」、カミュの「異邦人」、そんなところに新しさを感じていた。ヌーヴォー・ロマンといったものはまだ知らなかった。美術に抽象画があるように、音楽に現代音楽があるように、文学にも新しい潮流があるはずだと思っていた。それから60年たったいまのぼくは、こういう安易な「新しさ」には疑問を感じている。フランスのフーヴォーロマンも、南米のマジックリアリズムも、一過性の新しさにすぎない。コロナ禍でカミュの「ペスト」が読まれ、いまはガルシア・マルケスの「百年の孤独」の文庫本が売れているようだが、これはいまとなっては大昔の作品だ。ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」は何やらすごい作品だと当時は感じたのだが、それもまた過去だ。ごく最近、劉慈欣の「三体」を読んだ。これには驚いた。それでも、これが「新しい文学」だとは思わないし、「大きな文学」だとも思わない。ただ文学は積み重なっていく。時とともに増殖していく。文学の歴史に厚みが加わっていく。画期的な新しさといったものではなく、ただ新たなものが追加されていくのだと、いまは思っている。結局のところ、「大きな文学」とは、文学という長い巻物に書かれたリストに、追加されるささやかな作品、ということもいえるだろう。追加するかしないかの基準といったものはなく、時代の趨勢みたいなものはあるだろうが、カフカや梶井基次郎が埋もれた状態から陽の目を見たように、やがては評価されるものだと考えていい。そういう意味で、16歳のぼくも、何かしらいすごいものを書きたいという思いはあった。芥川賞をもらってプロの作家になったあとも、自分のライフワークはこんなものではないと思っていた。もっとすごいものが書けるはずだと、希望をもって書き続けてきた。自分で絶筆と宣言した『デーヴァ』という作品は、とくに無理をして、渾身の力をふりしぼると意気込んだわけではなく、リタイアする編集者と最後の共同作業をするので心をこめて書こうと思ってはいたが、書けるものしか書けないというのは、70歳を過ぎたあたりから感じていたことで、書き終えたいま、これは最後の作品だろうと思われる達成感をいま感じていることは確かだ。60歳代のぼくには、まだ未来があった。もっとすごいものが書けると思っていた。いま76歳になって、いまがピークだという静かな諦念のようなものを感じている。ピークではあるが、これから先、急速に落ち込むわけではない。しかしこのピークを、無理をして維持する必要もないと思っている。ただ切り口を変え、視点を変えることで、新たな領域に踏み出せるのではないかという期待をこめて、これからの人生を静かに生きていきたい。本日は名古屋の高校で学園祭のようなことをやるということで早朝から日帰りで行くことになっていたのだが、孫2人は練習不足で自信がないとのことで、行くのを中止。やれやれ。われわれは深川ギャザリアで食料を調達。

09/15/日
早くも明日は第二週の試合がある。金曜日の試合はビルズが完勝。タゴヴァイロアは脳震盪。タイリーク・ヒルも肩を傷めたようだ。ドルフィンズは早くもプレーオフ戦線から脱落。Aカンファ東地区はビルズの独走か。有力レシーバー2人がいなくなっても、ジョシュ・アレンは自分で持って走ればいいので問題なし。開幕戦勝利のペイトリオッツも今週のシーホークス戦で実力が試される。シーホークスは去年の得失点差1位だったレイブンズのディフェンスコーディネーターをヘッドに据えてディフェンスの強化を図ったようだ。強くなっているかも。49ナーズにボロ負けだったジェッツはビリ候補のタイタンズ。ロジャースの実力が試される。ここで負けるようだと引退を考えた方がいい。北地区単独首位のスティーラーズはブロンコス。これは勝てそうだな。南地区単独首位のテキサンズはベアーズ。去年のドラ2と今年のドラ1の対決。ケイレブ・ウィリアムスはパスがほとんど通らなかったのだがディフェンスのがんばりで初戦勝利。一年先輩のストラウドに勝つようだと勢いがつくが、まあ、先輩に一日の長があるだろう。西地区のチーフスはベンガルズ。バローの調子がよくないようで、楽勝になるか。チャージャーズはパンサーズ。去年のドラ1ヤングは初戦も惨敗。ダントツのビリ候補なのでチャージャーズ楽勝。この地区は2強2弱になりそうだ。今シーズンはNカンファの方が強いのか。初戦の総計は9勝7敗。北地区は3チームが勝利。残りの3地区も2チームが勝利しているので、プレーオフ争いは厳しい闘いになる。東地区の2強のイーグルスはカズンズが移籍したファルコンズが相手。楽勝だ。カウボーイズは初戦で勝っているセインツなので苦戦するかもしれない。北地区は負けたのはパッカーズだけ。しかもラブが負傷したのでもはや脱落。ライオンズが独走しそうだ。ーノルドが復活したバイキングスは49ナーズが相手で苦しい。ドラ1新人QBを擁するベアーズはテキサンズが相手でこれも苦しい。南地区の2強、バッカニアーズはライオンズが相手で苦しい。セインツもカウボーイズなので苦しい。ここは4チームとも負けになる。西地区は49ナーズもシーホークスも勝ち続けるだろう。初戦に負けたラムズとカージナルスが直接対決。どちらかが勝って、プレーオフの可能性を維持する。負けたらもはや脱落。明日の試合を見れば、プレーオフに残りそうなチームと、早くも脱落というチームが見えてくるだろう。

09/16/月
いったい何が起こっているのは。頭がこんがらかっている。月曜日は大半のFootballの試合がある。ぼくは前日にある程度の予想を立てているのだが、その予想がことごとく外れてしまった。たとえばレイダーズ対レイブンズ。チャージャーズにボロ負けしたレイダーズと、チーフスと接戦だったレイブンズ。どう考えてもレイブンズ圧勝だと思われたのだが、レイダーズが勝った。レイダーズはドラフトで直前で6人の有力QBが出払ってしまって、先発QBのない状態になっている。去年、新人リチャードソンが大活躍しながら、途中で負傷して、あとを任されたミンシューをコルツから移籍させた。何とそのミンシューでラマ―・ジャクソンのレイブンズに勝ってしまった。レイブンズはチーフスに負けたせいか調子がくるってしまったようだ。そのコルツはリチャードソンが復帰して活躍するはずだったが、先発QBラブが負傷で、タイタンズから移籍させたばかりの控えウィリスを先発ざせたのだが、リチャードソンの大乱調で勝ってしまった。ウィルスはロングパスをまったく投げず、ただランニングバックに渡すだけ。それが最も安全な勝ち方だということがよくわかった。49ナーズはバイキングスに完敗。49ナーズの控えだったダーノルドが新人QBの怪我で先発して開幕2連勝。セインツはランニングバックのカマラが走りまくってカウボーイズに大勝。バッカニアーズがなぜかライオンズに競り勝った。絶不調のワトソンがなぜかジャガーズに勝利。カーディナルスはラムズに完勝。予想どおりだったのは、チャージャーズが去年のドラ1QBヤングのパンサーズに快勝。ヤングはもうダメだ。こんなにダメなドラ1QBは初めて見た気がする。今年のドラ1ケイレブ・ウィリアムスは初戦に勝ったものの去年のドラ2のストラウドには完敗。2年連続でドラ1QBが墜落することになるのか。シーホークスがペイトリオッツに勝ったのは順調。ジェッツのロジャースがタイタンズに勝ってようやく移籍後初勝利。コマンダースの新人QBは相手がジャイアンツなので完勝。ただフィールドゴール7本という、あと一歩がダメだったみたい。スティーラーズがブロンコスに勝って開幕2連勝。さて、チーフスはベンガルズに勝ったものの、1点差で、しかも残りゼロ秒での51ヤードフィールドゴールで逆転勝ち。オフェンスラインがタッチダウンを受けたり、セーフティーのインターセットリターンタッチダウンがあったり、そんな不測の事態がなければほぼ負け試合だったようだ。シーズン始めというにはこんなものなのか。各チームともまだ本調子ではないので、何が起こるかわからない。明日はファルコンズ対イーグルスだが、イーグルスはランニングバックのバークリーが好調なので負けることはないだろう。ということでイーグルス勝ちと予想して各地区の状況を見てみよう。Aカンファ東はビルズが2連勝。もはや独走状態。北はスティーラーズが2連勝。レイブンズとベンガルズが2連敗なのでこちらも独走状態。南はテキサンズ2連勝で他のチームはすべて2連敗。完全に独走状態。西はチーフスとチャージャーズが2連勝で並んでいる。チャージャーズのヘッドはレイブンズのハーボーの弟なので、要警戒。Nカンファ東は明日イーグルスが勝てば単独首位。カウボーイズが負けたのは意外だった。北はダーノルドのバイキングスが2連勝で単独首位だが、残り3チームも1勝1敗でここは混戦になりそうだ。南はバッカニアーズとセインツが2連勝で並んでいる。この地区は負け越しでも地区優勝というレベルの低さが数年続いているのだが、今年は2強のデッドヒートになりそうだ。西は49ナーズが負けたのでシーホークスの単独首位だが、カージナルスも好調だ。2週目を終わって、レイブンスの2連敗が意外。カウボーイズ、ライオンズ、49ナーズの負けも意外。バイキングス、バッカニアーズ、セインツの2連勝はもっと意外。とにかく想定外のことが起こっている。49ナーズの凋落の始まりなのか。レイブンズもこのまま低迷を続けるのか。チーフスも2試合連続で接戦になっている。すべてのチームの実力が伯仲しているということかもしれない。

09/17/火
またまたわけのわからないことが起こった。ファルコンズがイーグルスに逆転勝ち。イーグルスはエースレシーバーのブラウンが怪我でいなくなっているのだが、ディフェンスがカズンズを止められなかったようだ。そんなことより、チーフスはランニングバックのパチェコが腓骨骨折。2番手のイレアーも故障していて、ランニングバックがいなくなった。幸い去年まで3番手だったマッキノンが就職浪人中なのですぐに呼び戻せるだろうが、主力にはならない。去年までブラウンズにいたハントと交渉中だとのこと。現在30歳のハントは新人のころから知っている。まだマホームズが入る前で、スミスがQBだった。開幕戦の最初のタッチがファンブルだった。だがその後は大活躍で、いまのパチェコよりも馬力があり、ディフェンスを引きずりながらのラッシングは見ていて爽快だった。2年目に暴力事件を起こして解雇され、ブラウンズに拾われた。ブラウンズではチャブの控えだったが、レッドゾーンに近づくとハントが出てきて、ラッシングタッチダウンを量産した。頼りになるランニングバックだが、やはり粗暴なところがあるのか、今シーズンは雇用されずフリーランスとなっていた。チーフスには1年半在籍したのですぐになじむだろう。ただ体のトレーニングをちゃんとやっていたのかどうか。ペリーンというのと、ドラフト外で入ったスティールがいるが、先発としてはまったく役不足だ。この大ピンチをどうやって切り抜けるのか。昨日のベンガルズの試合はホームページにあるダイジェスト画像で確認した。パチェコが負傷したの終盤なのそれまではラッシングが機能していた。ライスがロングパスを受けてタッチダウン。新人ワーシーへのロングパスが背の高いレシーバーに片手でカットされてインターセプトになった。これも含めてマホームズはインターセプト2回。前後へのコントロールが微妙にくるっている。

09/18/水
SARTRASの役員会議。これはリアルな会合なので永田町まで出かけていく。永田町の地下鉄の駅は巨大な迷路だ。地下鉄の路線が五本つながっている。昔、池尻大橋に住んでいたので、文藝家協会へ行く時は半蔵門線だった。地上に出る長いエスカレーターの上で東日本の震災の揺れがあったのでいやの思い出がある。エスカレーターが壊れたと思って駆け上がった記憶がある。いまの住居に引っ越したので反対の麹町の方から文藝家協会に行くようになったのだが、今年になってSARTRASが永田町に移転したので、半蔵門線に乗るようになった。半蔵門線は深いところにある。南北線はもっと深いのかもしれない。交差の仕方が不思議な角度になっている。これに比べれば銀座駅の乗り換えはわかりやすい。わからないのは北千住駅なのだが、あまり行かないようにしている。さてチーフスはランニングバックのハントと契約をした。練習生扱いだが、数日の練習で一軍に上がるかもしれない。まあ、月曜のファルコンズ線はランニングバックなしで闘うしかないだろうが。タイトエンドを3人入れて短いパスだけで前進するとか奇策が必要だろう。本日の午前中に重い荷物が届いた。『デーヴァ』の念校だった。初校、再校の次が念校だが、作家が念校を見ることはない。今回は再校でかなり手を入れたので念校が届いたのだろう。手を入れたところには付箋をつけてあったので、もとの再校の付箋のところだけを確認した。すべてOKだった。赤字のない活字を見るのは楽しい。これでもう完成品だ。これがライフワークで絶筆だ。ぼくは四十歳過ぎに『地に火を放つ者』というイエス・キリストの小説を書いた。それよりももってスケールの大きな作品になったし、思想的にも大きなふくらみをもった作品になったと思っている。ただ釈迦については、『釈迦と維摩』という作品も出していて、これはコンパクトに維摩経の世界が描かれている。今回も維摩と、ヴァイシャーリーの富豪のアームラパーリーは登場する。まあ、仏教にまつわる物語の集大成といっていい。「鹿の王」の話も出てくる。

09/19/木
SARTRAS理事会。無事終了。さて16歳のぼくの話の続き。16歳の時は仏教に興味をもっていなかった。慶応のドイツ文学にいた9歳上の兄が大阪に帰ってきた。長男だから父親の会社を継ぐ気になったのだろう。実家には3階に広い物置のようなスペースがあり、そこが兄の書庫になった。兄は本を買うのが趣味で、カフカ全集はもとより、カント、ヘーゲル、マルクスといった本が全集で揃っていた。ドストエフスキー全集も漱石全集もあった。兄はその本をそのままそこに置いて、近くのアパートで奥さんと暮らし始めた。ということでこれらの書物はぼくの宝物となった。ドストエフスキーやカフカはもちろん読んだが、怖い物見たさみたいなもので、カントやヘーゲルを読むようになって、哲学というものがあることを知った。すべての概念を定義づけてそこから巨大な建築のようなものを構築していく。少しかったるい感じはしたが、厳密に言葉を定義していく作業とはこういうものかと思った。ただぼくは数学や理科が好きで、そういうものに比べれば、哲学というものには少し無理があるような気がした。ただそれはぼくが数学や科学を知らなかっただけで、現代数学や現代物理学は、哲学以上に机上の空論というべき領域に発展していくことがやがてわかってくるのだが。ぼくは並行して、数学や物理学の新書の類を読むようになった。相対性理論とか、不確定性原理とかいったものに魅せられた。マルクスはおもしろかったが、これは大昔の経済学で、役に立たないと思った。父が小さな会社を経営していて、子どものころから庶民の経済学といったものに接していたから、観念的な経済原理みたいなものは役に立たないという気がした。それでもカントやヘーゲルはおもしろかった。そんな本を読んでいると、高校へ行くのがばからしくなった。それで2年生の2学期が始まってから、引きこもり状態になった。「高校時代」や「遠き春の日々」に書いたように、ぼくの友人たちが学生運動にのめりこみ始めて、そのことがおもしろくなかったということもある。で、いまでいう登校拒否の状態になったのだが、母が心配して兄に相談すると、学校へ行く必要はないが、語学をちゃんとやればいいとアドバイスしてくれて、フランス語をやれと言われた。自分がドイツ文学だったので、ぼくにフランス語をやれと勧めたのかもしれない。20枚くらいのフランス語会話の教則レコードを買ってきて、それを録音していたから、自分がフランス語を覚えたかったのかもしれない。とにかくこれを全部暗記しろと言われて、見張り役として、大阪外語大学の学生を家庭教師につけてくれた。ぼくはその先生を相手に、レコードで覚えたフランス語会話を暗誦することになった。そのレコードがひととおり終わると、『星の王子さま』を読むことになった。いま講談社青い鳥文庫にぼくの翻訳の『星の王子さま』が収録されているのは、この時に自分で辞書を引きながら翻訳したことが役に立っている。それからカミュの『異邦人』を読んだ。で、このフランス語の先生が実はお寺の息子だった。それでフランス語の勉強の合間に、仏教の話をしてくれた。実はこれがぼくの仏教との出会いで、ぼくは筑摩から出ていた世界古典文学全集の「仏典T」と「仏典U」を購入して、独学で仏教の勉強を始めた。何しろ学校に行っていないので時間は充分にあった。それが『釈迦と維摩』や『デーヴァ』となって結実した。ぼくの作家としての仕事は、結局のところ、高校を休学していた一年間に蓄積だけで、その後の60年を生きてきたようなものだ。

09/20/金
浜松の仕事場に向かう。ただこのところ沼津で一泊することにしている。その前は3回ほど御殿場にホテルにしたのだが、御殿場はけっこう賑わっているので沼津にした。一泊したあと直接、新東名に入れるのでこちらの方が気分がいい。

09/21/土
築43年の建物なので留守中の雨漏りが心配。毎年白アリが出るのも気にかかっていた。いつもは先にスーパーに行って食料を調達するのだが、今回は三ヶ日インターを出てすぐに仕事場に向かった。夏はスペインの孫が来たので仕事場へ行かなかった。5月の連休も妻の体調がよくなくて早めに帰ってきた。白アリはその後がピーク。雨漏りの形跡はごくわずかで建物は無事だった。洗面所に白アリの死骸があったがこれは掃除機で吸い取れば片付く。概ね無事にここで過ごせそうだ。

09/22/日
浜松にいる。静岡のローカルニュースでは、熱海富士と翠富士の勝敗がトップニュースだ。それとコンコルドという企業(パチンコ屋なのだが)の不可解なCM。地元の人でないと何の高校か意味不明なのだが、ぼくのように時々静岡のテレビを見る人間にとっては、とっておきの楽しみみたいなもの。昨日は強い陽差しがあり猛暑だったが本日は曇り。湿度が高い。北陸の大雨のニュースは、暗澹たる気分になる。自民党総裁選はどうでもいいが、すべてが市民党の宣伝になるのでおもしろくない。この時期はアメリカの大統領選の方がはるかに楽しい。チーフスのケルシーを応援しているテイラー・スウィフトさんはハリス支持を表明した。日本でいえば演歌歌手みたいな、保守的な老人をターゲットした人だが、NHKのドキュメント番組を見ると、若い女の子のファンが多いようだ。さて、日曜日はFootballの前日なので、明日の試合結果が気になるところ。今シーズンは番狂わせの試合が多く、レイブンズの2連敗を始め、強豪が負けることが多く、2連勝のチームが少なくなっている。そのなかで2連勝同士の対決が2試合。テキサンズ対バイキングス。テキサンズは昨年はドラ2のストラウドの活躍でプレーオフに進出して1勝をあげているので今年も地区優勝候補だから2連勝の当然の結果なのだが、ベテランQBのカズンズを引き抜かれたうえにドラフトで獲得した新人QBが今期絶望の大怪我。ビリ候補だと思われたのに、控えQBのダーノルドの目の覚めるような活躍で2連勝。ダーノルドは数年前のドラ2で、その年のドラ1がバッカニアーズのメイフィールド。両人とも低迷期を乗り越えて見事に復活して活躍している。これはどちらが勝つかわからない好勝負になるだろう。チャージャーズ対スティーラーズ。前者は監督が代わっただけで戦力補強はなされていないのになぜか勝っている。後者も頼みのラッセル・ウィルソンが怪我で出遅れて、控えのジャスティン・フィールズが出ているのだが、ディフェンスの力だけで2連勝。このスーパーボウルに進むことはありえない両チームのどちらかが勝って3連勝になるところが不思議だ。次に2勝対1勝の好ゲームを見てみる。2勝のセインツと1勝のイーグルス。セインツはQBのカーが絶好調でロングパスを投げまくっている。ランニングバックのカマラも絶好調で先週の試合では4タッチダウン。カーが投げまくっているのでランニングバックが無警戒という好循環。これはオフェンスラインが強いからだろう。そしてディフェンスも強いので今年はセインツは楽しみだ。イーグルスは新加入のランニングバックのバークレーが活躍しているものの、ディフェンスが不調で星を落としている。セインツに勢いを感じる。2勝のシーホークスに1勝のドルフィンズ。前者のスミスがそこそこがんばっているのに対し、後者のタゴヴァイロアが脳震盪で欠場。シーホークスが3連勝だろう。同地区の49ナーズが怪我人続出で崩壊しつつあるので地区優勝も狙える。2勝のチーフス対1勝のファルコンズ。チーフスは2試合とも辛勝だった。しかもパチェコが負傷。ランニングバックがいなくなった。ファルコンズは移籍したベテランQBカズンズの堅実なプレーで、スティーラーズには善戦、イーグルスには勝った。ぼくはチーフスを応援しているけれども、よほどの幸運がなければ勝つのは難しそうだ。あとはどうでもいい試合なのだが、2連敗のレイブンズ対1勝1敗のカウボーイズ。本来ならSUPERBOWLの対決になるかもしれない好カードだが、どちらも絶不調。それでもラマ―・ジャクソンが復活してレイブンズが勝つのではないか。全敗のラムズと1敗の49ナーズ。ラムズはレシーバーが全滅。19ナーズはQBパーディーは健在だが、それ以外の主力選手が全滅。これで勝てたら奇蹟だ。だが相手も手負いのラムズなので奇蹟を祈ることになる。他に全勝対全敗の対決もある。メイフィールドのバッカニアーズは新人QBが不調のブロンコス相手で完勝するだろう。ビルズはジャガーズが相手。これも完勝だろう。ジャガーズはトレーバー・ローレンスが急にダメになった。QBのギャラが上がって他の戦力が低下しているようだ。そこへ行くとテキサンズはQBがまだ2年目なのでギャラが安く、資源を他のポジションに投入できる。49ナーズはパーディーが3年目なので資源は豊富だが、ギャラの高いベテラン選手が少しずつ経年劣化の状態になりつつあるのではないだろうか。

09/23/月
月曜日はFootballの日。チーフス対ファルコンズの中継があるのだが、スカハーと契約しているテレビカードをもってこなかった。ビデオをセットしてあるのであとでゆっくりと検討する。将棋の棋譜を見るように、試合中のすべてのプレーをコマ送りで見て選手の動きを確認する。Footballのおもしろさはそこにある。中継が見られないのでNFLのホームページで経過を確認する。一進一退のあとで最後にスミスシェスターへのパスが決まって逆転勝ち。スミスシェスターは2年前のSUPERBOWLで主力レシーバーとして活躍した選手だが、トレードを要求してペイトリオッツに移籍したものの使い物にならずにクビになっていたのをチーフスが引き取った。マホームズのパスなら受けられるということだろう。問題はランニングバックは契約したハントはまだ出場できず、ドラフト外から入ったスティールという選手が先発。そこそこ活躍した。パチェコもドラフト7巡だった。ランニングバックはオフェンスラインとの相性で活躍できる場合がある。二番手のペリーンもそこそこがんばった。どこかのチームをクビになった選手だ。カズンズが率いるファルコンズによく勝てたと思う。さてテキサンズ対バイキングスの全勝対決はバイキングスの圧勝。QBダーノルドがタッチダウンパスを4本決めて圧勝した。いままでどのチームでも成功しなかったダーノルドが奇蹟のように開花した。カズンズが移籍し、期待された新人QBの怪我で、3番手のダーノルドにチャンスが回ってきた。こんなすごいQBがチャンスに恵まれずに埋もれていたのだ。 同じく全勝対決のチャージャーズ対スティーラーズはスティーラーズの勝ち。ジャスティン・フィールズが自らのランとパスで2タッチダウン。スティーラーズのディフェンスは最強だ。チャージャーズは終盤にハーバートが負傷退場。ここは控えにハイニケがいるので何とかなるだろう。ジャイアンツがブラウンズに競り勝った。これでビリ争いが熾烈になる。去年のドラ1ヤングをついにベンチに下げたパンサーズは、大ベテランのダルトンが300ヤードを投げ、3タッチダウンパスで圧勝。これでヤングはいよいよ出番がなくなった。ダルトンは長くベンガルズで先発をつとめたQB。バローの入団で追い出されたのだが、ここでようやく先発のチャンスが回ってきた。コルツはリチャードソンが3試合連続の2インターセットと乱れたものの、相手がドラ1新人のケイレブ・ウィリアムスなので辛勝。全敗のブロンコスが全勝のバッカニアーズに快勝。新人QBのボー・ニックスが3戦目にしてようやく本領発揮。QBラブの負傷でQBのいなくなったパッカーズはタイタンズから急遽、控えのウィリスをとったのだが、先週はパスが投げられなかった。それでもラン攻撃で辛勝して気分をよくしたのか、古巣のタイタンズ相手にようやくタッチダウンパスが決まって快勝。ウィリスは2年前のルーキーだが、去年リーヴィスが入って追い出された。そのリーヴィス相手に快勝したので気分がいいだろう。シーホークスはタゴヴァイルアの脳震盪でQBのいなくなったドルフィンズに圧勝して3連勝。怪我人だらけの49ナーズがラムズに惨敗したので、2差つけての西地区単独首位。ライオンズは調子の出てきたカーデイナルスに快勝。レイブンズは強敵カウボーイズに勝ってようやく1勝目。移籍したランニングバックのヘンリーがようやく目覚めて150ヤード。2タッチダウン。ラマ―・ジャクソンも80ヤード走っているので、レイブンズが調子を出すとAカンファでは最強ではないか。今週は明日の2試合が残っている。ビルズ、ベンガルズが勝ちそうだが、今年は伏兵ががんばるケースが多くどうなるかはわからない。本日の浜松は少し涼しくなって昼間もエアコンなしですごせた。

09/24/火
残り2試合。ビルズはジャガーズに快勝。3連勝と3連敗。今シーズンのビルズはレシーバーがいなくなったのだが、ジョシュ・アレンは問題にしていない。一方、ジャガーズはトレバー・ローレンスが泥沼にはまりこんでいる。もう1試合は意外にもコマンダーズがベンガルズに勝った。ついに新人QBがタッチダウンパスを投げたか、自分でも走っていて本領発揮。ブロンコスも新人が起動して戦力が整った感じだ。ベアーズのケイレブ・ウィリアムスはまだ全開になっていない。バローが不調のベンガルズは3連敗。昨日から浜松は涼しくなったが、東京は寒くなったようだ。

09/25/水
仕事場で少し仕事。^鼻湖の湖岸を散歩。いつも思い出すことだが昔、龍之介というハスキー犬がいた。散歩の度に、湖岸で放ってやると、沖合まで泳いでいった。泳ぐのが好きな犬だった。この別荘地も気に入っていた。世田谷の自宅にいて車に荷物を積み込み始めると気配を察して、さあ行くぞと身構えた。東名の三ヶ日インターまで来ると、着いた着いたと騒ぎ回った。遠い思い出だ。

09/26/木
なぜか四日市にいる。諸事情があって次男の住居に移動することになった。車で四日市に来るのは久しぶりで、三ヶ日インターから三遠南信道路で新東名に移り、そのまま真っ直ぐに三重川越インターで下りて23号線を南下。何とか次男のところにたどりついた。

09/27/金
まだ四日市にいる。この次男の住居は共同住宅の七階にあり、見晴らしはいい。Wi-Fiの電波も飛んでいるのだが、ぼくの古いパソコンは有線でないとネットにつなからない。短いケーブルしかもってこなかったので、メールをとる時だけつないでいる。Wi-Fiがあるからネット会議にも対応できるが、いつまでここにいることになるのか。来週は月曜と金曜に会議がある。とりあえず浜松に戻って、それから東京に戻るということになるだろうが、それがいつになるかいまのところわからない。まあ、パソコンが使えるのでとくに大きな問題はない。

09/28/土
今日も四日市。明日は浜松に戻る予定。月曜のネット会議は仕事場で対応する。金曜のネット会議の前に東京に戻りたい。ぼくは夜中に寝酒を飲みながら、録画してあるFootballの試合をコマ送りで眺めて、オフェンスとディフェンスの動きを将棋の棋譜を見るように分析するのが趣味なので、早く東京に戻りたいと思っている。

09/29/日
名古屋の孫たちと東山動物公園に行くことになった。コモドオオトカゲというのが顔見世とのことで、確かに大きなトカゲが闊歩していた。それよりもフクロテナガザルというのが、独演会のように叫び、吠え、歌っていた。明らかに観客を意識していて、ウケを狙っているのがわかった。孫たちはここの近くに住んでいて、風向きによってはこの声が聞こえてくるのだという。妻が疲れているようなので次男の運転で浜松に戻った。すぐに次男を鷲津の駅まで送っていった。さて、ようやくまた老夫婦二人だけの生活になった。東京に戻れなかったので明日のネット会議はこちらで対応する。明日の注目の試合は3連勝の着井キングと2勝のパッカーズ。パッカーズはラブが先発に復帰する。怪我が治りきっていないと絶好調のダーノルドにやられそうだ。3連勝のチーフスは2勝のチャージャーズ。ハーバートは負傷を押して出場の予定。チーフスは先週はドラフト外新人のスティールというランニングバックがけっこう活躍した。練習生として契約したハントが出られるのかどうか。3連勝のビルズと1勝2敗のレイブンズ。出だしでつまずいたレイブンズだが、先週はついにヘンリーが走りまくって無双の活躍。負けじとラマ―・ジャクソンも走った。どちらが走るかわからないというのは、対戦相手にとっては怖い状況だ。ビルズのディフェンスが対応できるかどうか。シード1位争いに関わる好ゲームを期待したい。

09/30/月
『デーヴァ』の手が離れて一週間以上。もう何をどう書いたか忘れてしまった。それでもすごいものを書いたという印象は残っていて、そういうものをどうやって書いたか、古いノートを読み返してみたのだが、Footballのことしか書いていない。ぼくの頭のなかの大半はFootballで占められているようだ。さて、月曜日はFootballの日。浜松の仕事場に戻っているので、落ち着いてネットにつなぐ。バイキングスはラブが復帰したパッカーズに快勝。ダーノルドの絶好調はまだ続いている。全勝のセインツがコルツに負けた。コルツは2年目ルーキーのリチャードソンが途中退場したのだが、控えのフラッコが大活躍。パンサーズのドルトンといい、今日のフラッコといい、2年目ルーキーなどより、往年の大スターの方が実力があるということだろう。バッカニアーズのメイフィールドもいまやダーノルドと並んで中堅のQBになった。イーグルスに快勝。イーグルスはどうしたのだろう。2年前のスーパーで活躍したハーツの調子が戻らない。コマンダーズ、ブロンコス、ベアーズと、今年のドラQBの3人はいずれも快勝。開幕当初は誰もタッチダウンパスが投げられなかったのだが、いまはふつうに投げている。どのチームも勝ち越してプレーオフの可能性も出てきた。レイブンズは先週大爆発したヘンリーの活躍が続いていて、ビルズに圧勝。チーフスが対戦した初戦ではヘンリーの調子がまだ出ていなかったので辛勝したが、プレーオフまでヘンリーの活躍が続くようだと厳しくなる。そのチーフスは、これまで大活躍だったライスが負傷。しかし新人ゼイビア・ワーシーへの超ロングバスが初めて決まった。この武器が使えるようになればマホームズの調子も上がるだろう。ライスの得意な近距離のパスは、ダブルタイトエンドにしてケルシーだけでなくグレイも奮闘した。同地区のチャージャーズに勝ったので、地区優勝はもはや安全圏といえるだろう。さて本日はオーファン委員会。ぼくが司会をしないといけないのだが、なぜかZOOMにつながらない。仕事場にいるのでWi-Fiの不調かと思ったら、事務局が送付したアドレスが違っていたとのことで、正しいものが送られてきた。よかった。
本日で月末。今月の前半はまだ『デーヴァ』の再校、念校などの作業にあたっていたが、完全に手を離れた。10月下旬には見本が届くだろう。値段が高くなるので売れ行きは期待できないが、自分の絶筆であり最高傑作であることは間違いない。しかしぼくはまだ生きているので、しばらくは「新たな作品」について考え続けていきたい。もっとすごい作品が書けるかどうかは、わからないが、まったくないとも言い切れないと考えている。


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