秋尾 敏の俳句 2026年
軸2月号 鬼も来ている 閉鉱や連絡船に裂く氷下魚 冬山のうなじに雲が蹲る 難民の咳き谺とはならず 青の倒壊暖冬の氷壁は 鬼も来ている寒芹を湯にほぐす 排他的自己実現や厚氷 大寒の乾燥機にんにんと呻く 空っ風何の力もなく集う 角川書店「俳句」1月号 同じ高さに シリコンの基板まばゆき初日の出 去年今年同じ高さに空が澄む 諍いは国の尊厳氷の様(ためし) 外交という混沌の四方拝 初夢に角川書店勤め上ぐ 真言は思考にあらず初暦 隣国へ動画で送る福笑い マイセンの皿に田づくり睨みあう 鳥追の声ジーンズをほつれさせ 傀儡師を操る傀儡オンライン 軸1月号 夢の濃淡 老いらくの夢の濃淡福寿草 天空の網目に戻る星仏 一月や銀河に揺らぐ神の指 ほうじ茶は琥珀を眠り雪の雲 冬の霧小学校に隠れ棲む 細波にランプが滲む冬至風呂 世は浮き難し歳晩の雲が病む 隠れ棲む冬将軍の段ボール さらさらになって木枯山に消ゆ 角川書店「俳句」12月号 君をポップに 行くいかぬ止まるとまらぬ秋の蝶 Cのブルース野分の雲をちりぢりに 冷ややかに宇多田ヒカルの足占かな 鍵盤の影はみな過去神の旅 稲妻に撃たれて逝くわ藤井風 夜寒のキヨスク哲学がポップ カラオケがなかったころの青木の実 濡れた寒月五度を♯にしてサビへ 枯蓮の老いて軽みという虚飾 詩に飢えた踵を熊が咥えにくる 咳きにホルン嘶く純喫茶 君をポップに石炭を焼べる 寒星の夢から曲がりだす隘路 枯れ芒靡くではなくなびかせる 歯の疼き齲蝕にあらず開戦日 コンバイン雪を見つめて痩せ細る |